日本有数の豪雪地として知られる、新潟県十日町市が今年6月と2024年6月に、2段階で水道料金の値上げをすることが分かった。新潟県の地元紙・新潟日報が17日、伝えた。
新潟日報によると、平均39%の値上げとなるという。4~5人家族の平均使用量に近い、22立方メートルを使った場合、1カ月あたりの料金は現在の3640円が22年6月に4344円、2024年6月には5060円に値上がりする。
約40%もの大幅値上げだが、こうした自治体は十日町市だけではない。水道料金を値上げする自治体は数年前から見られてきたが、昨年から特に、水道料金の値上げを発表した自治体が相次いでいる。
川口市や横浜市も昨年値上げ
首都圏の特例市以上を見るだけでも、複数ある。たとえば、埼玉県川口市は昨年1月から水道料金を平均25.01%値上げした。埼玉県熊谷市も昨年4月から約20%値上げしている。神奈川県横浜市も昨年7月から平均で12%値上げした。
首都圏以外に目を向けて見ても、岐阜県本巣市や新潟県加茂市など、昨年から今年にかけて水道料金を値上げした自治体は相当数に上る。さらに、愛媛県松山市や京都府八幡市などは値上げに向けた議論が市議会で継続して行われている。
法定耐用年数超える水道管は17.6%
各自治体が水道料金を値上げする理由はほぼ共通している。老朽化した水道管の更新・交換コストの増加と、人口減少による自治体の収入減少だ。
厚生労働省が発表している「最近の水道行政の動向について」の最新版によると、法定耐用年数を超えた全国の水道管の割合は、2018年までで17.6%に上る。その割合は、2011年から毎年約1%ずつ上がっているため、現在では20%を超えているとみられる。
冒頭の十日町市が最終的に値上げを決めた理由も同様で、高度成長期に整備された水道管や施設の更新コストが今後さらに増え、このままでは市の財政が立ち行かなくなることにある。
さらに、十日町市は1950年の10万4318人をピークに人口が減り続けており、「平成の大合併」による市町村合併があったにも関わらず今年時点では4万9991人にまで減少している。そのため、慢性的な財源不足に悩まされていた。東日本大震災の翌日、十日町市に近い地域を震源地に発生した「長野県北部地震」の際には、破損した水道管の補修などのために、一般から寄付を募った。
十日町市のような悩みは、全国の自治体の大多数が同じく抱えている。EY新日本と「(一社)水の安全保障戦略機構」の共同研究「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?」(2021年版)では、全国の水道料金の平均(20立方メートル使用時)は、2018年の3225円から、2043年には4642円になると予測している。
青森県の水道料金は神奈川県の2倍
水はほかの生活必需品と違い、替えが全く利かないものだ。トイレットペーパーは、生活必需品の一つであるものの、特売の時に買いだめしたり、より安い商品に乗り換えしたりと、自衛の手段は残されている。電気でさえ、契約する会社は選べる。しかし、水は料金が高いからと言って、市町村との契約を打ち切るというわけにはいかない。
ただ、住む場所は選べる。水道事業は、都が一括で運営している東京都以外、市町村が運営しており水道料金も市町村が決めている。実は、市町村によって水道料金に倍以上の差が出るケースがあるのだ。
ウォーターサーバー専門メディアの「ミズコム」の調査によると、都道府県の水道料金の平均(20立方メートル使用時)で最も安いのは神奈川県の2142円。反対に最も高いのは、青森県で平均4418円だった。青森県の水道料金の平均は、神奈川県の実に2倍だ。
市町村で比べると、差はさらに広がる。全国の市町村で水道料金が最も安かったのは、兵庫県赤穂市で853円。次いで、静岡県長泉町の1120円、静岡県小山町の1130円という順だった。一方、水道料金が全国の市町村で最も高ったのは経済破綻をして、今も財政再建団体である北海道夕張市で6841円だった。水道料金が高い市町村の、上から57番目までが5000円以上だ。
水道料金が高いことを理由に、今すぐの引っ越しは現実的ではないが、将来の水道料金の高騰を見据えて引っ越し先や移住先、ビジネスの進出先を探す時に、水道料金の安さを検討項目に加えても良いのではないだろうか。今、地方を中心に各市町村はUターンやIターンを呼び込むために力を入れあれこれアピールしているが、水道料金の安さをアピールすることが最も有効という時代が来るかもしれない。