ほぼ満点の評価でプラグインハイブリッド+SUVのパイオニアとして昨年10月にフルモデルチェンジされ、現行モデルからプラグインハイブリッド専用車となったアウトランダーは、すでに1万台を超える受注を集めるという好調なスタートを切った。
新型アウトランダーとガチンコのライバルとなるのはRAV4 PHVで、ここでは昨年実父がRAV4 PHVを買い、納車後即預かって1カ月で1000km走った(慣らしを任されただけとも言う、笑)経験のある筆者が2台を項目ごとに10点で比較してみた。
文/永田恵一、写真/トヨタ自動車、三菱自動車、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】プラグインハイブリッドの新時代!! アウトランダーPHEVとRAV4 PHVを徹底比較!!(20枚)画像ギャラリー■エクステリア……より個性的でPHVを主張しているアウトランダー
好みの分かれる分野だが、アウトランダーは強い存在感あるフロントマスクなどにより大きめのミドルSUVに欲しい押し出し、ボリューム感を備える。RAV4 PHVはPHV専用の精悍なフロントマスクを持つが、アウトランダーほどのインパクトは感じない。
アウトランダー 8点
RAV4 PHV 7点
■インテリア……随所に上質感あふれるアウトランダー、スポーティー感のあるRAV4
アウトランダーはダッシュボードなどが上質感にあふれており、特に最上級グレードのPに標準装備されるセミアリニンレザーシートはキルティング仕立てとなっているのに加え、インテリアカラーもタンカラーのアクセント、ホワイト系のライトグレーともに上質感を際立てている。
一方、RAV4 PHVはシートやセンターコンソールボックスのレッドステッチなど、スポーティな雰囲気を演出しているが、アウトランダーに比べると地味である。そのためPHVでないRAV4にあるインテリアの細部パネルに付くアクセントカラーを設定してほしい。
アウトランダー 9点
RAV4 PHV 7点
■なんと、アウトランダーには3列目シートが存在! RAV4もリアは広々ゆったりだ
2列目の広さ、快適性は同等だ。アウトランダーが座るには2列目の乗員の協力が必要など補助席的ながら、あればイザという時に便利な3列目シートを備えている点はRAV4 PHVに対するアドバンテージになっている。3列目シートの出し入れがしやすい点も評価できる。
アウトランダー(3列目シートの存在含め) 9点
RAV4 PHV 8点
■ラゲッジスペース……ほぼ同等のスペースを確保、両車とも広い
どちらも大きめのミドルSUVとして十二分な広さを備えている。
アウトランダー 8点
RAV4 PHV 8点
■動力性能……RAV4 PHVはトータル出力306psで圧倒的な動力性能を誇る
絶対的な動力性能を0-100km/h加速で見ると、アウトランダー8.2秒、RAV4 PHV6.0秒とRAV4 PHVの圧勝だ。しかし、RAV4 PHVのアクセルを深く踏むと、車内は静かなままスピードメーターだけが猛烈な勢いで進む加速は魅力だが、アウトランダーも十二分な速さを備えている。
ハイブリッドのフィーリングはいい意味でエンジンの存在感が薄いのはアウトランダーで、電気自動車に近いフィーリングが好みの人にはアウトランダーが向くだろう。
アウトランダー 8点
RAV4 PHV 10点
■ハイブリッド状態の燃費、電気自動車状態の電費……効率性のよさではTHSに分があるようだ
カタログに載るWLTCモード燃費が22.2km/LのRAV4 PHVは、実用燃費を計測したところ18.0km/L程度だった。対するアウトランダー(WLTCモード燃費は最上級グレードのPで16.2km/L)は計測した経験はないが、おおむね14.0~15.0km/Lといったところだろう。
電気自動車状態での電費は、RAV4 PHVは18.1kWhのバッテリーを積み、満充電からの航続距離は95kmと公表されている。RAV4 PHVを預かっている際に充電設備がなかったため、バッテリーをチャージモードで95%程度まで充電したイメージで計測したところ、電費は6.5km/Lで、気候のいい時期なら80km程度電気自動車として使えることが期待できそうだ。
