日本野球機構(NPB)は24日、日本ハムの新庄剛志監督の登録名を、新庄剛志から「BIGBOSS」(ビッグボス)に変更したと発表した。新庄監督は、就任会見の時から「ビッグボスと呼んで欲しい」と発信しており、野球ファンの間でも「ビッグボス=新庄剛志」との認識が広まっていた。
開幕前日の登録変更でさらに注目を集めたが、こうしたセルフブランディングを有識者はどう見ているのか。元LINE上級執行役員、ZOZO執行役員コミュニケーションデザイン室長で、オンラインサロン「田端大学」を主宰する田端信太郎氏に話を聞いた。田端氏は、現在は複数のベンチャー企業でPRやマーケティングの顧問なども行っている。
新庄監督の登録名の変更は、非常に優れた手法だという。
ご自身で考えられたのであれば、素晴らしいセンスの持ち主ですよね。たとえばプロレスの世界では、リングネームを付けることによって、レスラーは別人格を獲得するわけです。登録名をすでに知名度の高い新庄剛志ではなく「ビッグボス」とすることで、監督であると同時に応援団長であり、アンバサダーであると世の中に伝えることができる。セルフブランディングとして極めて秀逸だと思います。
名前を変えることで、周囲の見る目も変わってくるという。
イチロー選手が鈴木一朗を名乗っていた時代に、どこの監督だったか、自軍のピッチャーに対して「イチローと思うな、鈴木と思え」とアドバイスしたそうです。イチローだと思うとそれだけで萎縮して飲まれてしまい、相手の土俵に上がってしまう。でも、鈴木選手と思えば、精神的にフラットに対峙できる。今回の話も、イチロー選手のそんな逸話を思い起こさせますね。
ネット上には批判的な声も散見されるが、それも織り込み済みかもしれない。
奇をてらっているとか目立ちたがりだと言う人もいるかもしれない。でも、野球というのはエンタメであり興行である以上、夢を売る仕事とも言える。ファンを沸かせて注目を集めることも、大事な役割ですよね。人気商売からは逃げられないわけですから。
節目節目で名前を変えるというのは、歴史的にも実は珍しいことではない。
たとえば歌舞伎役者や落語家が先代を襲名するように、名前を変えることによって自分を変えるというやり方は、実は古くからあるとてもオーソドックスで王道の手段なんです。これからは新庄ではなく、「ビッグボス」としての役割をまっとうする覚悟の表れでもあると思います。
呼び方や名前を変えることは、固定概念を変えることにもつながるのかもしれない。
名前を付けるとは、新たな概念を生み出すということでもあります。たとえば音楽の世界では、BTSは自身のファンのことを「アーミー」と呼び、レディー・ガガもファンを「リトルモンスター」と名付けています。単にファンと呼ぶのではなく、特別な名前を付けてラベリングすることで、より関係性が深まり強固なものとなるのです。
確かに、ビッグボスという響きからは、何かやってくれそうな期待感を感じさせる。球場アナウンスでも、今後は「監督はビッグボス」とコールされるという。
「ビッグボス」と名付けることで、自身をキャラ付けができるわけです。いわば、ビッグボスという着ぐるみを着た状態になれる。周囲の見る目が変わるわけです。でも、生身の人間であれば調子の悪い日だってあるでしょうし、シーズンが始まれば連敗を喫することもあるかもしれない。それでも常にビッグボスとして見られるわけですから、決して楽ではないと思います。
パフォーマンス上手に見えるが、根は真面目な性格ではないかと田端氏は見ている。
新庄監督は派手なイメージがありますが、監督としてやっていることは、実はとてもオーソドックスなのでは。腹筋もかなり割れていますし、ああ見えてとてもストイックで真面目な人なんだろうと思います。
日本ハムは25日、ソフトバンクとの開幕戦は1―4で惜しくも逆転負け。黒星スタートとなったものの、ドラフト8位の新人、北山亘基投手を開幕投手に抜擢したり、翌日の予告先発投手を終盤に投入したりと大胆な采配で早くも観客の度肝を抜いた。
ビッグボスが球界をどう盛り上げてくれるのか、期待したい。