AMDではRyzen Threadripper Pro 5000シリーズをOEM向けに発売を開始しましたが、その一部モデルのベンチマーク結果がPassmark上に出現しました。
Ryzen Threadripper Pro 5000シリーズ
AMD’s Ryzen Threadripper Pro 5995WX Tops CPU Benchmark | Tom’s Hardware (tomshardware.com)
AMDでは主にエンタープライズ用途のワークステーション向けをターゲットとしたRyzen Threadripper Proの最新シリーズである5000シリーズを2022年3月9日に発表しました。このRyzen Threadripper Pro 5000シリーズでは従来のRyzen Threadripper Pro 3000シリーズに対してアーキテクチャーをZen2からZen3アーキテクチャーに刷新し、IPCが大幅に向上しているとともに動作クロックに関しても4.3 GHzから4.5 GHzに向上するなど様々な改善が取り入れられています。
今回、このRyzen Threadripper Pro 5000シリーズ複数モデルのPassmarkベンチマーク結果が出現しました。
5995WXはCPU全体での性能はダントツ1位
今回Passmark上に出現したのは64コア128スレッドを搭載するRyzen Threadripper Pro 5995WX、24コア48スレッドの5965WX、16コア32スレッドの5955WX、12コア24スレッドの5945WXの4モデルになっています。一方で32コア64スレッドを搭載する5975WXのスコアは抜けています。
10万pt越えの最上位モデル:Ryzen Threadripper Pro 5995WX
Passmark上で64コア128スレッドの5995WXでは108,822ptを記録しており、Passmark上では初めてスコアが10万ptを超えるCPUとなっており断トツの記録を保持しています。また、従来モデルであるZen2世代のTR Pro 3995WXに対してはスコアが約28%ほど向上しています。
なお、同じZen3世代の64コア128スレッドのEPYC 7763に対しても23%ほどスコアが高くなっています。これは動作クロックが1 GHzと大きく異なっているためこのようなスコア差が出ているようです。
Ryzen Threadripper Pro 5955WX、5945WXなどもZen2より約25%~30%向上
Ryzen Threadripper Pro 5955WXや5945WXなどコア数の少ないモデルでもZen2世代の3955WXや3945WXと比較するとスコアは最低でも24%ほど向上しています。
なお、今回、24コア32スレッドを搭載するRyzen Threadripper Pro 5955WXは比較対象となるZen2世代の3955WXのスコアは掲載されておらず差は不明です。ただ、他のモデルと同じく最低でも20%以上の性能向上が図られているものと考えられます。
ProじゃないRyzen Threadripperは出ない可能性大。
Ryzen Threadripperでは3000シリーズまではProと無印の2つの種類があります。簡単に言うとProはエンタープライズ用途、無印はコンシューマー向けとなっており仕様面ではProはPCI Expressのレーン数が最大128レーンある一方で無印では72レーン、メモリーチャンネルも8チャンネルに対して4チャンネルと拡張性に大きな差があります。また、対応ソケットもProではsWRX8ソケットですが、無印ではsTRX4と呼ばれる別のソケットとなっています。このように無印では若干機能が削られているため、価格が抑えられたモデルとなっていますが、今回は価格が高いRyzen Threadripper Pro 5000シリーズのみの登場となっています。
これに対して『後から追加されるのでは?』とも考えられますがLinus Tech Tipsでは恐らくもう無印Threadripperは出ないのではと考察しています。
原因としてはProの方が高くAMDは利益を上げやすいからと言う分かりやすい理由もありますが、単純に買う人があまり居ないと言う理由も挙げられています。と言うのもコア数はRyzen 3000シリーズから16コア32スレッドと言うHEDT向けに近い構成になり始めた事やPCI Expressレーン数もPCIe Gen 4.0や今後登場するGen5によって大量のPCIeレーンが求められる事は少なくななくなっています。また、コア数ではRyzen 9 5950Xなどの16コアCPUでもコンシューマー向け用途としてはオーバースペック気味で全てのコアを使い切れるというソフトウェアは非常に限られています。そのため、コンシューマー向けのRyzen Threadripperに関しては現時点では発売しても売れるだけのマーケットが存在していないとAMDは読んでおりRyzen Threadripper 5000シリーズに関しては発売がされない可能性が大きいとLinus Tech Tipsでは語られています。
Ryzen Threadriper Pro 5000シリーズは現時点ではOEM向けにしか販売されておらず、レノボ製のワークステーション、Thinkstation P620で搭載が可能となっています。性能面ではZen2からZen3へアーキテクチャーが刷新されているため、順当に性能は上がっており、最近発表されたM1 Ultra搭載のMac Studioに対して対抗できるだけの性能とは言えそうです。
今回登場したRyzen Threadriper Pro 5000シリーズですが、例年はEPYC登場から半年程度で発売されるものの今回は1年近く経過しています。これはAMDとしてはIntelと言うライバルがHEDT、ワークステーション向けCPUには存在しないため発売を急がなかったと見られていますが2022年中にAlder Lake-Sに搭載されているGolden Coveアーキテクチャーを採用したワークステーション向けSapphire Rapidsを発売予定ですので、コンシューマー向けHEDT向けはどうなるか分かりませんが、エンタープライズ用途では競争が激しく様々な新商品が2023年頃から出始めるかもしれませんね。
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