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Microsoft(マイクロソフト)は2021年に、200億ドル(約2兆3000億円)でNuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ)を買収すると発表した。同社はヘルスケア分野への進出を実現しようとしたが、規制がますます厳しくなる中、確実に買収できるというわけではなかった。しかし、ようやく規制上のハードルをすべてクリアし、同社は米国3月4日、買収が成立したと発表した。

Satya Nadella(サティア・ナデラ)CEOはビデオ声明で、NuanceをエンタープライズAIのパイオニアと呼び、両社が協力して何を達成できるかを楽しみにしていると述べた。「私たちは共に成果ベースのAIの未来を切り開いていきます。医療従事者が患者との時間を増やし、文書作成に費やす時間を減らせるようにします。私たちは共に、業界の主要なワークフローを安全にクラウドに移行することを支援します。そして、一緒にAIの力を使って、あらゆる業界の組織が摩擦のない、一人ひとりにあわせた顧客体験を実現できるよう支援します」と同氏は話した。

ナデラ氏の発言は、同社がNuanceの技術を、第一の対象であるヘルスケア以外にも幅広く活用する意向を強く示唆するものだった。既存のソリューションを基盤としてMicrosoftの膨大なリソースを活用し、金融サービス、小売、通信などの他分野にも導入していく。それがどのように実現されるかは、時間が経てばわかる。

MicrosoftとNuanceの統合に関して、今日のような発表に至るということが、決まりきっていたわけではない。業界の一般的な常識では、Microsoftはこの買収によってどの市場も支配することはないだろうと考えられていた。ただ、政府が最大のハイテク企業、もっと言えば競争に悪影響を与える可能性のあるメガディールをより厳しく見ている規制環境では、統合の実現が明白だとは言えなかった。

昨年、米司法省がこの取引を承認し、その後EUからも承認を受け、最後のハードルとして残った英競争市場局(CMA)の承認を待っていた

今週、CMAはこの取引を承認し、今日の発表にこぎつけた。CMAは声明の中で、両社が統合された場合、Nuanceが主に事業を展開してきた医療用トランスクリプション市場の競争に悪影響を与えるという証拠は見つからなかったと述べた。

「競争市場庁(CMA)は、Microsoft CorporationによるNuance Communications, Inc.の買収により、競争を著しく低下させるという現実的な見通しは生じないと判断しました」と同庁は調査結果の発見事項要約に記した。

これを受け、MicrosoftとNuanceは、2016年のLinkedIn(リンクトイン)の260億ドル(約3兆円)の買収に次ぐ、ナデラ時代における最大の買収の1つを進めることになる。なお、Microsoftは、1月に発表した690億ドル(約8兆円)のActivision/Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)の買収案件が完了していないが、こちらはまだ承認プロセスを通過していない。

画像クレジット:JOSEP LAGO / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi