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「1990年代のホンダは熱かった」と言うファンが非常に多い。

 1990年代のホンダにはスーパースポーツカーのNSXや、乗用ミニバンの礎を築いたオデッセイなど多くの名車が存在するが、そんな名車たちを代表する1台として挙げられるのが初代インテグラタイプRではないだろうか。

 1992年に登場したNSX-Rのエッセンスが取り入れられたインテグラタイプRは、市販車としては非常にハードな乗り味で尖っていたが、200万円台と比較的手に届きやすい価格で走り好きの若いファンを獲得することに成功した。

 今回は、いまだに根強いファンを持つ初代インテグラタイプRの実力と功績を振り返る。

文/片岡英明写真/ホンダ

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■歴代タイプR唯一の2ボディを設定

1995年から2001年まで販売された初代インテグラタイプR。軽量なボディとパンチのあるエンジンの組み合わせにより、サーキットによっては格上のスポーツカーに勝てるほどの性能を有していた

 ホンダが走りの楽しさにこだわる熱いハートを持つファンのために送り出した究極のロードバージョン、それが「タイプR」だ。

 F1やツーリングカーレースなどで培ってきたレーシングスピリットと最先端のテクノロジーを投入し、少量だけが生産された。

 その第1作が登場するのは1992年秋のことである。最初の作品はNSXの「タイプR」だ。

 レーシングカーを製作する時に用いた高度な技術を積極的に採用し、ライバルを圧倒するドライビングプレジャーが自慢だった。

 これ以降、ホンダは走りのフラッグシップとして量産車にも「タイプR」を設定している。第2弾となるタイプRは、1993年5月に登場したDC2型とDB8型インテグラをベースに1995年9月に誕生した。

 タイプRのなかで唯一ふたつのボディタイプを揃えているのが特徴のひとつだ。3ドアクーペ(DC2型)と4ドアハードトップ(DB8型)を用意している。

 タイプRはフロントにチンスポイラーを装着し、リアにも大型のスポイラーを標準装備した。軽量化を徹底したアルミホイールも専用品だ。専用のボディカラーとしてチャンピオンホワイトを用意している。

■至極のVTECエンジン

 心臓は1797ccのB18C型直列4気筒DOHCのVTECだ。が、「スペックR」と呼ばれ、ヘッドカバーは赤い結晶塗装とした。

 鈴鹿工場の製造ラインの一部に特殊な製造工程を構え、ラインからヘッド部分を下ろして手作業でインテーク系とエキゾースト系ポートを研磨するなど、スペシャルチューニングを施している。

 ポートは小さな段差までも滑らかに磨かれ、仕上がると再びラインに戻され、組み上げていった。また、ピストンやカムシャフトなどは専用品だ。インテーク&エキゾーストマニフォールドやECUなどにも手を入れている。バルブも新たに設計して追従性を高めた。

 最高出力はノーマルのSiRから20psアップの200ps/8000rpmだ。リッター当たりの出力は111psまで高められている。

 最大トルクは19.0kgm/6200rpmだが、最初に登場した「96スペックR」は高回転側に振ったレーシングエンジン的な性格だった。

 気持ちいいし、刺激的なのは7000回転から上の回転域である。トランスミッションは5速MTだ。高回転化に合わせ、2〜5速をローギアード化したクロスレシオとしている。

 ちなみにタコメーターはフルスケール1万回転で、指針は視認性の優れたイエローだ。レブリミットの8400回転まで気持ちよく回り、陶酔の世界へと誘う。

■インテリアも超スパルタン

 サスペンション形式は4輪ダブルウィッシュボーンの独立懸架のままだが、ハードに締め上げた。また、モノコックフレームやリアサスペンションの取り付け部なども補強している。

 だが、重量増加を嫌ってフロントガラスは板厚を減らし、リアワイパーも取り去っている。もちろん、エアコンやオーディオに加え、遮音材も取り去った。

 だが、走りに不可欠なパフォーマンスロッドやトルク感応式ヘリカルLSDは追加している。

 それだけではない。SRSエアバッグシステム非装着のタイプRはステアリングのギア比が一段とクイックな設定だ。ダイレクト感覚のハンドリングに心躍った。

初期型(96spec)のインテリア。レカロのSR-IIをベースにした専用セミバケットシートやモモ製のステアリング、チタン製のシフトノブなどドライビングプレジャーを高めるパーツが与えられていた

 インテリアもスパルタンムードにあふれている。エアバッグ非装着車はφ350mmの本革巻きステアリングを採用し、シフトレバーはチタンの削り出しを装着した。

 ホールド性とサポート性に優れたレカロ製のバケットタイプのシートをフロントに採用し、3ドアクーペはブラックのほか、レッドのシートも選べる。

 後期モデルではイエローのボディカラーにイエローのシート表皮も用意された。

■改良により全方位進化!

 インテグラのタイプRは初めてのFF車でのタイプRだったが、レーシングカーのようにエキサイティングだ。エンジンはビンビン回るし、フットワークも軽やかだった。1998年1月、タイプRは「98スペックR」に進化している。

 タイヤを20mmワイドにし16インチにインチアップ、アルミホイールも5穴タイプになる。また、ブレーキローターを大径化して強化した。ボディも補強し、サスペンションのセッティングも見直しを図っている。

 もうひとつ、大きく変わったのがECUの制御だ。一部のユーザーに扱いにくいと言われたため、ギア比も変更した。これらの変更によってパワーバンドが広がり、マイルドな性格になっている。

 この変更は賛否両論だった。尖ったところが薄まったが、それでもトータルで考えると操る楽しさはいささかも損なわれていなかったのである。というより、円熟味を増し、意のままに操る魅力が広がっていた。

 そして1999年12月には最後の商品改良を行なっている。登場したのは「00スペックR」だ。この時にキーレスエントリーやオーディオ、電動格納式ドアミラーなどの快適装備を加えた「タイプR・X」が誕生した。

 インテグラのタイプRは走りの質が驚くほど高いことに加え、価格はリーズナブルだ。だから幅広い層のファンを惹きつけている。

 タイプRのなかで最も多くの販売台数を記録し、今も慕うファンが少なくないのがインテグラのタイプRだ。レーシングカーにかぎりなく近い性格の「タイプR」は、自然吸気エンジンの素晴らしさと楽しさを教えてくれた。また、FFスポーツの新しい扉も開いている。

 インテグラの初代タイプRが21世紀のスポーツモデルに与えた影響は大きいと言えるだろう。

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投稿 1990年代中盤の若者たちに鮮烈な衝撃を与えた初代ホンダインテグラタイプR!! その実力と功績を振り返って考える自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。