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 2021年12月20日、ダイハツの軽商用車の主力モデル、アトレーとハイゼットカーゴを17年ぶりにフルモデルチェンジし、ハイゼットトラックもマイナーチェンジした。

 受注も絶好調のようで発売1ヵ月後の1月20日時点での予約受注台数は、アトレーが月販目標台数約1000台の約8倍となる約8000台、ハイゼットカーゴが月販目標台数5700台の約2.3倍となる約1万3000台、ハイゼットトラックが月販目標台数6000台の約3.5倍となる約2万1000台(ダントツで一番人気!)だった。

 はたして17年の進化ぶりはいかなるものなのか? 古いハイゼットジャンボトラックオーナーであるモータージャーナリストの清水草一氏が、新型ハイゼットカーゴと、ハイゼットトラックに公道初試乗!

文/清水草一
写真/佐藤正勝

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■17年ぶりのフルモデルチェンジだから相当別モノになっているはずだ

左が新型ハイゼットカーゴ、右がハイゼットトラック。奥の清水草一氏所有の1990年式旧型ハイゼットトラックジャンボに比べるとかなり進化しているのが見てとれる
5ナンバーの乗用ワゴンから4ナンバーの商用バンに変更された新型アトレー。ハイゼットの上級版という位置付けだ。写真はアトレーRS
乗用ワゴンはタントに任せて、後席の快適性よりもラゲッジの広さを優先したため、車中泊に最適な軽バンになった

 ダイハツの商用車、ハイゼットカーゴとアトレーがフルモデルチェンジした。これまでアトレーワゴンは、5ナンバーの乗用車だったが、タントなど大容量ハイトワゴンの普及によりその使命を終え、4ナンバーの商用車に。ハイゼットカーゴはもともと商用車だが、違いはどこにあるのか?

 アトレーは商用車になっても、目的は乗用車のまま。レジャーなどでの使用を前提に、さまざまな装備が用意されている。

 例えば、アウトドア用品を積んでも掃除がしやすいイージーケアマットや、荷物の取り付けや固定に便利なユースフルナットとマルチフック。車中泊時に換気ができるポップアップ機構付きリアガラス、後席のボトルホルダーやデッキサイドポケット。そして、ラゲッジボードを組み合わせることで、リモートワークにも使えるスリット付きのデッキサイドトリムなどである。 

 タントなど乗用軽との最大の違いは、後席の前後スライド機構がないことだ。商用車は、後席スペースより荷室が広くなければならない。

 その代わり、軽自動車税が安くなる(年間5000円)。最初の車検が2年というデメリットもあるが、長く乗るほど維持費が安く済む。少人数家族がキャンプ道具などを満載して出かけるには、アトレーは最適だろう。

今回試乗したハイゼットカーゴデラックス。正直、軽商用バンがこんなに現代的だとは思わなかった……。今回FR用のCVTを初採用。クルーズターボ(64ps/9.3kgm)を除くグレードは658㏄、直3NAを搭載する
フロントシート下にあるエンジン。キャッチロックを解除し、座面を持ち上げてフックにかけて固定する。デラックスに搭載されるエンジンは658㏄、直3。CVTは53ps/6.1kgm、MTは46ps/6.1kgm。WLTCモード燃費は15.6km/L(CVT)、クルーズターボは14.7km/L

 今回試乗したのは、本気の商用バンであるハイゼットカーゴ(デラックス)の方。前述のようなレジャーっぽい装備は一切ないが、アトレーともども、17年ぶりのフルモデルチェンジだけに、すべてが生まれ変わった。

 まず、ダイハツの軽商用車としては初めて、プラットフォームに「DNGA」を採用している。DNGAは現在、タントとタフトで使われているが、ボディ剛性の高さもさることながら、低重心性も大幅に向上し、乗り心地がいいのにスポーティに走れるのがスゴイ。

 エンジンは、46ps(MT)、53ps(CVT)のノンターボと64psのターボ(クルーズターボのみ)の3種類。注目すべきはトランスミッションだ。ハイゼットカーゴのノンターボモデルには、5MTが残されているが、主流は新採用のFR用CVTだ。

 これまでハイゼットカーゴ/アトレーのATはトルコン4速。ノンターボの4ATモデルに乗ると驚くほど遅く、レインボーブリッジの上り坂でもアクセル全開、それでもクルマの流れに乗るのはかなり困難だった。試乗してみて、軽バンドライバーの皆様の苦労がしのばれました……。

 その点現在の軽用CVTは、パワーの伝達効率が違う。これは大いに期待できる!

