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まさかのライバル車は!? 新型フェアレディZ「プロトスペック」の魅力と弱点

 2022年1月に開催された東京オートサロンにて、日産新型フェアレディZの日本仕様が発表された。日本仕様発表の5カ月前には、すでに北米仕様が発表となり、話題になっていた。

 2008年に現行型フェアレディZが発売してから、14年ぶりのフルモデルチェンジとなる。先に特別仕様車「プロトスペック」限定240台が先行発売される。日産公式メールマガジンに登録し、抽選販売となる。申し込みは、2022年3月24日15時まで。

 そこで、本稿では、新型フェアレディZの魅力に触れつつ、価格、スペック、ライバル車について解説していく。一番のライバル車は、まさかの…!?

文/渡辺陽一郎、写真/NISSAN、ベストカーWeb編集部

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新型フェアレディZがついに登場!!

東京オートサロン2022で、日本登場を果たした新型フェアレディZ。写真は2022年6月下旬頃に発売する240台限定の特別仕様車「プロトスペック」

 最近は2ドア、あるいは3ドアクーペのスポーツカーが大幅に減った。世界的にスポーツカーのニーズが下がった結果だが、国産車も10車種に達しない。その意味で新型フェアレディZの登場は注目される。従来型は2008年の発売だったから、14年ぶりのフルモデルチェンジだ。

 新型フェアレディZのボディサイズは、全長が4380mm、全幅は1845mm、全高は1315mmで、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2550mmだ。従来型に比べると、全長は110mm伸びたが、全幅/全高/ホイールベースは同じ数値になる。つまり新型フェアレディZの位置付けは、従来型を踏襲した。

 エンジンはV型6気筒3Lに、ツインターボを装着したVR30DDTT型だ。スカイライン400Rと基本的に同じエンジンで、最高出力は405馬力(6400回転)、最大トルクは48.4kg-m(1600~5600回転)になる。6速MTと9速ATを設定した。

 販売方法は通常の車種とは異なり、まずは特別仕様車のプロトスペックを240台限定で発売した。購入するには新型フェアレディZのホームページにアクセスして、メールマガジンの会員に登録する。そのうえで購入の申し込みをする段取りだ。応募の締め切りは2022年3月24日15時とされる。

 240台を超える申し込みがあったときは、ユーザーを抽選で決める。購入する権利が得られたら、見積りを入手して販売店を選び、購入や納車の手続きをする。

 ほかのグレードは2022年6月下旬頃から販売を開始する予定だが、日産の販売店によると「車両に関する情報を把握しているのは、特別仕様車のプロトスペックのみ」だという。標準仕様/バージョンS/バージョンSTというグレードについては、価格を含めて2022年2月中旬時点では分かっていない。

 プロトスペックについては、前述の主要データに加えて、装備内容も公表されている。14年ぶりの刷新とあって安全装備は大幅に充実され、衝突被害軽減ブレーキを作動できるインテリジェントエマージェンシーブレーキ、ドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知して知らせる後側方車両検知警報、運転支援機能のインテリジェントクルーズコントロールなどが標準装着される。

 そのほかの装備も、プロトスペックは最上級グレードに準じた内容だ。レイズ製19インチ鍛造アルミホイール、4輪アルミキャリパー対向ピストンブレーキ、日産コネクトナビ&9インチディスプレイ、BOSEサウンドシステムなどが標準装着される。プロトスペックの専用装備として、アルミホイール/ブレーキユニット/本革・スエード調ファブリックシートなどは、専用のカラーになる。

プロトスペックは696万6300円! 通常モデルはもう少し安価に?

 新型フェアレディZで注意したいのは価格だ。プロトスペックは6速MT、9速ATともに696万6300円になる。従来型のバージョンST(6速MT)は519万8600円だったから、約177万円値上げされた。

 従来型のエンジンはV型6気筒3.7Lの自然吸気だったが、新型は前述のとおりV型6気筒3Lツインターボに上級化されている。安全装備と運転支援機能も大幅に充実した。従って値上げされるのは納得できるが、従来型のバージョンSTにも、レイズ製19インチ鍛造アルミホイール、日産コネクトナビ&7インチディスプレイ、BOSEサウンドシステムなどは標準装着されていた。

 こういった点を考えると、エンジンの刷新と装備の上級化に伴う新型の価格アップは、高めに見積っても80万円が妥当だ。プロトスペックの177万円の値上げは行き過ぎで、新型は約100万円は割高になっている。

 この価格設定は不自然で、特別仕様車のプロトスペックのみを割高にしている可能性もある。プロトスペックの240台は、ほかのグレードに比べて納車が早く、特別な印象も強まるからだ。そうなると今後発表される最上級グレードのバージョンSTは、プロトスペックと同等の内容ながら、価格を650万円前後に抑える可能性もある。

 いずれにしろプロトスペックで、新型フェアレディZの買い得度を判断するのは難しい。間違いのない買い方をするなら、6速MTと9速ATの両方を試乗したあとで、プロトスペックではなく各グレードから購入の対象を選ぶのが良いだろう。

新型フェアレディZの最大のライバルはまさかの!?

