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 鉄道車両とは思えないようなこだわりの内装を持ち、沿線ゆかりの食に郷土文化などを楽しむことのできる「観光列車」。最近では続々と新しい列車が誕生し、日本各地の鉄道会社が創意工夫凝らした、個性豊かな観光列車を運行している。

 そんな中、JR四国の大人気観光列車「伊予灘ものがたり」がこの春、大幅にリニューアルして装い新たに運行を開始しました。これまで2両編成だったものを3両編成に改良し、乗車チャンスが増えただけなく、国内最大クラスの定員8名の「個室」まで登場。そんな新生「伊予灘ものがたり」に今回、乗車することができたので実乗レポートと共に、その魅力を存分にお届けします!

文、写真/村上悠太

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■登場後、瞬く間に名物列車へ

「伊予灘ものがたり」は愛媛県、JR予讃線を走行する観光列車で、2014年に運行が開始された同社初の本格的な観光列車。伊予灘をのぞむ絶景風景が見どころで、デビュー直後からデザイン性の高い車体や内装、車内で味わえる食事、そして沿線住民からの熱烈な歓迎などが人気を博し、瞬く間にJR四国の「名物列車」に。

試乗した1号車「茜の章」。伊予灘の夕景をイメージした内装になっている

 その後、土讃線にも同じく観光列車として、「四国まんなか千年ものがたり」と「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」がデビュー。こちらもそれぞれこだわった特色が話題となり、人気の列車となっている。

 今回の「伊予灘ものがたり」リニューアルは、列車コンセプトやデザインを踏襲しつつ、新編成を投入した、かなり大掛かりなプロジェクトだった。車体は先代車両に続き、既存車両にリノベーションを施した改造車。ただ、先代は普通・快速列車に使われていた車両を改造したものだったが、今回は特急車両をリノベーション。車両そのものが持つポテンシャルも異なり、これが乗り心地の向上にもつながった。

 3両編成の車内は各車両で意匠が異なる。「レトロモダン」をメインテーマにした車内デザインは、1号車「茜の章」、2号車「黄金の章」と名付けられ、それぞれ2~4名で使用できるテーブル席に海側を向いたカウンタータイプの席などバラエティーに富んだ車内になっている。3号車「陽華の章」は今回のリニューアルで登場した新たな魅力の一つ、定員8名の個室「フィオーレスイート」を設える。

新たに登場した8人様グリーン個室、3号車「陽華の章」フィオーレスイート

「伊予灘ものがたり」は土休日を中心に特定日に運行される臨時の観光列車。運行日には4便が運行され、列車ごとに運行区間も異なる。朝から昼の時間帯に運行される「大洲編」と「双海編」は松山~伊予大洲間、昼過ぎから夕方にかけて運行される「八幡浜編」と「道後編」は松山~八幡浜間で運行される。

 全席グリーン車指定席の特急列車として運行されるので、乗車には乗車券のほか、希望する列車に指定されたグリーン特急券を予め購入する必要がある。発売は乗車日の1ヶ月前からだ。きっぷ類は全国のJR駅「みどりの窓口」、旅行会社で購入可能。

 また、各列車では時間帯に合わせて、「モーニング」、「ランチ」、「アフタヌーンティー」の事前予約制の車内食事メニューが用意されている。こちらについては特定の発売箇所、もしくはスマートフォンアプリでの発売となるので、詳しくは公式Webサイトをチェックしてほしい。購入方法にもよるが、乗車4日前までの予約が必要だ。食事の内容は季節などに合わせて2ヶ月に一度変更される。

■伊予灘ものがたり公式サイト チケット予約

アテンダントさんのおもてなしも大切な旅の魅力

■絶景の見どころは「夕日」

 今回乗車したのは八幡浜を16時14分に出発する「道後編」。終着の松山着は18時17分だ。「道後編」は4つのコースの中でも特に人気のコースで、その理由はなんといっても「夕日」!

 季節にもよるが、伊予灘沿いを走る区間でちょうど夕日の時間帯を迎え、車内から伊予灘に沈む夕日が楽しめるコースになっている。始発となる八幡浜駅のホームには港町らしく、「大漁旗」が掲げられ乗車するゲストをお出迎え。僕の席は1号車「茜の章」のカウンター席。海側を向いており、一人利用でもゆったりと列車を楽しめる席だ。

 駅員さんたちのお見送りをプロローグに、「伊予灘ものがたり」道後編の旅ものがたりがスタート! 列車自体は「特急」扱いだが、実際の速度はかなりゆったり。ビュースポットでは止まってしまいそうな速度まで徐行運転のサービスをしてくれる。

 さて、この列車。特色は多いものの、乗車した人が決まって口にするのが「沿線のお出迎え」への感動だ。実際、沿線至る所から地元の方々が列車に手を振ってくれる。途中の駅はもちろん、道路に空き地、自宅の2階、商店など、窓から目が離せないほどにひたすら列車に手を振ってくれ、この光景にはだれもが感動するはず。ぜひ車内からも全力で手を振りかえそう!

五郎駅通過時には「たぬき駅長」が熱烈大歓迎!

 しばらくすると事前予約の車内食事メニューが自席に届けられる。この日の「道後編」で用意されているのは「アフタヌーンティー 伊予灘の菓織箱(かおりばこ)」(¥3,500)だ。松山市に店を構える「Petit Paris~パンのある暮らし~」がコーディネートしたメニューで、この列車のためにブレンドされたオリジナルティの香りが優雅な列車旅を演出してくれる。

 車内では、予約なしでも楽しめる飲食メニューもバラエティー豊かに用意されており、この列車限定のカクテルなどもラインナップ。気軽に楽しむならこちらの利用もおすすめだ。

道後編で楽しめる「アフタヌーンティー」のメニュー(一例)。砥部焼の器も美しい

■あっという間にエンディング…

 伊予長浜駅を過ぎるといよいよ列車は伊予灘沿いへ!

 この日は快晴で傾きかけた太陽がまぶしい。途中、下灘駅ではしばしの途中下車。目の前に海が広がるロケーションが魅力の下灘駅は、JR四国の駅の中でも特に有名な無人駅の一つ。多くの観光客がこの日も駅に集まっていた。

まさに絶景! の下灘駅では途中下車できる時間がある

 下灘駅で下車見学を済ませ、自席に戻ると食事とドリンクに紙製の被(おお)いが。「下車観光時など、お客さまが席を離れた際に行っています」とのことで、車内に乗客がいなくなった合間に、アテンダントさんが車内を回り、被いをしておいてくれたそう。こうしたちょっとした心配りがとってもうれしい。

 これからの暖かいシーズンは下灘駅を過ぎたあたりからが夕日タイム。列車はもちろん徐行運転。しっかりと存分にその絶景を楽しませてくれる。

 道後編の乗車時間は約2時間だが、沿線のお出迎えにアフタヌーンティー、絶景を楽しんでいると本当にあっという間。余韻にひたっているとリズミカルなテーマソングと共に、伊予灘ものがたりの旅はエンディングを向かえた。

「伊予灘ものがたり」の空席状況や詳しい情報は公式サイトから。リニューアル直後ということもあり、乗車を希望する場合は旅程が決まったらすぐにチケットを手配したい。

■伊予灘ものがたり 公式サイト

 4つのコースにそれぞれ異なる食事メニュー、そして沿線の方々の笑顔。「伊予灘ものがたり」のおもてなしは、愛媛の気候のようにきっと、あなたの心をポカポカさせてくれるはず!

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