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 トヨタ自動車が今夏にも市場販売する同社初の量産電気自動車(EV)「bZ4X」(ビー・ズィー・フォー・エックス)。航空機操縦桿のようなステアリングなど販売前から世界各国で話題と注目を集める。ステアリングシャフトをやめ、運転者の操舵の情報を電気信号で伝える世界初のステアバイワイヤシステム搭載など全世界の車関連サイトやウェブニュースが、その驚きの仕様を伝えている。

 そうしたなかで今年2月中旬にトヨタは、このbZ4Xの民間市場への販売に、従来の販売店を通じた一般的な車両売りではなく定額利用サービス(サブスクリプション)のみで取り扱う方針を公表した。2019年にスタートさせた車両のサブスクサービス「KINTO」(キント)を通じてbZ4Xの市場提供を始めるという。もちろんキントはグローバルサービスであり、日本のみならず欧米やアジアでもサブスク展開を開始すことになる。

 トヨタと取引のある愛知の樹脂成形品大手企業トップは「EV車両の現実的な普及につなげるため、また定期メンテナンスや、将来的に訪れる車載バッテリーの交換時の流れを円滑にするためだろう」と明言する。事実、EV車両の販売で先行していた中国において、電池交換時期の車両や故障したEVが、引き取り手もなく数百台放置されていた昨年のニュース画像も記憶に新しい。

 トヨタとしてもEVの本格的な普及には、バッテリーや重要な機構部品のリサイクルやリユースの市場での仕組みが勝敗を分けるカギになると判断。テスラや新興中国メーカーの車両販売後の動きを慎重に見たうえでのサブスクリプション戦略に違いない。

 30年までに全世界で350万台のEV車両生産とEV車両のタイプも約30車種を順次市場投入していく計画だが、トヨタも従来の車両のみを売る「モノ売り」から、EV戦略の本格始動をステップにサブスクを通じた顧客への「コト売り」、サービス提供を主軸とする考えもはっきりと見て取れる。

 トヨタは、FCV(燃料電池自動車)も将来的なリサイクルを見据え、水素燃料タンクを構成する炭素繊維レベルまでの材料分離・リサイクル技術開発も進めており、中部に本拠を置く有力化学系企業が共同研究中だ。EVも主要機構部品の一つ、電動アクスルでグループの愛知製鋼がリサイクル部品で、ほぼ技術的めどをつけている。新たなサブスクリプション戦略と合わせ、リサイクルも包含した環境対応車両の世界戦略を、万全なかたちで本格始動させていくことになる。

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The post 【社説】サブスクがカギ、トヨタのEV戦略 first appeared on 化学工業日報.