アウトランダーは20kWhのバッテリーを積み、満充電からの航続距離は公表値で73km(最上級グレードのP)なので、電気自動車状態での航続距離はバッテリーが大きいこともあり、RAV4 PHVと同等だろう。
アウトランダー 8点
RAV4 PHV 10点
■ハンドリング、乗り心地……三菱自慢のS-AWCと上質な足回りのアウトランダーが光る
この点がアウトランダーとRAV4 PHVの大きな違いで、クルマのキャパシティ(容量、器)によるものなのか、アウトランダーの圧勝となった。
RAV4 PHVは動力性能の向上、バッテリーの搭載による重量増に対してクルマが追い付いていない傾向で、RAV4の2Lガソリンや2.5Lハイブリッドほどハンドリングや乗り心地といった質、乗り味はよくない。そのため、そのあたりの質をブレーキも含めて高めたGRスポーツのようなグレードも欲しい。
日産のプラットフォームを使うアウトランダーは20インチタイヤの装着をはじめとした三菱自動車からの要望もあり、クルマのキャパシティに余裕がある。加えてショックアブソーバーなどもいいものが付いているようで、20インチタイヤを履きながらオフロードコースですら路面への追従は申し分なく、公道で不快な硬さを感じることもない。
ハンドリングもオンロードではバッテリーを床下に積むプラグインハイブリッドらしいドッシリとした印象を持つのに加え、オフロードコースでも車重2トンオーバーのSUVとは思えないほどガンガン走れる。さらに、リアモーターの出力の大きさによるコントロール性の高さやモード選択による変化といった楽しさも備える。
アウトランダー 10点
RAV4 PHV 7点
■装備内容、コストパフォーマンス……ともに500万円級のSUVとして申し分ない装備内容だ
各々の量販グレードとなるアウトランダーP(532万700円)、RAV4 PHV G”Z”(上級グレード、499万円)で、アウトランダーPのアドバンテージを見ていくと、主にV2Hのための急速充電機能、ヘッドアップディスプレイ、セミアリニンレザーシート、前席のリフレッシュ(マッサージ)機能、3列目シート、BOSEのオーディオ、18インチのRAV4 PHVに対して20インチタイヤと、33万700円の差額を大幅に上回る装備が加わり、お買い得感はRAV4 PHVより高い。
なお、RAV4 PHVの最上級グレードとなるブラックトーン(539万円)はG“Z”に対し、19インチタイヤ、デジタルインナーミラー、ヘッドアップディスプレイなどが加わるものの、40万円の差額ほどではなく、加わる装備も必要性が薄いものが多い。
その挙句、ブラックトーンというグレード名だけにツートンカラーのボディカラー代は539万円に含まれるのかと思いきや、別料金とかなり割高なので、基本的に避けることを薦める。
アウトランダー 10点
RAV4 PHV 8点
■総合評価点…三菱渾身の力作にして最新作のアウトランダーに分があるか
アウトランダー 10点
RAV4 PHV 7点
この2台は総合すると質のアウトランダー(主にハンドリングや乗り心地)と量のRAV4 PHV(強烈な加速、燃費と電費)というキャラクターである。RAV4 PHVの強烈な加速は大きな魅力だが、それは普段めったに使う機会のないものだけに、総合すると乗っていていつでも「いいな」と感じられる質を持つアウトランダーの圧勝だ。
この2台の燃費の差は小さくないものと思われるが、アウトランダーも燃費は充分いいのに加え、500万円級のクルマであることを考えれば大きな差ではないとも考えられるのではないだろうか。
■まとめ……アウトランダー登場でますますこれからのPHVの発展に期待が持てた!!
何よりも驚かされたのが三菱自動車から、あれだけ高い商品力を持つRAV4 PHVを慌てさせるクルマが出たということで、アウトランダーに乗ると三菱自動車からこれから出るクルマが非常に楽しみである。
【画像ギャラリー】プラグインハイブリッドの新時代!! アウトランダーPHEVとRAV4 PHVを徹底比較!!(20枚)画像ギャラリー投稿 プラグインハイブリッドSUVの本命はどっちだ!? 乗ってわかった新型アウトランダーPHEVとRAV4 PHVの真実 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。