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商用車の王者、ハイエースに昨年改良を受けたキャラバンはどう立ち向かうのか!?

 日本におけるキャブオーバーバンの二大巨頭、トヨタハイエースと日産キャラバン。どちらも日本で「商用車」と言ったら外すことのできない存在だ。

 そんな中、2021年10月20日にマイナーチェンジしたキャラバンだが、人気でハイエースに追いつけていない状況だという。ハイエースの強さはどこにあるのだろうか。ハイエースとキャラバンの違いを分析しながら、ハイエースが好調に売れる理由を分析していく。

文/国沢光宏
写真/日産、トヨタ、西尾タクト

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■いまだに続く商用車ワンボックスカテゴリーでのハイエース圧倒的な優位

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モデルチェンジのサイクルで言えばハイエースの方が「古い」のだが、販売台数ではそれをものともせず人気を獲得しているという

 昨年のマイナーチェンジで安全装備や燃費を向上させた日産キャラバンながら、販売台数がググッと上昇するという状況になっていない。依然としてハイエースの圧倒的優位が続いている。

 同じような使い勝手を持ち、同じような価格帯のクルマなのに、なんでハイエースのほうが人気なのか? ハイエースで全日本ラリーに出場した1BOXカー好きの自動車評論家が分析してみたい。

■改良されたキャラバンの優位性

2021年10月20日にマイナーチェンジを行った日産 キャラバン。内外装デザインアップデートや動力系の進化、安全機能が追加がなされた

 まずマイナーチェンジでキャラバンがどんな改良を行ったのか、再確認しておきましょう。ひとつ目はパワーユニットの改良。従来、ガソリンエンジン同士を比べると、燃費や動力性能、静粛性でハイエースに5%くらい負けていた。そいつをイーブンにしている。

 ふたつ目はADAS性能。いわゆる自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の強化である。マイナーチェンジでモービルアイ製を採用した。

 従来モデルにもADASが付いていたけれど、レーダーしか付いていない旧式。停止車両に対する自動ブレーキ機能のみで、カメラがないため歩行者は検知すらできなかった。マイナーモデルはカメラ+レーダーという新しいタイプにグレードアップ。

 歩行者も検知可能な最新の乗用車とまったく同じ機能を持つから、安心して運転できるようになった。「サポカーSワイド」にも対応している。

■それでも根強いハイエース人気

 ラリーでハイエースに乗っている私ながら、実は1BOX好きで、キャラバンも何度か購入を考えたこともあります。そんなポジションからマイナーチェンジしたキャラバンを見ると、なかなか魅力的だったりする。

 だったらハイエースでなくキャラバンを買うか、と聞かれたら答えは「やっぱりハイエースかなぁ」。なぜハイエースを選ぶのかと言えば、3つ理由を挙げておく。

■理由1.中古車買取価格の高さ

 最初がリセールバリュー。同じ価格で買うのなら、将来手放す時のリセールバリューは高くあって欲しい。300万円で買ったとしよう。5年後に180万円で手放すのと140万円で手放すのは40万円も違う。実質的な「5年間分のクルマの価格」を考えたら120万円と160万円になる。リセールバリュー、今までも今後もハイエース有利が続くこと間違いなし。なぜか?

 耐久性が違うためだ。ハイエースの寿命は、ハイエースの開発チームに聞いても「わからないんです」という。ハイエース、日本で10万~20万km走った後、海外に輸出される。

ちなみにハイエースも2020年4月マイナーチェンジ以降のモデルは、トヨタセーフティセンスやデジタルインナーミラーが標準装着されている

 例えば、アフリカなどに渡ったハイエースはミニバスとして使われます。毎日300kmくらい走ることなど普通。1年で10万km。アフリカじゃ17年前の先代100系ハイエースまで走っている。いったい何万km走ってるんだ?

 どうやら100万kmは普通らしい。車体の基本骨格が強固。使っている部品もハブベアリングなどキャラバンより、ふた回りくらい大きく長持ちするそうな。したがって日本で10万km走ったハイエースにもオークションで高い値が付く。

 キャラバンは海外であまり人気ないため、10万km走った車両の買い取り相場を見ると40万円くらい違う。リセールバリューを考えたらハイエースです。

■理由2.アフターパーツの潤沢さ

 そして改造パーツ。ハイエースの場合、さまざまなパーツが手頃な価格で出回っている。なかでも乗り心地を改善させられるサスペンション系はネットで検索すると山ほど出てきます。私たちがラリーで開発した「乗るとびっくり!」のサスペンションキットも入手可能。

TRDからも2018年に「乗り心地を改善する」サスペンションキットが発売された。オートサロンのようなイベントでも、さまざまな企業が改修した車両に出会うことができる

 エクステリアやインテリア系のパーツだって多数! 好みのハイエースを作れる。趣味のクルマとして楽しんでいる人は多い。

 一方、キャラバンのパーツを探すと、案外少ない。キャラバンのユーザーって多くが法人。都市部で一番見かけるキャラバン、高齢者施設の送迎車だ。ハイエースにないナロー&ロングボディがあり、狭い道の多い我が国で重宝されている。

基本的に法人ユーザーだとノーマルのまま使う。ドレスアップした高齢者の送迎車、見たことないです(笑)。パーツあっても少なく&高い。

■理由3.ボディバリエーションの違い?

 ボディバリエーションの違いも影響しているかも知れません。大きく分ければどちらも3種別。キャラバンは、1)標準、2)ハイエースには存在しないナローのロング、3)ワイドのスーパーロングの3タイプ。ハイエースだと、1)標準、2)キャラバンには存在しないワイドのロング、3)ワイドのスーパーロングというラインナップ。ハイエースのワイド&ロングボディ、海外で人気。

キャラバンには存在しないワイドのロングが海外で人気があり、それが効いている?

 そんなキャラバンながら間もなくディーゼルエンジン搭載車もマイナーチェンジしてくる予定。大幅な性能向上を考えていると聞く。もしディーゼルの1BOXカーの購入を検討しているのなら、少し待ってみるのもいいかもしれません。ADAS性能で考えるとキャラバン優勢ですから。どうやら働くクルマというイメージでなく、ハイエースのようなレジャーユースも打ち出すらしい。


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