もっと詳しく

 みなさん、こんにちは。路線バス運転手の運屋フランクです。最近、ありがたいことに路線バスを利用したテレビ番組が多いですよね。私も時々見ていますが、路線バスの魅力をしっかり伝えてくれるので、本当にうれしいものです。

 また、バス会社に勤務する者として、他社のバス運転手や案内所をチェックするのにも役立っています。ライバルはやっぱり気になる存在ですからね!!

 さて話は変わりますが、実は私、路線バス系のTV番組の出演者を乗せたことがあります。だいぶ前の話ですが、まさか私が芸能人を乗せることになるなんて、想像すらしていませんでした。撮影はどのように行われていたのか、タレントさんの様子はどうだったのか、当時のことはよく覚えています。そこで撮影当日の裏話をご紹介したいと思います。

文/運屋フランク(現役バス運転手)
写真/Adobe Stock(メイン:Adobe Stock:#466322035)

【画像ギャラリー】人気のバス系TV番組ロケで実際に出演者を乗せた裏話…!?(5枚)画像ギャラリー

■当日の朝「芸能人が乗ってくるかもしれない」という連絡が

その知らせは突然所長から伝えられました(♯321994621@Adobe stock)

 いつもの平日のこと。朝一番の運行を終え、営業所に帰ってくると所長が近づいてきました。「今日テレビの撮影で芸能人が乗るかもしれないからよろしくね」。

 寝耳に水です。

「何時の便に乗るんですか?」(私)

「今〇〇までは来ているらしいんだけど、どのバスに乗るかはわからないんだよ」(所長)

「ガチですね……」(私)

「普通に運転すればいいから、後はよろしくね」(所長)

 仕込み云々が囁かれるテレビの世界ですが、事前の情報は本当にこれだけ。制作会社はもちろん弊社に許可をとって乗車していますが、どれに乗るかは出演者次第。

 同じ営業所の運転手仲間に聞いても詳細を知っている人はいませんでした。そうは言っても数多のバス路線があるわけで、まさか自分のバスに乗るわけないよなと。

■番組の中心的人物が自分のバスに乗ってきた!

写真はあくまでイメージですが、VIPの専属ドライバーになったみたいで緊張しました。いつもこのテンションで運転するのがプロとしての心構えですね(#120395870@Adobe stock)

 休憩を挟んで昼近く、次の運行に向け、バスの準備をしていると所長が近づいてきました。

「君のバスに乗るかもね。今〇〇(出発地)からのバスに乗ってこっちに向かっている」(所長)

 バスを回送して出発点のバス停に行くと、本当に出演者たちが待っていました。人数は出演者とカメラなどを構えた撮影クルーを入れて10人ほど。さすがテレビ局はすごい体制だ。

「運転手さん、本日はよろしくお願いします」(出演者&撮影クルー)

 出演者と撮影クルーのみなさんがていねいに声をかけてくれ、後部座席に移動。普通にしていればいいと所長から言われましたが、自分の雄姿が放映されるかもしれないので、ハンドルを握る手に汗を感じながらアクセルを踏み込みました。

■約50分の乗車時間中に出演者との心温まる会話はあった?

出演者と撮影クルーの皆さんは後部座席に座ったので、私との距離はこんな感じです(#372178957@Adobe Stock)

 出演者が乗車したのは約50分間。その間、色々話すのかなと思っていたのですが、そんなことは全然なく、至って普通でした。ちなみに法規(旅客自動車運送事業運輸規則 第53条)には、走行中に運転手にみだりに話しかけてはいけない規定があり、その規定を遵守しているのだと思いました。

 正直、寂しさは感じましたが、ルールを守って番組作りをしている姿勢には好感が持てます。

 ただ、まったく会話がなかった訳ではありません。信号で停車した時でした。

「運転手さん、このバスって〇〇方面のバスよりどれくらい速いですか?」(出演者)

 番組の中心的な出演者が話しかけてきました。

「〇〇分こちらの方が速いですね、ただ、渋滞で〇〇分遅れています」(私)

「そうですか、先に着けますか?」(出演者)

「ご安心ください、遅れを含めてもこちらが先です」(私)

 こんな会話はありましたが、世間話をすることはありませんでした。本当に路線バスを使ってガチのロケをしていて、プロ意識を垣間見ることがありました。

■自分の担当路線をTV画面で見て魅力を再認識

目的地に到着すると、出演者は次のバスの時刻表を確認。ヤラセではなくマジで探していました(#230239723@Adobe Stock)

 約50分の乗車を終えて、目的地に到着。

「ありがとうございました」(出演者)

 出演者と撮影クルーのみなさんは私にお礼を伝えて降りて行きました。運賃は後払いのため、出演者1人1人が自分の分を払っていきました。

 出演者たちは、すぐさま次のバスの時刻を確認。私は次の便の時間が迫っていたので通常運転に戻りました。本当にあっけない50分間。後日、楽しみにしていた放映がありました。しかし、残念ながら運転手の姿(私)は映りませんでした。

 肖像権などへの配慮もあるのでしょう。ただ、私が乗せた皆さんが無事に目的地に到着していたので、しっかりお手伝いができ、良かったと思っています。次があるかどうかもわかりませんが、その時はもっと目立ってみたい気も……。

 ともあれ、普段何気なく運転している路線も、テレビ画面を通して見てみると、意外と良い雰囲気の場所を走っていることに気づきました。普段は通勤、通学のお客様の利用がほとんどですが、趣味で乗るような方もいらっしゃいます。

 目的地にお客様を届けるだけではなく、バス移動の楽しみもお手伝いしていると思うと、あらためて真摯にこの仕事に向き合わなければいけないなと思いました。今度は私が出演者や撮影クルーのみなさんにお礼の気持ちをお伝えしたいですね。

【画像ギャラリー】人気のバス系TV番組ロケで実際に出演者を乗せた裏話…!?(5枚)画像ギャラリー

投稿 乗務中に芸能人登場!? あれってガチなのね!!  路線バス旅番組のバスに乗務したぞ自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。