現行のRAV4にプラグインハイブリッドが追加されたのが2020年。経済性だけでなくモーターアシストによって強化された加速性能など、その走りにも注目が集まった。
そして2021年にフルモデルチェンジを行ったアウトランダーは全車プラグインハイブリッドとなったが、優れた4WDシステムを持ち、こちらも高い評価を得ている。
そんなPHEVのライバル同士、お買い得なのはどっちだ?
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部
■この2車種のプロフィール
SUVは国内、海外の両市場で人気が高く、新型車の投入も活発だ。特に注目される新型車として、アウトランダーを挙げられる。
2021年に発売され、PHEV(プラグインハイブリッド/充電可能なハイブリッド)のみを搭載した。外観の造り、内装の質、動力性能、走行安定性、乗り心地まで、さまざまな機能を向上させ、先代型と比べた時の進化度も大きい。
そしてアウトランダーのライバル車は、RAV4ハイブリッドに充電機能を加えたRAV4 PHVだ。この2車種を比較したい。
■ボディスタイル/サイズ/視界/運転のしやすさ比較
アウトランダーのボディサイズは、売れ筋グレードで見ると、全長が4710mm、全幅は1860mm、全高は1745mmだ。RAV4 PHVは、4600mm×1855mm×1690mmだから、アウトランダーは110mm長く、55mm背が高い。
アウトアランダーはフロントマスクのデザイン効果もあり、ボディが大きく見える。最小回転半径は、売れ筋グレード同士で比べると5.5mで等しい。斜め後方の視界は、RAV4 PHVが優れている。アウトランダーはボディ後端のピラーが太めで、後方視界が悪い。
★勝敗:RAV4 PHVの勝ち
■内装のデザイン/質感/視認性/操作性比較
内装はアウトランダーが上質だ。ATレバーが収まるセンターコンソール、走行状態に応じて走りの設定を変えるドライブモードのダイヤルスイッチなど、アウトランダーがていねいに造り込んだ。メーターの視認性、ATレバーやスイッチ類の操作性は、両車とも同程度になる。
★勝敗:アウトランダーの勝ち
■前後席の居住性比較
前席の座り心地は、両車ともに腰をしっかりと支えて着座姿勢は乱れにくい。後席の足元空間は、アウトランダーが若干広い。身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は、アウトランダーが握りコブシ2つ少々で、RAV4 PHVは2つ分だ。座り心地も、アウトランダーが若干優れている。
またアウトランダーは、荷室に3列目の補助席を備えた7人乗りも設定した。3列目は床と座面の間隔が不足しており、大人が座ると腰が落ち込んで膝が大きく持ち上がるが、片道15分程度の距離なら多人数乗車も可能だ。
★勝敗:アウトランダーの勝ち
■動力性能&加速フィーリング比較
動力性能は互角だ。アウトランダーでは、エンジンは基本的には発電を行い、駆動は前後に搭載されたモーターが担当する。モーターは先代型に比べるとパワーアップされ、巡航中にアクセルペダルを踏み増すと、速度を一気に高める。
この機敏な加速感は、電気自動車と同様だ。静かで滑らかに、しかも速度を急速に上昇させる。この時の加速感は4Lのガソリンエンジン並みだ。
RAV4 PHVは、前輪はエンジンとモーターで駆動して、後輪はモーターだけが駆動するE-Fourと呼ばれる方式を採用する。エンジンとモーターの駆動力を合計したシステムは306馬力だ。RAV4ハイブリッドのE-Fourは222馬力だから、プラグインハイブリッドは動力性能を大幅に高めた。
つまりアウトランダーは、電気自動車に近い機敏な加速感が特徴で、RAV4 PHVはガソリンエンジンを併用する自然な運転感覚を備える。動力性能と加速フィーリングは互角といえるだろう。
★勝敗:引き分け
■乗り心地を比較
アウトランダーは、ベーシックなMを除くと20インチタイヤ(255/45R20)を装着する。時速50km以下では硬めに感じるが、角は丸い印象で不快感は生じない。
RAV4 PHVが、最上級のブラックトーンが19インチタイヤ(235/55R19)を装着する。この仕様も乗り心地が硬めだ。
