<p>あまりの個性にあんぐり クルマの“顔”はこれでいいのか? – webCG</p><p>あまりの個性にあんぐり クルマの“顔”はこれでいいのか?</p><p>トヨタのミニバンに三菱のSUV、そして一連のシトロエン……。あまりにも強烈な個性を放つ、これらのフロントデザインに必然性はあるのか? なぜ近年は、ギョッとするような顔のクルマが増えているのか? その背景について専門家が語る。</p><p>ただ、シトロエンのような変顔は、挑発的ではないのに心に刺さる記事の見出しと同じように、よほどの信念とセンスがないと実現は難しい。近年シトロエンの顔は再びアクが強くなってきているけれど、僕を含めて「それは大切なブランドイメージなのだ」と理解している人は多いのではないだろうか。 多くのブランドは、単純に顔を大きく派手にすることしか、商品をアピールする手段を持ち合わせていないのだと思う。だからこそトヨタの新型「ノア/ヴォクシー」から「BMW iX」に至るまで、多くのクルマがグリルの大型化になびくのではないだろうか。 SUVやミニバンなど、背の高いクルマが多くなったことも理由のひとつに挙げられる。背が高くなれば当然ながら、フロントマスクも厚みを増す。これをどう料理するかと考えたとき、単純にグリルを大きくするという選択肢は当然出てくるだろう。 マーケットの中心がアメリカから中国へとシフトしていることも大きい。ホイールベースとキャビンの長い専用セダンが多くつくられていることでもわかるように、中国のユーザーは大きく見えるものを好む傾向がある。 僕にはこれまで、グッドデザイン賞の審査委員を7回務め、国内外の膨大なモノやコトのなかから“良いデザイン”の選定に力を注いできたという経験がある。そこで学んだのは、デザインは好き嫌いだけで判断すべきものではないということだ。 モビリティーについて言えば、近年は社会との調和がこれまで以上に重視されている。環境性能や安全性能はもちろん、デザインも例外ではない。たしかに乗用車は個人の趣味嗜好(しこう)を反映する商品であるけれど、それは都市や自然の中を走るわけで、景観的な要素も考えるべきというのが僕の持論だ。 どの顔がどれだけ売れるか。それによって、日本の景色が変わってくるといっていい。だからこそ、一人ひとりがカーデザインとは何かをもう一度考え、十分に吟味したうえでデザインを選択していくことが重要だと思っている。 (文=森口将之/写真=トヨタ自動車、ゼネラルモーターズ、シトロエン、BMW、三菱自動車、webCG/編集=関 顕也) 最新世代のシトロエン車には、クルマの顔の既成概念にとらわれないフロントデザインが採用されている。写真は「E-C4」のもの。「ダブルシェブロン」と呼ばれるブランドのマークも重要なデザイン要素となっている。</p>