元イギリス・ラリークロス選手権王者でFIAヨーロピアン・ラリークロス選手権の表彰台獲得経験も持つオリー・オドノヴァンが、自身の所属するチームRXレーシングからのエントリーで2022年のEuroRX1へのフル参戦を表明。その元王者がステアリングを握るのは、マレーシアを本拠地とするプロトンの『アイリス』をベースとした『Proton Iriz RXスーパーカー(プロトン・アイリスRXスーパーカー)』になることがアナウンスされた。
このチームRXレーシングが打ち出していた新型モデルの投入プランは、長年の協力関係にあるトニー・バーディ・モータースポーツ(TBM)とともに、R5規定ラリーカーの開発を担ってきたメラーズ・エリオット・モータースポーツ(MEM)がコラボレーション体制を構築。既存のR5カーをベースとした、まったく新しいRXスーパーカーの開発製造を手掛けることを目標とし、当初のプロジェクトから約1年遅れでの実現に漕ぎ着けた。
新車のボディシェルから、ラリークロス競技で使用するため特別に再構築のうえ製造された『プロトン・アイリスRXスーパーカー』は、MEM製のアイリスR5(現アイリス・ラリー2)と一部車体を共有。このR5規定ラリーカーは5年前のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで初披露されて以来、世界各国のナショナル選手権で勝利を飾ってきた。
その有望なベースモデルを下敷きに開発されたRX車両は、すでにイギリス・ペンブリーの本拠地至近でシェイクダウンを終えており、ステアリングを握るオドノヴァンも「我々がこれまでいた場所からの重要なステップ」と位置づけ、ハンガリー・ニヤドで5月21~22日に単独開催での開幕を迎えるEuroRX1で、いよいよシリーズデビューを迎える計画だ。
「つい先日のことだが、我々のアイリスRXが初めてトレーラーから出てくるのを目撃できた。これは私自身とチームにとって大きな瞬間だったよ」と語った2007年のイギリス国内選手権チャンピオンでもあるオドノヴァン。
「そのクルマがグローブのように自分にフィットするよう作業が進むのは、特別な気持ちだった。このプロジェクトには多大な労力が費やされており、最初のテストを実施したときも本当に素晴らしかったよ」
「アイリスRXはすでに大きな一歩を踏み出したように感じている。最初のシェイクダウンテストではその潜在能力を充分に発揮できていなかったが、オープニングラウンドの前にやるべきことがあり、さらにいくつかのテストが計画されている。欧州選手権に復帰することがこのプロジェクトの重要な目標であり、今はシーズンが始まるのをとても楽しみにしているよ」
■WorldRXでは76歳のパー・エクルンドがフル参戦を予定
一方、車両開発を担当したTBM代表兼チームRXレーシングのチーフエンジニアを務めるトニー・バーディは、今回の新規車両投入に際し「オリーは他の誰も走らせていないクルマを望んでいた。その点、R5規定のアイリスが多くのラリーに勝った実績を持っていたことこそ、我々がこの方向に進んだ理由さ」と付け加えた。
「もちろん、RX仕様もアイリスR5とベースを共有しているが、その多くはユニークな構造に変更している。関係者全員が最初に考えたよりもラリークロスに適応するのに時間が掛かったが、このプロトンは最初のテストからスピードを披露してくれた。グリップ力が高く、まだ解き放つことのできる潜在能力を秘めている。とにかく今は、最初のイベントが待ちきれない気分さ」
今季のWorldRX世界ラリークロス選手権に向けては、御歳76歳の伝説的ドライバー、パー・エクルンドが2022年のフル参戦を表明し、シリーズへの電撃復帰を決意。近年は散発的なゲスト参戦に留まってきたが、80歳を目前にして本格的なフルタイムでのカムバックを明らかにしている。
「多くの人が76歳でのフルタイム復帰の理由を疑問視することは知っている。私だってそれを聞いたら『あの爺さん、正気か!?』と思うだろう(笑)。しかし私はまだ26歳のように感じているし、愛するフォルクスワーゲン・ビートルのコクピットに座るたびに、最初からやり直しているようだとさえ感じるんだ」と続けた“ペッカ”ことエクルンド。
1971年にヘデモラで開催されたスウェーデン初のラリークロス競技で優勝を飾り、今では“聖地”として知られるホーリエスでのこけら落としでも初勝利を挙げた男は、国内シーンでの複数チャンピオン獲得に留まらず、1976年のWRC世界ラリー選手権スウェディッシュ大会での優勝を皮切りに、パイクスピークやサファリ・ラリー参戦など、もはや伝説的とも言える肩書きを持っている。
「その老犬が何を言っているのかって? でも昨季のホーリエスではアンドレアス・バッケルドからヒートを奪ったこともある。この新しいクライゼル・エレクトリック・キットを私の忠実な“カブトムシ”に搭載することができてとても興奮しているよ」と続けたエクルンド。
「(ヨハン・)クリストファーソンやハンセンズ(ティミー&ケビンのハンセン兄弟)と一貫して同じ水準を保つには少し作業が必要だろうが、自分の豊富な経験を活用し、いくつかのトリックを教えることができると確信している。ああ、これからそれをすべて証明してやるさ!」