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ミニバン王者アルファードの地位揺るがず!! ノア・ヴォクシー販売の勢いは維持可能か

 2021年に最も売れたミニバンはアルファードだ。9万5049台という数字は、次点のヴォクシーに約2万5000台の差をつけ、前年比104.7%という圧倒的なものだった。(※台数は『一般社団法人日本自動車販売協会連合会 乗用車ブランド通称名別順位』データより。ヴォクシーは7万0085台、ノアは4万4211台)

 ミニバンのトップをアルファードが独走し続けるなかで、2022年1月、新型ノア・ヴォクシーが登場した。先行受注から発表直後までで、両車合わせて約3万台の受注、2月中旬頃には受注が7万台近くになったという。

 アルファードをあっという間に超えていきそうなノア・ヴォクシーの勢いだが、新型ノア・ヴォクシーの登場でアルファード・ヴェルファイアの立場は変わるのだろうか。それぞれの特長を踏まえながら、今後の動きを考えていく。

文/佐々木亘、写真/TOYOTA

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約8年待ったノア・ヴォクシーユーザー! 販売好調の裏には高い話題性がある

2022年1月登場の新型ノア/ヴォクシー。両車の売れ行きはノアが4割、ヴォクシーが6割を占め、想定よりも注文量が多いヴォクシーの納期が長期化している

 先代にあたる3代目のノア・ヴォクシーは2014年1月20日に登場した。新型モデルが登場したのは2022年1月13日、丸8年に近い期間、ノア・ヴォクシーは一部改良とマイナーチェンジでしのいできたことになる。ファンにとっては、待望のモデルチェンジだったことはいうまでもない。

 待たされれば待たされるほど、期待が高まり、話題性も高くなる。新型ノア・ヴォクシーに関する情報は大きく取り上げられ、報道に対する反応の大きさが、そのまま受注に反映しているようだ。

 しかし、こうしたフィーバータイムは、長く続くものではない。現在は、ノア・ヴォクシーに注文の多くが集中している状況だが、これもあと半年以内には落ち着きをみせると思う。

 また、アルファード・ヴェルファイアは現行型が2015年に登場しており、2023年の1月で登場から丸8年を迎える。こちらもそろそろモデルチェンジという噂もあり、ノア・ヴォクシーフィーバーのあとは、新型アルファードがミニバンの話題の中心になる日も近いのではないだろうか。

販売チャネル統合で隠れファンが顕在化? 選びやすい価格帯が購買意欲に火をつける

 元々は、ノアがカローラ店、ヴォクシーはネッツ店の専売車種であった。若年層からファミリー層(30代)がメインターゲットであり、その後、中高年層にもミドルサイズミニバンを提案しようと、トヨペット店とトヨタ店にエスクァイア(現在は廃止)が設定される。

 専売時から、トヨタ4チャネルそれぞれで、ノア・ヴォクシーサイズのミニバンに対しての需要があった。そこへ全チャネル全車取り扱いがスタートし、新型投入後は、従来のノア・ヴォクシーファン以外からの支持も高まっていると聞く。

 実際に、ネッツ・カローラ店では、圧倒的に先代からの乗り換えが多いが、トヨペット・トヨタ店では、エスクァイアからの乗り換えよりも、プリウスやプリウスα、エスティマや先代ハリアーなどからの移行が目立つという。

 購入層もファミリー層がメインだが、中高年層の注文も一定数あるようだ。全チャネル扱いで新型車を発表したことにより、想定している販売ターゲット層よりも、広くリーチしていることが分かる。

 アルファードの大ヒットでも感じたが、トヨタは隠れていたミニバンニーズを掘り起こすのがとてもうまい。

長所・短所はノア・ヴォクシーであること。やっぱりアルファードも欲しくなる?

新型ノア/ヴォクシーのパワーユニットは直4、1.8Lハイブリッドと2Lガソリンエンジンで、ハイブリッドは進化型第5世代を初搭載。ノア/ヴォクシーともに売れ筋グレードはハイブリッドのS-Z

 実際にノアのガソリン・ハイブリッド両モデルに乗ってみると、先代からの大きな進化を感じる。着座位置はハイトミニバン独特なものがあるが、シャシーやボディには、しっかりとした剛性を感じ、ミニバン特有の「ゆるっと」「フワッと」感は非常に少ない。

 2.0Lガソリンモデルに関しては、もう少し「音」の面で成長が欲しかったと個人的には感じる。3000回転前後で大きめのエンジン音が車内に入り込み、アクセルを踏み込んだ際に少々安っぽさが顔を出すが、価格帯を考えれば及第点だろう。

 対して1.8Lの新世代ハイブリッドは見事の一言。必要なパワーは充分に発揮され、動きもスムーズだ。ハイブリットだけで比べれば、アルファードのような車格が上のクルマとも、しっかりと勝負できる。

 新型ノア・ヴォクシーに関しては、乗れば乗るほど良さがわかる。いっぽうで、2列目シートに対する不満が多く出てくるのもまた事実。これだけの広さと機能性を備えたなら、ぜひオットマンくらいは欲しいなと感じてしまうのだが、標準装備はされていない。

 ノア・ヴォクシーにオットマンを備えるためには、快適利便パッケージ(約15万円)をオプションで追加する必要がある。それも上級グレードのZとS-Zでのみ装着可能だ。アルファードならベースグレードのXでも標準装備されるものだけに、大きな差を感じる。

 金額の面で見ても、ノアのハイブリッドS-Z(367万円)に、快適利便パッケージなどのオプションをつけていくと、アルファードのハイブリッド特別仕様車S TYPE GOLD(449万5000円)にも手が届きそうになってくるのだ。

 筆者もノアで本気の見積りを作ってみたが、これだったらアルファードを買ったほうが良いかもと思ってしまった。やはり絶対的な「質」の部分では、アルファードがノア・ヴォクシーをはるかにしのいでいることが分かってくる。

 販売現場で話を聞くと、ノア・ヴォクシーがアルファード目当てのユーザーに買われていくことは少ないという。ただし、アルファードがノア・ヴォクシー目当てのユーザーを食うことはあるようだ。それでも、しっかりと両者の間に線は引かれている。

 リセールバリューはどちらも高く、2022年3月現在の販売店設定残価率は3年で6割程度と充分。買いやすさの面では、ノア・ヴォクシーがアルファードに追い付いた形になるが、それでもミニバン界のトップに君臨するアルファードの立場を、揺るがすまでには至らない。

 最新のノア・ヴォクシーに対して、デビューから7年が経過するアルファードが同列に立てるというのも驚異的だ。それだけ3代目アルファードの完成度が高いということにもなる。

 かなり良いところまで成長したがノア・ヴォクシーだが、王者としてのアルファードはまだまだ健在だ。ノアヴォクとアルヴェルは、互いに協力しながら相乗効果を発揮し、トヨタをミニバンのトップメーカーへ成長させていくのだろう。

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