もっと詳しく

 ひとつのバス事業者を掘り下げて紹介する、バスマガジンの名物コーナー、バス会社潜入レポート。今回は2017年に遡って、7月発売号で掲載した京浜急行バスグループ編を振り返って紹介する。

 京浜急行バスは京浜急行電鉄の子会社で、京急の鉄道沿線に路線を展開する。羽田空港へのアクセス輸送も担っており、関東各地へのリムジンバスを展開。

 東京湾アクアラインを経由する中距離高速バス、東北や中国・四国方面などへの長距離高速バスも運行する。傘下に3社の地域分社があり、リムジンバス・高速バスの一部も担当している。

(記事の内容は、2017年7月現在のものです)
構成・執筆・写真/加藤佳一(B.J.エディターズ)
※2017年7月発売《バスマガジンvol.84》『おじゃまします! バス会社潜入レポート』より
(京浜急行バスグループ特集 その1)


■京浜地区から三浦半島の路線とリムジンバス・高速バスを営業

●若宮大路

湘南京急バス鎌倉営業所前を行く〈鎌12〉九品寺循環。若宮大路は鶴岡八幡宮と由比ヶ浜を一直線に結ぶ鎌倉のメインストリートだ

 京浜急行バスは京浜急行電鉄が100%出資する子会社である。京浜急行電鉄同様、東京都港区に本社を置き、都内に京浜島、羽田、大森、神奈川県内に新子安、横浜、能見台(のうけんだい)、追浜(おっぱま)、堀内(ほりのうち)、鎌倉、逗子(ずし)、衣笠、三崎、久里浜の13営業所。

 このうち京浜島、羽田、新子安はリムジンバス・高速バスのみ担当し、羽田、横浜、能見台、追浜、堀内、鎌倉は地域分社の羽田・横浜・湘南京急バスに管理を委託している。

●JR大森駅東口

JR京浜東北線の大森駅東口には湾岸工業地域からの路線が集中。夕刻になると、退勤客で満員になったバスが次々に到着する

 一般路線は京急の鉄道沿線をエリアとするが、JR蒲田駅・羽田空港発着路線は羽田京急バスに移管、横浜・横須賀・鎌倉市域の路線の多くは横浜・湘南京急バスに運行を委託している。

 この結果、京浜急行バス本体は大森・逗子・横須賀・衣笠・久里浜・YRP野比(のび)・三浦海岸・三崎口の各駅に発着する系統を中心に営業。その多くが工業地帯や住宅地域の通勤通学路線で、小型バスを使用したきめ細かなバスサービスも提供している。

●羽田空港国内線第2ターミナル

羽田空港アクセス輸送は京急バスの重要な使命。バスは国内線第1・第2ターミナルと国際線ターミナルの連絡路を複雑に走行する

 また鎌倉・葉山や横須賀・観音崎、三浦半島南端の油壷・三崎港・城ヶ島などでは一定の観光需要があり、レトロ調バスの運行や、鉄道と連携した企画型フリー乗車券の設定などにより対応している。

 1960年代に運行開始した羽田空港リムジンバスは、空港利用者の増加を受けて80年代以降、関東一円に路線を延ばすこととなった。また97(平成9)年に東京湾アクアラインが開通すると、京急線沿線と房総半島を結ぶ中距離高速バス路線が加わった。

●海ほたる

東京湾アクアライン経由の高速バスは京浜地区と房総半島を直結して急成長。川崎~木更津系統は日中、人気の海ほたるPAに停車する

 夜行高速バスの運行についても先駆的で、86(昭和61)年に開業した品川~弘前間〈ノクターン〉以降、東北・中部・近畿・中国・四国へと路線を拡大した。

 現在は乗合バス営業キロ3582.5km、社員数1080人である。

■地域分社は羽田・横浜・湘南リムジンバス等の運行も分担

●馬車道駅前

横浜市の中心部に乗り入れる〈110〉系統。後方の横浜第二合同庁舎は1926(大正15)年に横浜生糸検査所として建てられたもの

 京浜急行バスには100%出資の地域分社として、羽田京急バス、横浜京急バス、湘南京急バスの3社がある。

 羽田京急バスは京浜急行バス羽田営業所の敷地内に開設された東京営業所を拠点とする。一般路線はJR蒲田駅・羽田空港発着系統を中心に営業しており、羽田空港の国内線・国際線ターミナルを結ぶ無料シャトルバスも担当。

●関東学院大学金沢文庫キャンパス

横浜京急バス能見台営業所は関東学院大学の特定輸送を担当。駅とキャンパスを結ぶシャトルバスやキャンパス間連絡バスを運行する

 また羽田空港リムジンバスの一部路線、宮古・舞鶴・徳島への高速バスも運行する。乗合バス免許キロ1619.9km、社員数247人である。

 横浜京急バスは横浜市の杉田・能見台営業所、横須賀市の追浜営業所を拠点とする。一般路線では自社路線として上大岡駅発着系統、受託路線として京急線京急富岡~追浜間の各駅発着系統、JR根岸線磯子・洋光台の両駅発着系統を営業し、横浜駅にも乗り入れている。

●桔梗山

桔梗山の住宅地を行く「京急ポニー号」。デマンドルートを持つこの路線は、夜行高速バスと同じカラーの小型バスによって運行される

 また羽田空港リムジンバスの一部路線、横浜駅発着の中距離高速バスも運行している。乗合バス免許キロ62.2km、社員数292人である。

 湘南京急バスは堀内営業所を拠点に横須賀京急バスとして創業し、鎌倉営業所が加わるとともに現在の社名になった。一般路線ではJR横須賀駅~観音崎間を中心とする自社路線、JR横須賀駅・衣笠駅・鎌倉駅・大船駅などに発着する受託路線を営業。

 また羽田空港リムジンバスの鎌倉駅・藤沢駅系統、新橋駅~JR逗子駅間の深夜急行バスも運行している。乗合バス免許キロ81.6km、社員数201人である。

■京急グループの貸切バスの要 東洋観光

横須賀営業所の三菱ふそうQRG-MS96VP。京急グループの貸切バスを一手に引き受けた東洋観光は2008(平成20)年以降、一般貸切車のボディカラーを京浜急行電鉄の貸切デザインに改めている

 京浜急行バスと地域分社の貸切車は、そのほとんどが契約輸送を担当。京急グループの一般貸切輸送を一手に引き受けるのは、東洋観光である。

 東洋観光は1953(昭和28)年に横須賀で創業。1955(昭和30)年に京急の関連会社となった。

 1990年代に入ると、貸切バスを取り巻く環境の変化から京浜急行電鉄は貸切バス事業を縮小。2008(平成20)年のグループ再編により、京急グループの貸切バス事業は東洋観光に集約された。現在は横須賀と横浜の2営業体制で、貸切バス・特定バスの営業を行っている。

横浜営業所で契約輸送を行ういすゞLDG-LV234Q2。“サーフカラー”と呼ばれる同車のデザインは、かつて東洋観光の一般貸切車がまとっていたもの。横浜営業所は契約輸送用車両の比率が高い

投稿 京浜急行電鉄沿線にグループ4社の路線を展開する京急バス自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。