9インチのスマホ連携ディスプレイオーディオが装備され、ダイハツコネクトにも対応。装備面ではキーフリーシステム&プッシュエンジンスタート、電動格納式ミラー、スマートインナーミラー、アトレーと同様の機能を持つ両側スライドドアが新設定(グレードによりメーカーオプションまたは標準装備)

 初対面した新型ハイゼットカーゴは、見た目的には先代とあまり変わっていない。もちろんサイズは同じだし、真四角なフォルムも同じ。顔は台形基調の先代から、車体同様のカクカク系に微妙に変わったが、機能最優先の雰囲気は同じだ。

 運転席に乗り込むと、まずその乗用車っぽさに驚かされる。試乗車にはインパネ中央部に大型ディスプレイも装備されていて、まったくもって立派な乗用車の雰囲気だ。お仕事グルマ感は実に薄い。

 エンジンをかけてセレクトレバーをDに入れ、発進。試乗車は、ノンターボの53psエンジンを積んでいる。タントなど乗用系は52psだが、それをより実用域に振った仕様である。

 出足はタント同様、軽やかだ。車両重量は約1トンあり、タントよりも若干重いが、この程度の差は判別できない。ロングストロークのKF型エンジンは実用トルクを極限まで追求していて、平たん路の日常走行はハーフスロットルで事足りる。

 先代ハイゼットカーゴと比べると、その差はかなり大きい。CVTによる高効率化もあるが、DNGAの採用によって、静粛性が大幅に上がっているのが最も印象的だ。さすがにタントよりはうるさいが、先代とは大違いで、乗用車として使っても快適性は特に問題ないだろう。

 アトレーの場合は、すべてターボエンジンになるので、パワーの余裕は大幅に増しているはず。その分静粛性も間違いなく高いだろう。余裕を求めるならアトレーがお薦めだ。

 乗り心地は、タントなど乗用軽に比べると、かなり固めに感じた。商用車だけに、最大350キロの荷物を積むことを前提にサスペンションがセッティングされている。

 今回は空荷で乗ったのでなおさらで、路面の段差では、ポンポン跳ねる動きが出た。タントなら優しくいなしてくれるところだが、これは商用車だけに仕方ないと割り切るしかない。これでも先代と比べれば、DNGA効果によってかなり改善されている。

 操縦性は、タントのすばらしさを知っているだけに、比較するとかなり重心が高く感じた。こちらも、欲を言えばきりがない。とにかく荷物を満載するなら、ハイゼットカーゴ/アトレーなのだ!

後席の膝前スペースはこぶし1つほどで広くはない
ベンチタイプのシートはロック解除ストラップを引きながら持ちてレバーを持ち格納する
荷物の取り付け、棚やネットを装着する時に役立つユースフルナット(車内に装着された差し込み用の穴)は、従来に比べて約2倍に増やした。全車に17個が標準装着され、ハイゼットカーゴのデラックスやスペシャルには31個が備わる
ハイゼットカーゴは、荷室の長さ・幅・高さのサイズが軽キャブオーバーバンのなかでNO.1。カーゴスペースはフルフラットになり大の字に寝ることができる。ミカン箱は68個、ビールケースは36ケース、パンケースは71ケース、畳は9枚も積めるそうだ

 試乗車は「デラックス」だっただけに、後席はヘッドレストもなく、見るからに緊急用。長時間の乗車は遠慮したい感じだが、その分積載スペースは広大だ。

 リアシートをたためば、荷室長×荷室幅×荷室高は1915×1410×1250mm。従来モデルより55mm長く、35mm幅広く、15mm高くなっているし、出っ張りもほとんど消えている。

 身長176cmの男(私)が2名、車中泊可能だ。これで121万円はメチャメチャ安い! オプションを盛ればそれなりになりますが、それにしても安いです。

 アトレーの最上級グレード(RS 4WD)は182万6000円で、「安い!」という感じではなくなるが、広さと装備を考えればお買い得だ。

 また、ハイゼットカーゴにも最新のスマアシ(自動ブレーキ)が全車標準装備。さすがにACCは付かないが、アトレーならACCやレーンキープアシストも付けられる。文句のつけようがアリマセン!

■超現代的な軽トラに大変身!

ハイゼットトラックエクストラ。46psの直3エンジンにCVTを組み合わせ、830kgという軽量ボディはスイスイ走る。WLTCモード燃費は15.8km/L。最小回転半径も3.6mと小回りがきく

 一方ハイゼットトラックは、フルモデルチェンジではなくマイナーチェンジ。2014年9月に15年8ヵ月ぶりにプラットフォームを一新するフルモデルチェンジをしているので、今回はマイナーチェンジを行い、さらに煮詰めてきた。

 私自身は1990年式のハイゼットトラックジャンボを所有しているが、厳密に言えばそれが「先代」というわけだ。もはや軽トラは完成されていて、進化の余地がほとんどないのだ! リアリーフリジットサス最高(私見です)!

