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Netflix(ネットフリックス)は「Conductor(コンダクター)」というツールを開発・アウトソースすることで、マイクロサービスを取り巻く状況を一変させることに貢献した。このツールは当初、自社の大規模なマルチチャネルでオンデマンドのビデオ・トラフィック(およびそれに対応する複雑なコードベース)をグローバルに扱うために作られたものだったが、後にTesla(テスラ)やAmerican Express(アメリカン・エクスプレス)、GitHub(ギットハブ)、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)、VMware(VMウェア)をはじめとする約150社もの大規模な組織などが、自社のサービスを管理するために採用するようになった。そして現在、Conductorを開発したチームは、Conductorをベースにしたツールのクラウドホスティング版である「Orkes(オーケス「オーケストレーション」の短縮形)」を発表し、同時にこのミッションを推進して、オープンソースのConductorコミュニティの継続的成長をサポートするために、930万ドル(約1億700万円)の資金調達を実施した。

このラウンドは、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)とVertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)が共同で主導し、Mahendra Ramsinghani(マヘンドラ・ラムシンガニ)氏とや Gokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏などのエンジェル投資家や、Amazon(アマゾン)やFacebook(フェースブック)を含むさまざまなテック系企業の名前を明かしていない幹部が参加している。

Orkesは、CEOのJeu George(ジョー・ジョージ)氏、共同CTOのViren Baraiya(ヴィレン・バライヤ)氏 とBoney Sekh(ボニー・セク)氏、CPOのDilip Lukose(ディリップ・ルコセ)氏が共同で設立した会社だ。最初の3人は、NetflixでConductorを一緒に作ったが、その後は別々の道を歩んでいた。ジョージ氏はUber(ウーバー)でシニアエンジニアとして働き、バライヤ氏はGoogle(グーグル)でFirebase(ファイアベース)のエンジニアリングを率い、セク氏はRobinhood(ロビンフッド)で決済の責任者を務めていた。2021年、この3人が再結集し、Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)の卒業生で、ジョージ氏と一緒に働いていたルコス氏も加わり、Orkesを起ち上げた。

Conductorに戻って、その上に乗るツール群を構築した理由は、ジョージ氏がいうように、非常に明確な市場のシグナルがあったからだ。

「私たちはConductorを汎用エンジンとして構築し、多くの企業がこれを使い始めると予想しました。現在、この分野は変曲点にあり、組織はマイクロサービス・アーキテクチャに移行しています」と、ジョージ氏はインタビューに答えている。「しかし、より広い今のアイデアは、その運用を支援し、その上における規模の管理を支援することです」。組織はしばしばハイブリッドクラウド環境で、複数のコーディング言語にわたって作業するため、Orkesのアイデアは管理を支援するための「すぐに使える」一連のツールを提供することだと、同氏は付け加えた。

実際、Orkesが登場する前にHacker News(ハッカー・ニュース)で行われたConductorの長所と短所に関する議論では、一部の環境における実装の難しさが強調され、それを解決する機会も指摘されている。

「企業がマイクロサービスを構築するとき、彼らは選択した言語で構築するわけですが、概して複数の言語を使用することがあります」とジョージ氏は述べ、一般的には少なくとも3つの言語が使用され、時にはそれ以上の場合もあると語った。「ConductorとOrkesのユニークな点は、まったく言語に依存しないことです」。

クラウドサービスに注力したクローズド・アルファ版が好評を得ているため、今回調達した資金は、引き続きOrkesのエンジニアリング・チームと市場参入戦略チームの増強に使用される予定だ。

Orkesの台頭は、オープンソースツールの最近よくあるルートを浮き彫りにする。開発者やエンジニアは、既存の組織で、あるいはプロジェクトとして、自らの実体験に基づく非常に直接的なニーズを解決するための、画期的なツールを構築することに多大な力を注ぐ。そして、それをどのように運用するべきかという開発者の倫理観から、これらのツールを長期的にサポートする幅広いコミュニティを構築するために、オープンソース化するのだ。

同じ開発者が、オープンソース版を使いやすく実装するためのリソースや人材を持たない多くの組織でもより簡単に使えるようにするために、結局は開発に舞い戻り、最も明白で有用なカスタマイズを行うこともよくある。

もちろん、誰でもオープンソースツールの商用版を作ることはできる(非常に成熟した技術では、その上に競合する商用製品が作られることもある)が、そのようなスタートアップ企業の創設者は、概して最初にオープンソースツールの構築をてがけた人物と同じであることが多い。彼らは誰よりも時間と力を注ぎ込んでいて、誰よりもそのツールの可能性と落とし穴を知っている。

そして、投資家も同じ理由からそのような企業を支持したがるものだ。同じテーマに沿った最近の例では、Great Expectations(グレート・エクスペクテーションズ)の開発者たちによるSuperconductive(スーパーコンダクティブ)が、先ごろ4000万ドル(約46億円)を調達した。

Conductorの場合、このオープンソースツールには熟した既存ユーザーがいて、それはOrkesにとって当然ながら顧客となる。しかし、このスタートアップの台頭は、新たな見込みのあるユーザー層への扉も開くことになる、あるいはそう考えることができる。

「Conductorの普及曲線は、私が見た中で最も速いものの1つです。そして、オリジナルの開発チームによる商品化をサポートできることは、私たちにとってすばらしい機会です」と、Battery Venturesのジェネラル・パートナーであるDharmesh Thakker(ダルメシュ・サッカー)氏は声明の中で述べている。「Orkesには、この活気あるコミュニティに、企業レベルのサポートとクラウドサービスを提供するための最適なチームが揃っています」。VertexのパートナーであるSandeep Bhadra(サンディープ・バドラー)氏は、このラウンドで同社の取締役会にも加わっている。

画像クレジット:woodleywonderworks Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)