2022年シーズンのF1で流行語となりつつある『ポーパシング』。各チームが頭を悩ませるこの不思議な現象がなぜ生じるのか、イギリス『Sky Sports』の名物レポーター、テッド・クラヴィッツが動画で解説している。
2022年のF1で、直線区間でマシンが上下に激しく跳ねる姿を見たことがある人は多いはずだ。『ポーパシング』または『バウンシング』と呼ばれるこの現象は、小型のイルカ(=ポーパス)のようにマシンが跳ねる(=バウンス)ことからそれぞれの呼び名がついた。
「ポーパシングとはどんなもので、なぜマシンに悪影響を与えるのか解説しよう」と切り出したクラヴィッツは、CGモデルを使ってこの現象を解説した。
ポーパシングが2022年シーズンになって取沙汰されるようになったのは、今シーズンから導入された新レギュレーションがマシンのグラウンドエフェクトを重視していることによる。「大量のダウンフォースがフロアによって生み出されている」という今シーズンのF1マシンでは、フロア下面に設けられたストレーキとディフューザーによって車体と地面のあいだの空気が吸い出され、この負圧によってダウンフォースを得ている。
しかし、その性質上「ときにはストレートで空気がストールしてしまうことがあるんだ」とクラヴィッツは解説する。マシンの速度が上がると、ダウンフォースによりマシンが押さえつけられ、空気が十分に入らなくなってしまうのだ。
「マシンが地面と近づきすぎてしまうと、ダウンフォースを生み出すことができなくなる」
「ダウンフォースを失ったマシンが浮き上がると、(車体下面に空気が入るので)またマシンは下におしつけられる」
「これを何度も繰り返してしまうのが、ポーパシングまたはバウンシングと呼ばれるものだ」
クラヴィッツは、ポーパシングを防ぐ最大の対応策はマシンの車高を上げることだと説明する。しかし、そうすればダウンフォースは減り、ラップタイムも遅くなる。「だから各チームはそんなことはしたくない」というのが本音だ。
さらに彼の言葉を借りれば、マシンのパフォーマンスに大きく影響するポーパシングは「ドライバーもデザイナーもエンジニアも好まない」現象となる。各チームにとって、この問題の解決策をいち早く見つけることが今シーズンを争ううえでの鍵になるのは間違いない。