両車を比較すると、アウトランダーの足まわりは伸縮性が少し優れ、タイヤが路上を細かく跳ねる挙動を抑えた。そのために重厚感が伴う。
★勝敗:アウトランダーの勝ち
■走行安定性&操舵フィーリング比較
アウトランダーは、車両重量が2トンを超えるSUVでは、操舵感が機敏で良く曲がる。一般的に高重心でボディの重いSUVは、後輪の接地性を高めて走行安定性を向上させるため、操舵に対する反応を穏やかにすることが多い。速度を高めて曲がろうとすると、次第に旋回軌跡を拡大させ、曲がりにくくなっていく。
ところがアウトランダーは曲がることを諦めない。操舵角に応じて確実に曲がっていく。そして前述の通り乗り心地も快適だから、速度を高めて曲がると、ボディの傾き方も大きくなる。
この時に危険を避けるためにアクセルペダルを戻すと、アウトランダーでは後輪の横滑りを拡大させやすいが、挙動の変化が穏やかだから、運転の難しい状態には陥りにくい。安定性とのバランスを損なわないギリギリまで、スポーティ感覚を追求した。
一方、RAV4 PHVは、一般的なSUVの設定だ。アウトランダーほど攻めた走りは行えないが、幅広いユーザーにとって使いやすい。
★勝敗:アウトランダーの勝ち
■燃費性能比較
アウトランダーで売れ筋のGやPでは、WLTCモード燃費が16.2km/Lになる。RAV4 PHVは、すべてのグレードが22.2km/Lだ。RAV4 PHVの燃費数値は、アウトランダーの1.4倍に達する。
またアウトランダーのリチウムイオン電池容量は20kWhで、RAV4 PHVの18.1kWhよりも大きいが、1回の充電で走行できる距離(WLTCモード)は、アウトアランダーが85km、RAV4 PHVは95kmに達する。RAV4 PHVは効率が優れている。
★勝敗:RAV4 PHVの勝ち
■買い得グレードと価格の割安度比較
アウトランダーのグレード選びには注意が必要だ。G(499万6200円/7人乗り)を選び、本革シートなどのセットオプション(オプション価格は25万3000円)、ヘッドアップディスプレイ(同7万7000円)、BOSEプレミアムサウンドシステム(同10万4500円)を加えると、オプション総額が43万4500円に達する。
一方、最上級のP(532万700円)は、前述のオプション装備をすべて標準装着して、なおかつ装飾類も充実させながら、Gと比べた時の価格アップを32万4500円に抑えた。
従ってGにオプション装備を数多く加えると、総額がPの価格を上まわり、損失を被ってしまう。つまりアウトアランダーのオプション価格は割高だから、Gに本革シートなどのセットオプションを加えるなら、Pにグレードアップさせた方がトクをする。いい換えれば、Pが最も買い得なグレードだ。
アウトランダーPに相当するRAV4 PHVのグレードは、ブラックトーン(539万円)だ。アウトランダーPよりも約7万円高いが、3列目シートやBOSE製のオーディオは装着されず、シート生地は本革ではなく合成皮革になる。アウトランダーPと、RAV4 PHV ブラックトーンを比べると、アウトランダーPが断然買い得だ。
ただしRAV4 PHVのG・Z(499万円)は、ブラックトーンに比べて20万円程度の装備をカットするだけで、価格は40万円下がる。
つまりRAV4 PHV ブラックトーンは割高だから、RAV4 PHVを買う時は、G・Zを選ぶべきだ。このグレードなら、アウトランダーG(490万4900円/5人乗り)との買い得度も同程度に近づく。
★勝敗:アウトランダーの勝ち
■総合評価/どっちが買い?
内外装の質感、居住性、走行性能、運転の楽しさなどを総合的に判断すると、アウトランダーの魅力が強い。RAV4 PHVも、馴染みやすい運転感覚と燃費性能ではアウトランダーを上まわるが、総合的には見劣りする。
なおRAV4で買い得な仕様は、ノーマルエンジンを搭載するスポーティ指向のアドベンチャー(348万7000円)だ。RAV4 PHV G・Zと比較しても約150万円安く、軽快な運転感覚を味わえる。RAV4は350万円以下のグレードに魅力があり、高価格なプラグインハイブリッドのPHVは推奨できない。
★勝敗:アウトランダーの勝ち
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