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<p>ウクライナの「人道回廊」とは。市民を救えるのか。なぜ機能しないのか。「裏ルート」を作ったプーチンの思惑は。</p><p>【New】ウクライナとロシアが合意した市民の避難ルート「人道回廊」が機能しません。 ロシア軍包囲下のマリウポリでは、実は北西行きと東行きの2つのルートが。 ロシアには「人道回廊」という言葉を使って情報戦を仕掛ける狙いがあるようです。(貫洞欣寛 @kando_abugen)</p><p>ウクライナとロシアが市民が避難できる「人道回廊」の設置で合意した。それは何か。停戦につながるのか。しかしロシアが発表したルートからは、その狙いもすでに透けて見える。</p><p>1990年代のボスニア紛争やシリア内戦など各地の紛争で提案されたり、実際に設置されたりしてきた。また、2014年にウクライナ東部でロシア軍が「分離独立派」の蜂起を促し、今回につながる紛争が始まった際も、「回廊」が設置された。 今回のように当事者間の直接交渉で合意に至る例も、国連が仲介して実現する例もある。しかし、市民の保護につながったとは必ずしも言い難いケースもあるのが実態だ。 また、これは「停戦」に直結する動きではなく、一時的に回廊を設けて市民の脱出を認めたあとは、市街地に対するさらに激しい無差別攻撃が加えられたこともある。 ロシアは人道回廊にどういう態度を取ったのか。ロシアが軍事介入したシリア内戦の例を見てみよう。 シリアでは、2011年に若者たちが始めた民主化要求デモに、アサド政権が激しい弾圧を加えことから、次第に内戦に転落した。アサド大統領は市民の声に耳を貸さず、自らの統治に異議の声を上げる人々を「テロリスト」と呼んで攻撃の対象とした。 シリアに軍事基地を持ち、旧ソ連時代から関係が深いロシアはアサド政権を支持し、軍事介入。戦闘機やミサイルなどによる市街地攻撃を続け、北部の第2の都市アレッポの反体制派掌握地域を包囲した。 この地域には当時、25万人の市民がいると推定されていた。 市民被害をもろともしない攻撃が続くコトへの国際的な非難の高まりに、ロシアは2016年7月28日、アサド政権とともに「人道回廊」の創設を発表。「テロリストに包囲された地域」の市民の脱出を許すとした。 一方、国連の提案した「人道停戦」も、人道回廊への国連の関与も拒否した。 無人だったシリアの人道回廊 2016年7月29日撮影の、ロシア軍とアサド政権軍が発表したアレッポの「人道回廊」周辺の様子。反体制派掌握地域から政権軍地域(写真奥)に出るルートとして発表されたが、ほぼ無人だった。 この回廊は、反体制派地域の市民が、政権軍側地域に脱出できるというものだ。反体制派地域の市民から見れば、「我々に投降するか、テロリストと一緒に死ぬか」という選択を突きつけられたことになった。 2016年7月30日、ロシアは「数十世帯が回廊を通って避難した」と発表したが、反体制派側は「避難できる状況にはなく、事実ではない」と</p>