2019年5月に発売となった5代目スープラ。発売から約1年後の2020年4月には、RZのエンジン出力向上などの改良が施された

 仮に新型フェアレディZの価格が、プロトスペックに準じた設定なら、従来型の中古車を選ぶ方法もある。走行安定性、乗り心地、安全装備、運転支援機能は新型に比べて劣るが、動力性能や居住性などは従来型でも満足できて、価格は大幅に下がるからだ。

 従来型の中古車価格は、5年落ちになる2017年式のバージョンSTが350~400万円だ。フェアレディZは中古車の流通台数が限られ、中古車価格も高めだが、約700万円に達する新型のプロトスペックに比べると半額に収まる。いい換えれば、新型フェアレディZの最強のライバル車は、従来型という見方も成り立つ。

 また日本車では、スープラもライバルだ。新型フェアレディZと同様に2人乗りのスポーツカーで、直列6気筒3Lターボを搭載するRZが同等の性能を発揮する。最高出力は387馬力(5800回転)だから、新型フェアレディZが上まわるが、最大トルクは51.0kg-m(1800~5000回転)になるからスープラが強力だ。

 スープラも価格が高い。RZは731万3000円だから、新型フェアレディZプロトスペックと比べても34万6700円上まわる。現行スープラはトヨタとBMWの提携に基づいて開発され、基本部分はBMW・Z4と共通だ。方向指示機のレバーも左側に装着される。生産はオーストラリアにあるマグナ・シュタイヤー社の工場に外注され、トヨタ製だった以前のスープラとはクルマも価格も大きく異なる。

 スポーツカーの売れ行きが下がり、量産効果も発揮されにくくなったから、新型フェアレディZ、スープラともに価格を高めた。この2車種は、国産スポーツカーの置かれた昨今の状況を明確に反映させている。

 このほか同サイズの国産スポーツカーとして、レクサスRCも挙げられる。RC350Fスポーツは、V型6気筒3.5Lエンジンを搭載して、最高出力は318馬力(6600回転)、最大トルクは38.7kg-m(4800回転)だ。装備については、後輪操舵(4WS)、ショックアブソーバーの減衰力を変化させる機能などが備わる。  

 3Lエンジンにツインターボを装着する新型フェアレディZに比べると、動力性能は劣るが、レクサスとあって内装は上質だ。後席を備えるから車内も広く、2名で乗車したときには、後席に手荷物を置きやすい。RC350Fスポーツの価格は674万7000円だから、新型フェアレディZプロトスペックに近い。

輸入車のライバルはどのクルマ?

直4、1.8Lターボエンジンをミッドシップに搭載するアルピーヌA110。ボディサイズは全長4205×全幅1800×全高1250mm、ホイールベース2420mm

 ライバル車は輸入スポーツカーからも見つけられる。ドイツ車ならポルシェ718ケイマンだ。全長が4385mm、全幅が1800mmのボディは新型フェアレディZに近い。エンジンは直列4気筒2Lターボで、最高出力は300馬力と控え目だが、エンジンをボディの中央に搭載するミッドシップ方式を採用する。

 正確かつ機敏に反応する操舵感と、危険回避時を含めた優れた走行安定性を併せ持つ。718ケイマンの価格は729万円だから、新型フェアレディZプロトスペックに近い。

 フランスのアルピーヌA110もライバル車だ。ボディサイズは全長が4205mm、全幅は1800mmと少しコンパクトな2人乗りのスポーツカーになる。直列4気筒1.8Lターボエンジンは、ミッドシップ方式でレイアウトされ、A110GTは最高出力が300馬力、最大トルクは34.6kg-mだ。コンパクトなボディが生み出す良く曲がる運転感覚が特徴で、A110GTの価格は893万円と少し高い。

 フェアレディZが好調に売られるアメリカのスポーツカーとして、シボレーカマロもライバルに挙げられる。全長が4785mm、全幅が1900mmのボディは、ボンネットが長くてカッコイイ。

 クーペSSのエンジンは、V型8気筒6.2Lで、最高出力は453馬力、最大トルクは62.9kg-mと強力だ。ターボを装着しない大排気量エンジンとあって、迫力のある吹き上がりを満喫できる。クーペSSの価格は729万円になる。

 なおアルピーヌA110とカマロの外観は、新型フェアレディZと同様、往年の懐かしい外観を連想させる。スポーツカーの購買層が中高年齢層になり、車両のコンセプト、デザインともに原点回帰の指向性を打ち出す。そこに今を走り抜けるスポーツカーの活路があるわけだ。

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