岸田首相は6日夕、松野官房長官、後藤厚労相、山際経済再生担当相、堀内詔子ワクチン相らを招集し、3回目のワクチン接種(ブースター接種)を加速させる方針を確認した。
報道各社の首相動静によると、木原、栗生俊一両副官房長官や厚労省の吉田学事務次官、迫井正深内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室長などの顔ぶれも招集されていた。日曜にこれだけの政権幹部を集めるのは極めて異例で、岸田首相の危機感が深まっていることを如実に物語っている。
NHKニュースが7日早朝、こうした動きについて「岸田首相、ワクチン接種1日100万回 今月中達成に向けきょう指示」との題で記事を配信すると、NHKのニュースサイトではたちまちアクセスランキングのトップに浮上するなど、大いに関心を集めた。しかし、ブースター接種が主要国で最も遅れてしまった岸田政権へのワクチン対応に「後手」という批判が改めて強まった。
第6波に入る前は堅調だった内閣支持率が下がりはじめたこととの関連を指摘する向きは強い。立民の奥野総一郎衆院議員がツイッターで「内閣支持率が下がったからやるようでは完全に後手後手」と批判したように、実際、この週末、読売新聞の調査で内閣支持率は58%と、1月中旬の前回から8ポイントも急落した。自民党の元衆院議員の早川忠孝氏はこの調査発表直前のブログで「政局にはならないだろうが、岸田内閣のハネムーンは遂に終わった」との見方を示した。
その早川氏はブログで「河野太郎氏が本当のことを書いたので、多分、これから岸田さんの支持率は徐々に下がっていくはずだ」とも指摘する。本サイト既報のように、河野前ワクチン担当相が、堀内現担当相への批判について「私の時のワクチン担当大臣と今の堀内大臣は役割が違うという前提で議論しないとフェアじゃない」などと擁護した。
しかし、その際、河野氏がワクチンチームの人数が激減したことなどを明かしたことで波紋が拡大した。日曜にコロナ関係の閣僚“臨時招集”をかけたタイミングは偶然かもしれないが、「河野議員の暴露で慌てた」説が出てしまうのも無理はない。
政界の中には、総裁選で岸田首相に敗れ党内で冷遇されている河野氏が「堀内大臣を庇うフリをして岸田内閣を後ろから撃つ?」(維新・音喜多政調会長ブログ)との見方も強まる一方、河野氏に“謀反”の意図がなかったとしても、メディアからも「その通り(注・河野氏の言うとおり)なら、是正は首相の責務のはず…」(日本経済新聞の滝田洋一編集委員)との厳しい視線が官邸に降り注ぐ結果となった。
その日経新聞は7日の朝刊一面で「『コロナ鎖国』で日本離れ」と題し、岸田政権の厳しい水際体制が長期化することで、海外からの人材やマネーの日本離れが進んでいる現状に警鐘を鳴らした。「コロナ鎖国」を巡っては、経団連から新経済連盟まで、開国するように突き上げ続けているが、岸田首相はこれについては持ち前の「聞く耳」を持たない状態が続いている。
それでなくても、岸田政権は、新しい資本主義という名の社会主義的な政策で株式市場を盛り下げたことで、経営層や投資家から完全に見放されている。安倍元首相を支持してきた保守層も、高市早苗政調会長への首相交代を夢見ながらいつでもスタンばってる状態だ。ハネムーンの夢から覚めた岸田首相にとって、参院選までの綱渡りの日々が続く。