2月の半ばから、花粉が飛び始め、花粉症に苦しむ人も増えてきたのではないだろうか。今年のスギ花粉の量は、昨年よりも多いと予測されている。筆者も花粉症で、今年は、まだ飛散量が少ないせいか、症状が昨年に比べるとまだあまりないが、すでに花粉症の内服薬を飲みはじめている。
新型コロナウイルスのオミクロン株は、1月に入ってから感染者も急増、現在猖獗を極めており、まん延防止等重点措置が延長され、人々は感染対策に非常に気を遣っている。
花粉症で、普段から鼻水が出たり、咳が出たりする人は、肩身の狭い思いをしているかもしれない。また、病院受診もしにくく、不安のある人もいるだろう。今回は、コロナ蔓延下における花粉症対策について、花粉症当事者でもある医師の視点から書いていきたい。
今年の花粉のピーク、飛散量は?
日本気象協会によると、今年は、地域にもよるが、昨シーズンよりも花粉の飛散量は多くなると予測されている。東京や神奈川では、例年と比較すると多くはないが、前シーズンよりもやや増える見込みとのことだ。
ただ、寒波の影響で、飛散開始の遅れている地域もあるとのことで、ピークは東京で3月中旬〜下旬になると予想されている。福岡など西日本では、すでに大量の飛散がはじまっており、重い症状が出ている人もいるかもしれないが、東京など関東では、まだあまり症状がない人もいるだろう。
早期治療が望ましい花粉症
花粉症はもともと、症状がはじまる1〜2週間ほどまえから治療を開始しておくと、シーズン中の症状をやわらげることができ、より快適に過ごせると考えられている。早期治療は、新型コロナウイルス流行下の今年は、感染対策の面でも、とりわけ重要だ。
鼻水や咳、倦怠感、においがわからないなど、花粉症と新型コロナウイルスのオミクロン株の特徴は、非常に多くの点でオーバーラップしている。一般の方だけではなく、医師でも、症状だけで両者を見分けるのは難しい。そういった状況下で、日本耳鼻科学会は、YouTubeを作成し、「早めの治療を」と、呼びかける。
日本耳鼻科学会によると、くしゃみは咳よりも、飛沫の量が、10倍以上と格段に多く、感染している場合、くしゃみによる飛沫で、新型コロナウイルス感染を拡大させてしまうことがあり得る。また、花粉症の人は、目や鼻のかゆみなどで粘膜に触れる機会も増え、感染するリスク、感染させるリスクは高まる。
新型コロナウイルスと花粉症を見分けるのが難しいだけではなく、新型コロナウイルス感染が症状であっても、花粉症の症状により、無自覚のうちに感染を拡大させてしまう恐れがある。
受診のタイミングは?
耳鼻科学会は「早めの受診」を呼びかけているが、まだ花粉の飛散量は少なく、症状が出る前の人なら、かかりつけの耳鼻科に早めに相談してみるといいだろう。
また、忙しいなどの理由で病院に行けず、症状は軽めで、毎年市販薬で治療しているような人は、市販薬を、症状が出る前から、早めに飲み始め、できるだけ症状を抑えることをお勧めする。
毎年症状が重く、耳鼻科で、複数の薬剤を使わないと症状のコントロールが困難な人は、現時点での症状が軽くても、特に早めに耳鼻科に相談した方がいいだろう。
発熱したら?自宅で抗原検査すべき?
花粉症をこじらせると、副鼻腔炎を合併することがある。副鼻腔炎は、発熱や頬・額のあたりなどの痛み、後鼻漏などの症状が特徴的で、ひどくなると頭蓋内まで炎症が波及してしまうことがあり、早めの治療が必要だ。
現在は、新型コロナウイルスの流行もあり、発熱した場合、やはり見分けるのは簡単ではない。発熱した場合、すぐにかかりつけの耳鼻科を受診するのは、新型コロナウイルスを念頭に置くと望ましくなく、自治体の電話相談窓口に相談の上で、発熱外来をやっている病院でPCR検査をすることになるだろう。
ただ、自治体によっては、受診が困難で、自主療養をしなければならない場合もある。依然として新規感染者も高止まりし、検査に時間を要する自治体も多く、自治体の中には、リスクの低い人に対して、自宅で抗原検査をして、自己診断し、自主療養を勧めるところもある。
例えば神奈川県は、3歳以上65歳未満に対しては、抗原検査キットでセルフチェックをし、感染者は10日間の、濃厚接触者は7日間の自主療養をする仕組みとなっている。そのような自治体では、自宅に、承認済みの抗原検査キットがあったり、薬局で購入可能であれば、セルフチェックするのがいいだろう。
ただし、医療用として承認を受けているキットを使用するのが望ましく(一覧は厚生労働省)、「研究用」と記載をされているものは、信頼性が高いといえないものもある(現状では、承認済みのキットは非常に品薄で薬局でも入荷待ちになっていることが多い)。
自主療養中も、できるだけ花粉症をこじらせないように、花粉症の薬は内服を続けることが必要だ。副鼻腔炎を疑うような、ひどい頭痛や、頬・額などの腫れがあったり、熱が非常に高く何日も下がらないなどの上症状があれば(新型コロナウイルス感染症の増悪と見分けがつかない症状も多い)、自治体の新型コロナ関連の相談窓口や、近隣の耳鼻科などに電話相談をお勧めする。