 マイナーチェンジの変更ポイントは、まず顔付きだ。上級グレードの「エクストラ」にはメッキ加飾を採用している。インテリアも大型メーターや、安っぽくないインパネを採用。アッパートレイも新設されたので、書類やノートパソコンなどを気軽に置ける(エクストラ、ジャンボエクストラおよびメーカーオプションのスマホ連携ディスプレイオーディオを選択した場合は形状が異なる)。

 また、夜間の作業時などで便利なLED荷台作業灯が、新たに採用された(我が愛車には前オーナーが設置するも、点灯せず)。乗用車では当たり前のキーフリーシステム&プッシュボタンエンジンスタート、電動格納式ドアミラーも採用されている。

ハイゼットトラックの頭上空間はこぶし1つ分のスペース(身長176cmの筆者)。運転席のスライド量は140mm
とても軽商用トラックとは思えないハイゼットトラックのコクピット。豪華ではないが大衆食堂から格が1つ上がったイメージ。クラス初のキーフリーシステム&プッシュボタンエンジンスタート、電動格納式ドアミラーも装備
いろいろなものが置けそうな助手席ダッシュボード。ナビのディスプレイは豪華すぎて違和感があった

■4WDとCVTで走りはどう変わったのか?

新たに装備されたCVTはとてもよくできていた。まさか軽商用トラックにもCVTとは時代は変わったもんだ。発売1ヵ月後の受注割合はCVTが60%のこと。逆に40%もMTを買う人がいるっていうことだ

 私の「先代」に比べると、新型は「完全なる乗用車」に思えた。なにせ私の愛車は、パワステもパワーウィンドウも集中ドアロックも何もない! エアコンでもなくてクーラーだし、それもあんまり効かない。32年前のクルマと比べてはいけないが、あまりの快適さに驚愕!

 しかもトランスミッションは、ハイゼットカーゴと同じく5MT/CVTが用意された! このCVTの採用が最大の変化でしょう。軽トラのCVTってスゲエ! ボディは断然軽いので(770kg~860kg)、空荷だと46ps(5MT/CVT)の直3NAエンジンでも飛ぶように走ります。ちょっと出足が良すぎて、首がガックンってなっちゃうくらい。発進の時はアクセルの踏みすぎに注意。

 乗り心地は、ド新車ってこともあり、自分のジャンボに比べるとかなり固く感じましたが、トラックなので仕方ない。乗るにつれてだんだんしなやかになるでしょう。

 また、4WDのCVT車は、「2WD」「4WD LOCK」に加え、路面状況に応じて駆動力を制御する「4WD AUTO」が用意された3モードの電子制御式4WDを採用。従来は5MT車のみだったスーパーデフロックも、CVTに追加された。

通常走行の2WDに加え、4WD AUTO/4WD LOCKの切り替えができる
ハイゼットトラックもシートの下にエンジンを搭載している。46ps/6.1kgmを発生する658㏄、直3エンジンにCVTを組み合わせている

 さすがに軽トラだけに、スマアシやエアコンのないグレードも用意されているが、よっぽど節約しない限り、どっちも標準装備。USBソケットやHDMI端子、大型のスマホ連携ディスプレイオーディオまでオプションで付けられる! 

 いやあ、快適快適! これでジャンボならリクライニングもできるからもっと快適! 軽トラは値段も安い! スタンダードのスマアシ付き(CVT)で102万3000円!

 乗用車としても使いたいなら、オススメは「ジャンボ スタンダード CVT」(114万9500円)でしょうかね。

こちらはハイゼットトラック全体の約20%を占めるというハイゼットトラックジャンボ。荷台のフロア長はハイゼットトラックが2030mm、ハイゼットジャンボは1990mm。ハイゼットジャンボのほうが荷台のフロア長は短いが、そのぶんシート後ろに物を置けるスペースがある。乗り心地もジャンボのほうがいい
ジャンボのシートはリクライニング機構があるのがいい。シート後部には横幅1345mm、長さ175mmほどのスペースがある
ミカン箱が1段積みで13個、めいっぱい積むと13個×4段+2個、合計54個も積めるという。最大積載量は350kg
CVTになって走りも大幅したハイゼットトラック。これでニッポンの働く人たちの仕事がよりいっそうはかどることだろう。うーむ

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