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 ディーラーの中古車展示場へ行くと、非常に新しい中古車と出会うことがある。新車登録から1年しか経過しておらず、ほとんど新車のようなクルマが中古車として売られているのだ。

 最近増えている1年落ち中古車は、新車とどちらを買えばいいか悩むユーザーも多いと思う。今回は、それぞれの特徴を加味しながら、購入の決め手となる損益分岐点を考えていく。中古車か新車かの購入で迷ったらぜひこの記事を目安として参考にしてほしい。

文:佐々木 亘。
画像:Adobe stock(トップ:64676054@Adobe stock)

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■1年落ち中古車の正体は?

 わずか1年で中古車販売されるクルマとは、どういう素性があるのだろうか。一般ユーザーが、1年でクルマを買い替えることもあるとは思うが、それにしては数が多すぎる。

 この1年落ち中古車は、販売店で使われていた試乗車や社用車の可能性が高い。1年間で数千キロ程度しか走行していないクルマは、元販売店所有のクルマが多いだろう。

新車と1年落ち中古車のどちらを選べば良いか…(471616807@Adobe stock)

 対して登録後1年で1万キロ程度を走行している中古車もある。このような中古車は、販売店が関係するリース会社がリースアップで引き取ったクルマであることが多い。法人用車両かレンタカーが前歴となるだろう。

 どちらが良い悪いというわけではないが、単に1年落ち中古車と言っても状態の違いや種類があることを覚えておきたい。

■新車と1年落ち中古車、税金や手数料はどう変わる?

 では、新車と1年落ちの中古車は、どちらを買うほうがお得になるのかを考えていこう。

 まず、新車と中古車の購入時にかかる諸経費について触れていく。

 税金で違いが出るのは、自動車重量税だ。新車であれば25,000円~50,000円程度の範囲で、重量税の負担が必要となる(購入する新車が、国の定める燃費基準を達成しているか否かで、減税または減免などが行われる)。1年落ち中古車の場合は、ほとんどが車検残有の状態で販売されているため、重量税の負担はない(車検切れの中古車に関しては、重量税の負担が発生する)。

新車と中古車の税金で違いが出るのは、自動車重量税である(433386853@Adobe stock)

 自動車税や環境性能割に関しては、新車・中古車を問わず、購入時期や購入車種によって変化し、新車・中古車で生じる差は小さい。自賠責保険も同様だ。その他代行費用も、新車購入と中古車購入での大きな差は無いだろう。

 ただし昨今、中古車業者のなかには、適正金額とは言えない手数料を取り、印紙代や保険料を大きく水増ししてくる不届き者がいる。中古車購入の際には手数料と税金が適正かを確認したい。

■新車と1年落ち中古車、購入の境界線はココ!

 税金関係では、自動車重量税の分だけ中古車がお得になったが、その他の面ではどうか。

 車両の保証は、両者ともに大きな差は無い。どちらも基本的には新車保証を利用できる。1年落ち中古車の場合は正規ディーラーでの「保証継承」手続きが必要になるが、必要な費用は1万円程度だ。

 購入前からする話ではないが、手放す際の下取り(買取)査定額に差が生まれる。新車で購入し、手放すクルマはワンオーナー車となるが、1年落ち中古車の場合は、ツーオーナー車として売却するためだ。下取り査定額は5万円~10万円ほどの差が生まれることが多い。

 さらに、新車と比べて1年落ち中古車は車検の残り期間が短い。1年から1年半ほど新車よりも早く車検満了が訪れるため、購入後の保有期間中に車検を通す回数が1回増えると考えていいだろう。車検+メンテナンスを同時に行うと、費用は税金を含めて約20万円だ。

 ここまで出てきた金額を整理して、新車・中古車の差を考えると、中古車は自動車重量税が3万円ほど安く、保証継承に1万円、下取りで5万円ほど損をし、車検が1回多いため20万円の手出しが増える。

 よって、-3万円+1万円+5万円+20万円=23万円という計算だ。車両本体金額200万円前後の国産コンパクトカーなら、新車の車両価格(オプション込み)よりも、中古車の車両価格が23万円以上安ければ、1年落ち中古車を選ぶメリットは大きくなる。

 なお、この中古車の走行距離が1,000㎞の場合には、分岐ラインは24万円だ。

 中古車の場合、年式はもちろんだが、走行距離でも価格や状態は変わる。概算だが、その中古車の走行距離1㎞に対して10円を掛けて、先ほどの23万円に加えて欲しい。例えば1年落ちで1万キロ走行しているクルマであれば、新車との差額33万円が損益分岐点となる。

中古車の場合、年式はもちろんのこと、走行距離でも価格や状態は変わる(1853833389@Adobe stock)

 また、新車の車両本体価格が高くなればなるほど、下取り査定の落ち幅や車検費用は高くなるだろう。そのため、新車価格の11%相当額が損益分岐点の基準となり、そこに検討中古車の走行距離を1㎞あたり10円で加えていくといい。

 あまりに走行距離が少なく、登録からの経過月数が短い中古車は、割高で販売されていることが多いため、1年落ち中古車の狙い目としては、走行距離が1000㎞以上、登録後の経過月数12か月以上18カ月未満あたりが良いところだ。

 悩みどころの両車であるが、上記の条件に合致し、自分の好みのボディカラーやメーカーオプション装着車であれば「買い」だと思う。希望の色や仕様でない場合は、新車の方向で考える方が無難ではないだろうか。

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