RX Japan株式会社が主催する「スマートエネルギーWeek春2022」が3月16日~18日の3日間、東京ビッグサイトで開催された。
同展示会のFC EXPO(水素・燃料電池展)ではホンダが次期クラリティFUEL CELLに搭載される新FCパワーユニット(プロトタイプ)を初公開したほか、東京R&Dが開発した燃料電池バスなどが出展された。
商用車の分野で本命視される燃料電池。その最新動向はいかに!?
文・写真/フルロード編集部
■新開発のFCパワーユニットを出品したホンダ
ホンダは2020年からいすゞと共同研究を行なっている燃料電池大型トラックの事業を映像で展示したほか、FC可搬型電源コンセプトや、ゼネラルモーター(GM)と共同開発したFCパワーユニットのプロトタイプを初公開した。
ホンダのFCVといえば、クラリティFUEL CELLが知られているが、同車は2021年9月をもって生産中止。いっぽういすゞとの同車の燃料電池を搭載した燃料電池大型トラックの共同研究や、GMとの燃料電池の共同開発は継続されている。
発表された新FCパワーユニットは、燃料電池スタック、エアコンプレッサー、FC昇圧コンバータなどをコンパクトに一体化したもので、耐久性の向上と、価格を下げることを主眼に開発されている。
耐久性を高める目的は次期クラリティFCだけではなく、多用途展開も視野に入れているため。今後、いすゞと研究を進める燃料電池大型トラックへの搭載も期待される。なお今回の新FCユニットは、クラリティFCが搭載した出力103kWに対し80kWとなっている。
またFC可搬型電源コンセプトは軽量な水素タンクとクラリティFCパワーユニットをパッケージ化した自立型電源供給ユニット。外部からの水素供給も可能だが、水素タンクのみの供給可能電力量は110kWh以上で、給電方法は直流・交流の双方に対応する。
■燃料電池関連部品のパッケージ化・販売を推進するトヨタ
燃料電池関連部品のモジュール化を進めるトヨタは、2021年に発売したFCモジュールや開発中の水素貯蔵モジュール(コンセプト)などを出品した。
トヨタのモジュール化の狙いは、難しい燃料電池のシステム構築や安全性の担保は自社が行なうことで、専門ではない大型トラックや鉄道、船などの大型モビリティや定置式発電機といった分野でも燃料電池を活用しやすくすることにある。
FCモジュールは燃料電池スタック、FC昇圧コンバータ、エアコンプレッサー、水素ポンプ、冷却装置用のウォーターポンプなどを箱型にパッケージ化したもので、燃料電池は新型MIRAIに搭載される第2世代のセルスタックを搭載する。
形状タイプは小型(小型は豊田自動織機製)、縦型タイプⅠ、横型タイプⅡがあり、小型が定格出力8kW、タイプⅠ・Ⅱがそれぞれ60kW/80kWの2種が展開されている。
いっぽう初公開された水素貯蔵モジュール(コンセプト)は仕様圧力70MPaの水素タンク4本と水素残量や使用量を集中管理できるシステムモニター(通信機能も備わる)や、水素漏れを検知し瞬時に供給を停止する自律安全機構を箱型にパッケージ化したもの。
ラインナップは、タンク内容量101リットル(水素搭載量4kg)のTC4、208リットル(8.4kg)のTC8、260リットル(10.4kg)のTC10、900リットル(36kg)のTC36などが展開される予定だ。
■東京R&Dが開発した燃料電池バス
燃料電池小型トラック、電気バス、電気トラックなどの開発を手掛けてきた東京R&D(アールアンドデー)は日野自動車の小型バスを改造ベースにした燃料電池小型バスを出展した。
今回の燃料電池小型バスは新潟県からの委託事業で開発をスタート。新潟市を運行するコミュニティバスとして新潟交通に納車され、もうまもなく本運行も始まる予定だ。
同車は日野ポンチョ・ロング1ドアがベースで、一列分の座席を犠牲(乗車定員26名)にし、車両後部に公称使用圧力70MPaの圧縮水素タンク3本、最高出力45kWのFCスタック、容量35kWhの駆動用バッテリーなどが搭載されている。
水素タンクの総容量は153リッターで、フル充填の航続距離は110kmほどになるようだ。
また駆動用モーターは、最高出力200kW/最大トルク1200Nmのものをリアアクスルの後方に搭載する。トランスミッションなどの減速機は介さず後輪を駆動させるダイレクトドライブ方式だが、平野部に位置する新潟市での運用ではモーター直結でも問題ないという。
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