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1月下旬に日本に赴任したばかりのアメリカのラーム・エマニュエル駐日大使とロシアのミハイル・ガルージン駐日大使との間で北方領土問題をめぐり、メディアやツイッターを通じて早くも火花を散らしている。

エマニュエル米国大使(ツイッター)とガルージンロシア大使(Wikimedia)

事の発端は、ガルージン大使が2日、東京都内で行った記者会見だ。時事通信によると、ガルージン大使は、日本政府がウクライナ情勢に際して、欧米各国の制裁に同調しないよう「日ロ関係の前向きな雰囲気の醸成に資さない」などとけん制した。

これに対し、エマニュエル大使は翌3日午前、ツイッターで日本語と英語でダブル投稿し、「ロシア大使が日本を威嚇したタイミングはこれ以上ないほど悪い。次の月曜日は北方領土の日であるという自覚を欠いたものだ。ルールと敬意は大切である。共有する価値観と原則のために、米国は日本と岸田首相を支持する」とロシア側の動きをさらにけん制した。

しかし、ロシア側も負けてはいない。約4時間後、駐日ロシア大使館のツイッターはエマニュエル氏の投稿のスクリーンショットを引用しながら英語で投稿。「エマニュエル大使への返答」と切り出した上で、同氏が「これ以上ないほど悪い」と酷評した、ガルージン大使の発言タイミングについて「タイミングは完全に正しい」と猛反論。

続けて、エマニュエル大使がロシアの北方領土問題に関する立場を「まだ認識しているとはいえない」と皮肉気味にやり返し、「ロシアは、南クリル諸島(注・ロシア側の北方領土名称)に関する非合法な主張や、それらに関する“催事”のことなどは知ったことではない」と、領土問題における自らの正当性を強調した。

エマニュエル大使は、オバマ政権の首席補佐官やシカゴ市長を務めるなど、歴代のアメリカ大使の中でも政治経験が豊富だ。「ランボー」の異名を取るなど喧嘩も辞さないことで知られ、日本への着任早々、本領を発揮している。

一方、ロシア大使館側もこれまでツイッターで、ロシア政府に都合の悪い報道をした日本の新聞社にプレッシャーを与える投稿をするなど、巧みな「世論戦」を仕掛けてきた経緯があり、大使館には情報機関関係者が多数勤務しているとされる。

ウクライナ情勢を巡って米ロ両国の緊張感が増す中で始まった“喧嘩師”同士の場外戦。アメリカ大使館のある赤坂1丁目とロシア大使館のある麻布台の間は、直線距離にして1㌔ほどで徒歩で15分の距離だが、この狭いエリアで日本の世論形成に影響を与えようとする国際的な空中戦が熱く繰り広げられそうな気配だ。