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NHKが10日夜にネットに配信した記事が波紋を広げている。「水際対策緩和 入国も困窮の外国人留学生に10万円支給決定   政府」という見出しの記事で、水際対策の緩和に伴って入国した、経済的に苦しい状況にある外国人留学生に対して、1人あたり10万円の給付金を支給することを政府が決めたことを報じている。配信するや否やツイッターなどのSNSで大きな反響を呼び、配信から1日近くが経過した11日16時時点でもアクセスランキングで1位をキープしている。

structuresxx /iStock

このニュースにツイッターでは反対一色で、特に次のような意見が目立った。

困窮している日本人は放置で外国人留学生には10万円を支給

信じられない…自国の学生が困窮しているのに…

日本人で食べるにも困ってる学生さんたくさんいますよ?

日本人の学生助けろよ。どこ向いて仕事してんだよ

日本国民助けないで外国人に金配るな!

「日本の学生の中にも、コロナ禍でアルバイトが減り、困窮している人が少なくない。そうした学生は放置で、外国人留学生には給付金を支給するのか」といった意見だ。ただ、この意見は誤解と言わざるを得ない。確かに、NHKの見出しを読む限りでは、外国人留学生だけに給付金を支給すると読める。しかし、記事では次のように日本人学生への給付金の支給にも触れられているのだ。

また、感染の長期化などで、厳しい状況となった大学や大学院、専門学校などの学生についても、1人当たり10万円を支給する緊急給付金の申請を受け付けることにしています。

ネットの反響を見てNHKはまずいと思ったのか、11日午後になり、記事の見出しを「経済的困窮の外国人留学生や日本の学生に10万円支給へ  政府」と、日本人学生にを追記する形で変更したが、すでに長時間拡散した後のことでまさに「あとの祭り」だ。

表層的な怒りだけ?“負のループ化”

ただし、記事全文を読んだうえで、岸田政権の優先順位の付け方に疑問を呈したユーザーも少なくなかった。歌手で俳優の世良公則氏は、次のようにツイートした。

コロナ禍が2年経過しても、日本国民は未だ困窮している現状。その自国民の救済は後手後手且つ不充分。縮小打ち切りも進む。その中、留学生に対しての救済策の決定はこの速さ

多くの自国民が困窮している状況には政府は放置している、あるいは対策を行ったとしても後手後手。「不備ループ」という流行語が生まれてしまうなど、各種支援金は滞っている。それなのに、外国人留学生への給付金の支給は素早い――。世良氏の憤りはこういったところだろう。

実際に、ツイッターでは「不備ループ」により本来もらえるはずの給付金が何カ月も滞っている人や、昨年末に支給された10万円の「臨時特別給付金」がまだ振り込まれていない人は数多く確認できた。

国民の不満は今、溜まりに溜まっており、ふとしたタイミングで爆発するのだろう。今回の外国人留学生への給付がまさにそうだ。もし、きめの細かい適切な支援、特に金銭面での支援が適切に行われていたとしたら、ここまで大きな反発を呼ばなかったのではないだろうか。

日本人の学生が重要であることは論をまたないが、数ある国の中から日本を留学先に選んでくれた留学生もまた重要だ。国内外から「鎖国」とも揶揄された外国人入国者に対する厳しすぎる水際対策のせいで、留学先を日本から中国をはじめ、他の国に変えた人も少なくない。これは中長期的に見て、日本にとっての大きなマイナスだ。

いずれにせよ、民意を的確に捉えられない岸田政権の政策が今、国民の間での不信を呼び分断を生むという、まさに不備ループも加わる形で負のループを増幅させるばかりだ。その結実はさらなる国力低下を招く、といったことにならなければいいが。