2022年度末になり、洋画も公開ラッシュが続いている。今回ご紹介するのは、あのマイケル・ベイ監督の最新作『アンビュランス』だ! 期待に通りのカーアクション豊富な作品に仕上がっている。
しかも本国アメリカより早い2022年3月25日、つまり本日公開となっている。この話題の新作をご紹介しよう!
文/渡辺麻紀、写真/ユニバーサル・ピクチャーズ
■逃走車両はアンビュランス=救急車!
『トランスフォーマー』(07)やストリーミングの『6アンダーグラウンド』(19)等、このコーナーでもご紹介してきたマイケル・ベイ。
ハリウッド屈指のカークション監督と言ってもいい彼の5年ぶりになる劇場用新作が『アンビュランス』だ。もちろんというか、やっぱりというか、これもまたカーアクション映画だった。
とはいっても、いつものように高級車を走らせ、破壊しまくるのではなく、タイトル通り主人公のひとつはロサンゼルスを走るアンビュランス=救急車。ドラマはこの狭いアンビュランスのなかで展開する。それもわずか半日ほどの出来事として。
その車に乗り込むのは白人と黒人の兄弟。白人の兄ダニー(ジェイク・ギレンホール)は犯罪のプロ、養子の黒人の弟ウィル(ヤーヤ・アブドゥル=マティーニ二世)は退役軍人。妻の手術代の工面を兄に頼ったら、銀行強盗をやることになってしまい、それは成功するはずだった。
ところが、大金を手にしたものの、不測の事態が次々と発生。仲間は次々と倒れ、退路を塞がれてしまったふたりは、救急車を奪って逃走するハメに陥る。
その救急車に乗っていたのは、銀行で弟のウィルが兄を助けるために思わず撃ってしまった重傷の警官と、彼を助けようとしていた女性の救命士。
優しい上に犯罪者でもなく、警官殺しの殺人犯にも絶対になりたくない弟は瀕死の警官を助けようと救命士に協力するが、大金を手に入れ、さっさと高飛びしたい兄は、警官の命などお構いなしに車を走らせようとする。
これまでのベイのカーアクションは、猛スピードで走る車、ぶつかり合う車、空を舞う車が印象的だったが、本作の場合の視点はその救急車のなか。限られた空間、限られた時間をフルに使い、警官の命を巡る兄弟の駆け引きをサスペンスフルに描いている。
■いつものマイケル・ベイとは別の一面も
もちろん、ベイなのでアンビュランスを追いかけるパトカーの大チェイスがあり、実際のロスの大きな交差点を封鎖して撮影したという激しい銃撃戦もある。
救急車がフリーウェイを逆走したり、『ターミネーター2』等で知られるロサンゼルス・リバーの河川敷を走る車を、空から2機のヘリが追いかけたり、次々とパトカーが増殖してチェイスを繰り広げたりと、アクションの見どころも多い。
実際のロケーションをフル活用し、終始動き回るカメラを使って、さすがベイらしいハンパない臨場感を演出しているのだが、やはり印象に残るのはアンビュランス内で展開する兄弟のスリリングな駆け引きとやり取りのほう。こういうベイ映画も珍しいかもしれない。
というのも、実はこの作品、デンマーク映画、劇場未公開の『25ミニッツ』(05)の脚本を原案とした作品。母親の手術代欲しさに銀行強盗をしでかした実の兄弟が救急車をジャック。
だが、車には心臓発作の患者と救命士が乗っていたというストーリーで、骨子の部分は重なっている。原題は同じく「アンビュランス」なのだが、邦題は心臓発作の患者を救うタイムリミットになっている。
デンマーク製だからなのかアクションは最低限で、兄弟が患者を救うかどうかでずーっとケンカしているという印象が強くハラハラというよりイライラが募り、後味も驚くほど悪い。ハリウッドがもっと元気の出るような映画に替えたくなる気分もわかる。
■クルマ好きマイケル・ベイの趣味がチラホラ
ちなみに、本作ではほとんど高級車は登場しないが、車の窃盗もやっているダニーの大きな倉庫にはコルベットを始めとした美しい車がズラリと並んでいる。また、もうひとつの主役でもあるアンビュランスはファルク社の最高級救急車“ヒーロー”をチョイス。
外装はベイのセンスを取り入れ、オリジナルのペイントを施しているのだが、ファルク社はこのペイントを気に入り実際に採用することになったという。さしずめ“アンビュランスのアンビュランス・モデル”ということになるのだろうか。
また、彼らを追うLAPDのモービル・コマンダー・ユニット(MCU)の使う車は、ピックアップトラックで知られるラム社の新型TRXトラック。これをカスタマイズして使用している。まだ未発売のTRXを使うところがベイらしい。
そして、これもベイらしく、カラフルなローライダーも登場している。メキシコ人の車窃盗団の車で、メキシコのカルチャーを連想させるカラフルなペイントが印象的だ。冒頭のダニーの高級車とは対照的で面白い。
●解説●
ガンを患った妻のために必要な手術代は23万ドル。しかし、国のために戦ったにもかかわらず保険や保障は何もなく一銭も出してもらえなかった。絶望する退役軍人のウィルは犯罪者の兄ダニーを久しぶりに訪れ、金の工面を頼む。
ダニーがもちかけたのは銀行強盗。320万ドルもの大金が手に入るという。計画は上手く行くはずだった……。
本作のアイデアが浮上したのは5年前。脚本を製作総指揮を務めているクリス・フェダク(TVシリーズ『CHUCK/チャック』)がデンマーク人のマネージャーに『25ミニッツ』を紹介され、これをハリウッド的なカーアクション映画へと生まれ変わらせたと言う。
彼が目指したのはダイナミックなアクションを含む作品。そうなればマイケル・ベイの名前が浮上するのは当然と言えば当然だろう。
ベイがこだわったロス市街地でのロケのほとんどが可能になったのは、ロスを知り尽くし、フィルムLA(ロサンゼルスの公式フィルムオフィス)と密接な関係性をもつ優秀なロケーションマネージャーがついていたからだという。
また、デンマーク版では実の兄弟だが、本作では養子縁組による白人と黒人の兄弟。ダニーの説得にあたるのは同性婚をしているFBI捜査官と、いまどきの多様性を盛り込んでいるのも特徴的。脇にもドラマも用意しているあたり、やっぱりこれまでのベイとは違う!?
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『アンビュランス』
2022年3月25日全国公開
配給:東宝東和
(C) 2022 Universal Studios. All Rights Reserved.
投稿 マイケル・ベイがまたやってくれた! 救急車激走のド迫力アクション映画『アンビュランス』本日公開!! は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。