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三菱のEV攻勢! 今秋に販売が再開されるミニキャブミーブや今春に発売予定の新型軽EVの動向は?

 2022年3月16日から開催された「第1回脱酸素経営EXPO」において、三菱自動車は、今秋から販売が再開される軽商用BEVのミニキャブミーブを出展した。このミニキャブミーブはどのようなモデルなのか? 

 そして日産と三菱の共同開発による三菱の新型軽EVや日産の軽EV・サクラはどんなモデルになるのか? 

 オートサロンで発表された三菱K-EVコンセプトXスタイルを踏まえて、発売時期、予想価格を含め、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎
写真/三菱自動車、日産、ベストカーweb編集部
トビラ写真は東京オートサロン2022に出展されたミニキャブミーブをベースとしたコンセプトカー「MiniCAB MiEV B-Leisure Style」

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■現在判明している情報は?

 今は国内で新車として売られるクルマの38%前後を軽自動車が占める。2022年2月に限ると、軽自動車の販売比率は40%に達した。

 この流れを受けて、日産と三菱は、合弁会社のNMKVによって軽自動車サイズのEV(軽自動車)を開発している。発売されるのは2022年4月以降だ。

 この点を日産の販売店に尋ねると「2022年4月以降に発売されることは確かだが、詳細はメーカーから聞いていないので分からない」と返答された。

 三菱の販売店では、ある程度の日程を把握していた。「2022年4月になると、新型軽EVの価格が明らかにされる。この後、5月には予約受注を開始する。正式な発表と発売は6月になる見込みだ。試乗車が販売店に配車されるのも6月以降だろう。

 外観は、すでに東京オートサロンにて披露されているコンセプトカー(K-EVコンセプトXスタイル)に準じたSUV風のデザインになる。

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「K-EVコンセプト Xスタイル」。軽自動車のeKクロスがベースだ

 日産と三菱の軽EVは、基本部分を共通化している。ただしフロントマスクは、三菱ブランドがダイナミックシールドの形状に仕上げる。これはデイズとeKクロス、ルークスとeKクロススペースの違いに準じる。

 ボディサイズは日産ブランドが明らかにされ、全長:3395mm、全幅:1475mm、全高:1655mmだ。全長と全幅は、軽自動車だからほかの車種と共通で、全高もデイズやeKクロスと同程度になる。

 ただし床下に駆動用リチウムイオン電池を搭載するから、既存の軽自動車に比べると、床が高くなる可能性がある。床の高いEVに多く見られる特徴として、腰が少し落ち込み、膝の持ち上がる着座姿勢になりやすい。

 軽EVの駆動用電池は、総電力量が20kWhとされる。アウトランダーPHEVの総電力量も20kWhだから、基本部分を共通化している可能性もある。アウトランダーPHEVのリチウムイオン電池は新開発され、20kWhの容量を持たせながら、サイズを小さく抑えた。冷却システムの効率も高めたから、軽EVにも適した機能を備える。

■バッテリー容量20kWhから見えること

 ちなみにほかのEVの総電力量は、リーフが40kWhと62kWh、ホンダeは35.5kWhだから、新しい軽EVの20kWhは小さな部類に属する。
 
 軽EVが1回の充電で走行できる距離は、WLTCモードで200km前後だろう。リーフの40kWh仕様の航続可能距離は322kmだから、20kWhで走る距離は161kmだが、軽自動車サイズのEVはボディも軽い。従って航続可能距離も200km前後まで延びる。

 ホンダeの総電力量は35.5kWhで、航続可能距離は259~283kmだ。20kWhで走行可能な距離は145~158kmだが、同様に軽EVの車両重量が軽いことを考えると、200kmが航続可能距離の基準になる。

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こちらは2019年の東京モーターショーに出展された日産の軽EVコンセプトカー「IMk」。電池容量的には航続距離160kmほどになりそうだが、軽量な分もっと走れるかもしれない

 そして日産では、補助金を差し引いたユーザーの実質購入価格が200万円以上としている。ただし補助金の交付額は、時期によって変化するので注意したい。実質購入価格が200万円以上とすれば、補助金の動向に応じて、価格も変わることになる。

 補助金を差し引いた実質購入価格が200万円以上なら、装備が充実した売れ筋、あるいは買い得グレードの価格は220万~230万円だ。デイズやeKクロスの売れ筋価格帯は、140万~170万円だから、軽EVは60万~80万円は高い。

 軽EVの価格をハイブリッド車に置き換えると、アクア、ノート、フィットe:HEVなど、コンパクトカーの売れ筋グレードと同程度だ。つまり軽EVの価格は、ノーマルエンジンを搭載する既存の軽自動車に比べると60万円以上も高いが、コンパクトカーのハイブリッドと比べれば吊り合う。

■購入価格200万円は「アリ」か

 リーフの買い得グレードとされるX・Vセレクションは406万3400円で、補助金概算額の約39万円を差し引くと約367万円だ。この価格は、インプレッサスポーツやマツダ3といったミドルサイズハッチバックの買い得グレードに比べると、約110万円の上乗せになる。比率に換算すると1.4倍だ。

 軽EVの買い得グレードの価格が補助金を差し引いて前述の230万円とすれば、同等の装備を備えたガソリンエンジン車の170万円に比べると60万円高い。比率に換算するとこれも1.4倍だ。

