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 専門店に比べると、ディーラーの洗車はお粗末な部分が多く見える。洗車機で適当に洗われて、洗車傷をついて点検から戻ってくるという体験をしたことがあるユーザーもいるのではないだろうか。

 しかし、ディーラーでも依頼の仕方によっては、品質良く洗車を行ってくれるところもたくさんあるのだ。そこで今回は、カーディーラーに、良い洗車をしてもらうための、テクニックを紹介していこう。

文:佐々木 亘
画像:Adobe Stock(トップ:384499087@Adobe Stock)

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■手洗い・機械洗車、どちらも傷のリスクは付きまとう

 洗車傷とは、予備洗いで落とし切れなかった異物によって付けられる。例えば砂埃が付着したボディに対して、流水で予備洗いを行うわけだが、よほど丁寧に行わないと、微細なものまでしっかりと流し切ることはできない。

 砂が残ったままスポンジやブラシで擦ってしまえば、ボディとスポンジの泡の間に砂などの異物が挟まり傷になる。手洗いでも機械洗車でも、事前の洗浄が不十分であれば、傷がつくリスクは同等だ。

手洗いも洗車機も事前の洗浄次第で傷がつくリスクは同等にある(209964720@AdobeStock)

 手洗いは傷がつきにくいとされているが、最近の洗車機は十分な予備洗いをするものも多く、下手な手洗いよりも傷がつきにくいものも多い。一概に、どちらがマシとは言い切れないところもある。

■専門業者とディーラー洗車の大きな違いは何か

 コーティングや洗車を専門に行うお店の洗車手順は「素晴らしい」の一言だ。ディーラーの洗車と大きく違うのは、使っている水の量と、使える時間の差にある。

 高圧洗浄機を使用するのは、双方に共通するが、汚れ落としにかける水の量は、専門店の方が圧倒的に多い。そして、ムース上になった泡で滑りを良くし、摩擦を最小限に小さくしながらクルマを洗っていくのだ。

 時間にして30分~60分、価格はプリウスなどのサイズで3,000円弱が相場だろう。

 専門店が収益の柱にする洗車だが、ディーラーでは点検・整備のついでに行われるサービスだ。

 点検・整備後のサービスでは、1件の洗車にかけられる時間は10分ほど、費用はユーザーから徴収していない(点検費用に含まれる)し、洗車を整備メニューに入れる店でも、費用の相場は1,000円~2,000円程度だ。

 どちらが高品質かは価格をみれば、一目でわかる。

 それでは、専門業者と同等とまではいかないが、質の高い洗車をディーラーに頼むためにはどうしたらいいのか。ディーラー整備の事情を理解すれば、その方法はわかるはずだ。

■時間を確保することが良質な洗車の一歩目

 ディーラーの半年点検は30分、1年点検では60分ほどの時間を取っているが、その中で洗車にかけられる時間は前述のとおり10分程度。まずは、この作業時間の内訳を知ることが重要になる。

 午前11時から半年点検の予約があったと仮定しよう。11時にユーザーが来店し、受付・御用聞きを行って5分程度が経過。車両を動かし、ストールに入れ、書類を確認しながら行う整備の内容と車両の同一性を確認、作業に入る。この時点で11時10分だ。

 リフトで持ち上げエンジンオイルを抜き取る。抜き取っている間に、足回り・下回りの点検を行う。クルマを降ろし、エンジンルームなどの点検を行いながら、新しいオイルを注入し、オイル量を測定。問題が無ければ、洗車に移るが、時刻は11時20分を回っているだろう。

 洗車機にクルマを入れ、スタートスイッチを押す。洗車機が動いている5分程度の時間で事務所へ戻り、整備の記録を付け、書類の手続きを行う。事務手続き終了と同時に、洗車機からクルマが出てくる。残り5分で拭き上げを行い、ユーザーへクルマを引き渡す。これが、最短距離で行われる30分点検コースの全容だ。

整備士の仕事は次々と入っており、洗車にかけられる時間がそもそも少ないのだ(324143543@AdobeStock)

 整備士には次々に仕事が入っており、同様の作業予定が1日中続く。洗車に時間をかければ、後の作業がどんどんと遅れていくのが分かるだろう。

 ディーラー洗車の品質を上げるために必要なのは、何よりも時間だ。予約の時点で洗車をしっかり行ってほしい旨を伝え、作業時間を長めに確保し、整備士に余裕を持たせなければならない。特に手洗い洗車をお願いする場合は事前に伝えておいたほうが良い。

 また、整備開始時刻のギリギリに、店舗に到着するのも避けたい。予約時刻の10分前にはお店に入っておき受付を行う、確保された時間を整備士が100%使える状態にしておくことが大切である。

 ほとんどのディーラーが洗車機を導入し、洗車機の使用をルーティン(洗車中は事務作業の時間)としている中で、手洗い洗車はイレギュラーな対応となる。洗車機にかけられるのが嫌であれば、事前に手洗いが必要だと伝えること。また、お店から「このお客様は手洗い」と把握されていることが大切だ。(筆者のいたお店では、手洗いオーナーの点検は15分多く予約時間を確保するか、作業人数を1名増やすことがルール化されていた。)

事前に手洗いを希望すれば手洗いで対応をしてもらえる。お店から「このお客様は手洗い」と把握されていることが大切である(428451137@AdobeStock)

 ユーザーの想像以上に整備士の仕事は時間に追われている。これを理解し、事前に時間を確保するような予約をとることで、ディーラー洗車の品質は劇的に高くなるはずだ。

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