スポーツカーレースの“強豪”であるチームWRTから、2022年のファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパにフル参戦するバレンティーノ・ロッシ。MotoGPのレジェンドにとって、シリーズデビュー戦となった今季開幕戦が4月1~3日、イタリアのイモラ・サーキットで行われ、ゼッケン『46』をつけたアウディR8 LMS Evo IIは総合17位でチェッカーを受けた。
ロードレース世界選手権で通算9回のチャンピオンを獲得した“レジェンドライダー”が、MotoGP引退後の本格的な四輪レース転向後、初めてGTワールドチャレンジの公式戦に臨んだ。その姿を一目見ようとイモラ・サーキットには多くの観客が訪れ、コースサイドにはお馴染みの『46』という数字が入ったフラッグも見られた。
ロッシが加入したチームWRTは、2021年シーズンのオーバーオール・チャンピオンチームであり、WEC世界耐久選手権でもル・マン24時間レースでクラス優勝を飾るなどの活躍でシリーズチャンピオンに輝いた強豪チームだ。
そんなチームで46号車アウディをドライブすることになったロッシは、チームメイトのニコ・ミューラー、フレデリック・バービシュとともにデビュー戦に挑み、アタッカーを務めた予選Q3では51人中37番手となる1分41秒132をマーク。3人のタイムの平均で決まる予選において、総合14番手グリッドを確保した。
決勝前、ロッシは記者団のインタビューに応えGT3カーのドライブについて次のように述べた。
「バイクとの大きな違いは、プラクティスごとに燃料が多いときと少ないとき、タイヤが新しいか古いかでマシンの状態が大きく異なる点だ。そこには大きな違いがある。速い人はいつでも速く、短時間でクルマの限界に到達することができる」
「僕はコースの序盤、トサ・コーナまでの区間はかなり速いんだ。しかし、そのあとのピラテラ、アッケ・ミネラリ、バリアンテ・アルタはチームメイトたちが強いところだ。最後のリバッツァは僕が得意とするところだから頑張らないといけない」
「だが、それはコースによって違う。高速コーナーだから、低速コーナーだからというように特別なウイークポイントがあるわけじゃないんだ」
「すべてがとても速く変化している。その中で僕はうまく走れていると思うし、ニコやフレッドからそれほど離れていない。だけど、いくつか改善しなければならないところもある」
■「すべての瞬間を楽しんだ」と決勝後のロッシ
迎えた決勝レース、3時間で争われるエンデュランスカップでは通常、ひとりが約1時間のドライブを担当する。46号車ではミューラーが最初のスティントを担当。スタートから順調にラップを重ねると、57分後にピットに戻りロッシへとバトンをつないだ。
ロッシはデビュー戦ながら安定したペースを刻み、この日2度目のセーフティーカーが出るまでの約35分間、総合14番手で確実に周回を重ねた。しかし、スティント終盤に事件が起きる。ドライバー交代と給油、タイヤ交換のためピットに戻ったロッシだったが、混雑するピットロードで停止位置を見失いチームのピットボックス前を通過してしまう。
このミスによって46号車アウディはもう1周コースを走ってピットに戻ることになり、大幅にタイムを失ってしまうが、ロッシはGTWCヨーロッパ最初のスティントでの仕事を完遂しバービシュに後を託すことに成功した。フィニッシュドライバーを務めたバービシュは約1時間後、17位でチェッカーフラッグを受けている。
「とても良い週末だった。僕たちはよく働き、すべての瞬間を楽しんだよ」とGTWCデビュー戦を振り返ったロッシ。
「レースでは力強く、トップ10に入るくらいの結果を残すことができたかもしれないが、残念ながらピットストップでミスがあった。だけど、僕たちはそこから学ぶことができる」
「GTレースでは処理する情報などが非常に多い。僕にとっては、まだ多くの新しいことに対処しないといけない状況だ。これが“経験”と呼ばれるものだと思う」
全10戦で争われる今季のGTWCヨーロッパのひとつめのレースを終え、最初の経験を積んだロッシ。誰もが認めるレジェンドがこの先、さらに経験を積み重ねていきシーズンの終盤にどのような走りを見せてくれるのか楽しみなところだ。