 つまりEVの価格は、軽自動車、ミドルサイズハッチバックともに、ノーマルエンジン車に比べて1.4倍の価格設定になる。

 軽EVの走行コストはどの程度だろうか。東京電力の従量電灯Bで計算すると、1kWhが約20円だ。そして軽EVが20kWhのリチウムイオン電池を満充電にして200kmを走るとすれば、1kWh当たりの走行距離は10kmになる。価格に換算すれば、20円で10kmを走るから、1km当たり2円だ。

 一方、デイズで売れ筋になるハイウェイスターXプロパイロットエディションの価格は166万6500円だ。WLTCモード燃費は21.2km/Lだから、レギュラーガソリン価格が160円/Lとすれば(現状の170円/Lは高すぎる)、1km当たりの燃料代は7.5円だ。軽EVが2円とすれば、1km当たり5.5円の差額になる。

 軽EVの実質価格が230万円、デイズハイウェイスターXプロパイロットエディションが166万6500円であれば、差額は約63万円だ。走行コストの差額で63万円の実質価格差を取り戻せるのは、11~12万kmを走った頃になる。

 軽自動車にとって、11万~12万kmの走行距離は長い。しかし仕事で街中を頻繁に走るユーザーなら、経済的なメリットが生じる余地もある。

■今秋に販売が再開される三菱ミニキャブミーブ

2022年秋に販売が再開される三菱ミニキャブミーブ。価格は2シーターが243万1000円~、4シーターが245万3000円(いずれも16.0kWh、車両本体価格)

 そして現在販売を中断している国内唯一のミニキャブミーブは今秋にも販売が再開されるという。ミニキャブミーブは日本郵便に配送用車両として導入され、今後DeNAと協業するなど、軽商用EVの本格的な普及を目指している。

 搭載されるモーターは41ps/20.0kgm、総電力量は16.0kWh、1充電あたりの航続距離は150km(JC08モード)。

 一見すると1充電あたりの走行距離が少ないように思えるが、三菱自動車が実施した軽キャブバンの全国ドライバーアンケート調査によると、「1日の総走行距離は77%が65km以下」という結果が出ているので、150kmという総走行距離は充分といえるかもしれない。

■「EVはリセールバリューが低い」という課題

 電気自動車は加速が滑らかで、ノイズは小さい。走りの上質感を考慮すれば、仮に実質価格差を燃料代の差額で取り戻せなくても、選ぶメリットが生じる。深夜の街中を走る時なども、ノイズの小さな電気自動車はメリットを発揮する。さまざまな点で、質の高い街中の移動手段になり得るわけだ。

 軽EVの損得勘定で問題になるのは、むしろリセールバリュー、即ち数年後に売却する時の価値だろう。先代(初代)リーフなどのEVは、リチウムイオン電池の劣化が激しく、航続可能距離も短くなった。そのために中古車価格と売却時の金額が大幅に下がった経緯がある。

 例えば2016年式の先代リーフは、中古車価格の中心が80万~100万円に留まる。補助金の交付を受けられたものの、新車時の売れ筋価格帯が320万~360万円だったことを考えると、6年落ちが80万~100万円になるのは相当に安い。

 このように電気自動車は、リセールバリューが低い欠点があるため、残価設定ローンや最近のサブスクリプションなどのリースを利用すると安心だ。

 リセールバリューの低い車種は、残価設定ローンの返済額やリース料金が高額になる。

 したがって電気自動車がリセールバリューの高い車種に比べて不利になることに変わりはないが、定められた金額以上に負担が増える心配はない。要は「売却時に買い叩かれるのではないか」という不安からは開放
される。

 以上のように軽EVの損得勘定は、基本的には、リーフのような小型/普通車サイズのEVに準じる。

 それでも軽EVの補助金を含めた実質価格が220万~230万円で、アクアやノートなどのハイブリッド車と同等になるのは魅力だ。

 最近はコンパクトなハイブリッドの売れ行きが好調だが、軽自動車にダウンサイジングすると、同じ予算で本格的な電気自動車にグレードアップできる。

■軽EVは公共交通機関が未発達な地方都市と親和性が高い

 軽自動車は、公共の交通機関が未発達な地域を中心に普及している。長野県、鳥取県、佐賀県などでは、10世帯に10台以上の軽自動車が所有され、東京都は10世帯に約1台と少ない。

 軽自動車の普及率は、地域によって10倍以上の差があり、普及している地域では給油所(ガソリンスタンド)も少ない。自宅で充電できる軽EVは便利だ。価格が割高なことを除けば、軽EVと日本の使用環境は親和性が高い。

 以上の点を踏まえると、日産と三菱による軽EVは、着実に普及していく。それに伴ってコストダウンも進み、価格が割安になって、普及のスピードも加速する。

■「使用済み電池」の取り扱いが普及の鍵

 そのためにはリチウムイオン電池のリユースも大切だ。日産と住友商事の合弁会社になるフォーアールエナジーは、電気自動車に使われたリチウムイオン電池を回収し、セルをバラして性能劣化の少ないリユース電池に組み替えている。性能の劣ったセルは、電気自動車ではなく、蓄電池などに再利用する(それでも鉛電池に比べると性能は大幅に高い)。

 リチウムイオン電池は、製造時にも二酸化炭素を排出する。軽EVが大量に販売されて電池交換が必要になった時は、リユース品を有効活用すると、コストと環境対応の両面から合理的だ。このようなシステムを構築した上で、軽EVは本当のメリットを発揮する。

 そして軽自動車には、ルークスやeKクロススペースのようなスーパーハイトワゴン、ハスラーやタフトのようなSUVなど、いろいろなタイプが用意されている。軽EVも、普及に伴って多様化して、さらに定着していくことになる。


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