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横浜市・山中竹春市長が、市長選出馬に際し、当時の勤務先だった市立大の小山内いず美理事長に対し、山中氏を称賛する内容のメールを学内に出すように無理強いさせたことなどが刑法の強要罪にあたるとして、同大学の現役教職員や、市民らの有志グループが横浜地検に告発状を提出し、受理されていたことが3日、明らかになった。

山中氏に対しては、昨年10月にも同大教授時代の別のパワハラ疑惑で刑事告発が受理されており、これで2度目。前回は学外の第三者による告発だったが、今回は大学の当事者も加わって現職市長を訴えるという異常事態だ。

一方で、2度目の告発受理をスクープ報道した地元紙・神奈川新聞に対しても市民から疑問の声があがっている。

編集部撮影

今回の告発の動きは昨年12月の時点で、有志グループのサポートを行う郷原信郎弁護士が記者会見し、明らかにしていた(参照:記者会見の記事はこちら)。今年に入り、告発状を作成。郷原氏が3日ツイッターで明らかにしたところによれば、3月1日付で受理したと地検から連絡があった。

この問題は、山中氏の市長選出馬への動きが報道された際、大学側が学内の動揺を抑えようとメールを発信。その際、「山中教授とは連絡がとれない状況が続いている」と書いたことなどに、山中氏が抗議したことに端を発する。

大学側が残した昨年7月24日の面会時のメモでは、山中氏が小山内理事長に対し、「市民にSNSやインターネット上理事長・学長の不誠実を知ってもらった方がよいとも考える」「コンプライアンス違反で訴え厳正に対処することも考えている」などと害悪の告知を含めた圧力をかけたとされる。

大学が山中氏と連絡が取れなかったことは事実で、学内の動揺を抑えることは正当な対応だが、大学側は義務がないのにもかかわらず、「本人と連絡がつかない、という事実と異なる内容を記載してしまった点について、心よりお詫び申し上げます」「山中先生には大事な時期に大変ご迷惑をおかけしてしまいました」などのメールを送ることになり、告発したグループは、この行為が刑法の強要罪にあたると主張している。

さらに昨年の市議会がこの問題を取り上げた際、山中氏自身が「とにかく、理事長・学長には重大性をしっかり認識してもらい、修正をしてほしいという趣旨で、全て申し上げております」と発言していたことについて、告発状では「言葉の具体的な内容は記憶していないが、そのような趣旨の発言「全て」が、理事長・学長に重大性を認識させ、訂正・謝罪に応じさせるための発言であることを認めているものだ」とも指摘している。

地元紙、真鶴町長への告発と扱い落差

告発受理は地元紙・神奈川新聞が3日朝刊で特報した。同紙は一連の山中氏に対する告発の動きについて、読売新聞や毎日新聞ほど大きく取り上げてこなかった印象が強く、山中氏を追及する横浜市民がツイッターでしばしば報道姿勢を厳しく指摘してきた。今回ばかりは地元紙の面目躍如となるかと思われたが、県内のローカルニュースを伝える広域面にベタ記事として小さく掲載されるにとどまった。

他方、同じ朝刊の一面準トップで、神奈川県真鶴町長らが選挙人名簿を不正にコピーして自らの選挙に利用したとして町民が横浜地検小田原支部に刑事告発状を提出した動きを大々的に掲載した。こちらも現職首長が特権を使って自らの再選を有利に進めようとした疑惑として、異常極まる事態ではあるが、まだ告発状を提出した段階に過ぎない。

これに対し、山中氏については告発状が2度も受理されており、大都市・横浜の市長として前代未聞の展開になっているはずだが、神奈川新聞はニュースバリューとして真鶴より横浜は相当低いと判断したことになる。

紙面を手にした市民はツイッターで「(山中氏への告発は)現職教職員も含む市民らによる2度目の刑事告発。今回で2度目だよ! この扱い方を見れば神奈川新聞社の報道姿勢が分かるよね」と不信の目を向けていた。

関係者によると、神奈川新聞は刑事告発状が受理される動きをいち早く掴み、告発した人たちにも取材をしていた模様だ。もしかしたら取材した記者にとっても、真鶴の告発ニュースとの扱いの差は不本意だった可能性もあるが、山中氏の疑惑については本人だけでなく、日常それをウォッチしている市政記者クラブのメディアに対しても市民は厳しく目を向けている。