クルマは使っていても劣化していきますが、使っていなくても劣化していきます。新型感染症が再び猛威を振るうなか、平日は自宅でテレワーク、週末も特に出かけることもなく、「そういえばしばらくクルマを動かしていない…」という方は要注意。クルマは、人間の身体と同じで、動かさないとあちこち調子が悪くなります。クルマを動かさないことで起きる、クルマの寿命を縮めるトラブルとは!?
文:吉川賢一
アイキャッチ画像:Adobe Stock_Roman
写真:Adobe Stock、写真AC、HONDA、エムスリープロダクション
1ヶ月放置すると、オイル落ちが
まず気になるのが「バッテリー上り」でしょう。スマートキーシステムや車載ナビ、カーセキュリティなど、最近のクルマには、放置しておいても暗電流を必要とする装備が複数あります。一般的なクルマの場合10~30mA、大型車だと40~60mA程度の暗電流が流れている、といわれています。
自動車用バッテリーには「5時間率」というバッテリーの性能を表す数値が付いており、「5時間率 容量30Ah」の場合、「1Aの電流を30時間流すことができる」ということを表します。このバッテリーを搭載する一般的なクルマ(暗電流20mA)を1ヶ月放置した場合、30日間で、0.02(A)×24h×30=14.4Ah、つまりバッテリー容量の約半分は自然放電してしまうという計算となります。
ただこれは、容量めいっぱい使えるバッテリーの性能がある場合であり、バッテリーが劣化している場合は、5時間率の計算値よりも早くバッテリー上りが発生し、エンジンがかからない事態も考えられます。
そして、このバッテリー上りよりも怖いのが、エンジン内部の部品表面からオイルが落ちてしまうこと。良質のオイルであれば、3か月程度たっても乾くことはないといわれていますが、気温変動の激しい場所では1ヶ月で乾いてしまうことも。このオイルが落ちてしまった状態でエンジンをかける、いわゆる「ドライスタート」をしてしまうと、摩耗が一気に進んでしまうなどの不具合が生じることも考えられます。
タイヤ潰れによる異常振動や、融雪剤による錆の進行も
また、ずっと一か所に同じ負荷をかけられた状態となるタイヤには「つぶれ癖」ができてしまいます。わずかなつぶれ癖であれば、クルマを走らせれば元に戻りますが、目視でへこみが分かるほど癖がついてしまうと元に戻らず、「円」ではなくなってしまうため、走行中にバタバタと振動が発生してしまうことがあります。
できれば一週間に一度はクルマを動かして、エンジンオイルをいきわたらせ、タイヤの癖をとり、バッテリーに充電をさせておきたいところです。
ほかにも、潮風があたる場所で放置したり、雪道を走って融雪剤が付着したまま放置すると、ボディが錆びてしまう可能性もあります。
半年動かさないと、ガソリンが劣化
そして半年にもなると、上記に加えて、「ガソリンの劣化」が心配です。ガソリンタンクの中は密閉されてはいますが、タンク容量に対してガソリンが少なければ、その隙間に空気があるわけで、その空気が多ければ多いほど、劣化が早まってしまいます。
ガソリンが満タンで、タンク内の空気が少ない状態で放置されていたとしても、半年経過したガソリンは使わずに入れ替えることをお勧めします。ただし、ガソリンは危険物ですので、自分では行わず、専門家に任せてください。
そのほかにも、オイルシールなどのゴム製品の硬化や固着も考えられます。タイヤもそうですが、ゴム製品は、伸び縮みをすることで柔軟性を保つことができ、放置されると劣化は早まってしまいます。
さらに一年以上放置されていたクルマでは、上記に加えてブレーキやボディ関連の部品が錆びついていることが考えられます。ブレーキのローター表面の錆だけならば、少し走行すれば元に戻せますが、摩擦材がブレーキローターと固着してしまったり、ボディに錆が浮いてしまいクルマへ乗り込んだ瞬間に、「ミシミシ」と、亀裂が発生してしまうようだと、もうどうにもなりません。
長期間クルマを使用しない場合は、事前に対策を
海外出張や長期旅行、長期入院などで、どうしても長い期間、クルマを使うことができない場合は、できるだけ屋根付きの駐車場を確保し、ガラスに日よけなどをつけた上で、ガソリン満タン、バッテリーのマイナス端子を外す、タイヤの空気圧を上げる、エンジンオイルを保持性の高いオイルに替える、などの措置をしておくと、ダメージが少なくて済みます。
特に、潮風にさらされるような海沿いの地域や、雪が降りやすい地域で屋外駐車をしていた場合は、クルマのボディ表面が一見キレイに見えても、隙間に付着した塩分によって、見えないところで錆が浸食している可能性もあります。普段から月に1度は洗車をし、長期間クルマを放置する前にも、洗車をしておくと安心です。
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クルマの状態にもよりますが、1ヶ月程度であれば、すぐにトラブルに直結するほどのダメージには至らないと思われます。しかしながら「リハビリ」は必要です。走り出しは速度を抑え、ブレーキの効き具合や、エンジンに異常振動がないかなど、クルマの調子を見ながらの走行をお薦めします。
ただ、本文中で触れたように、クルマはやはり毎日乗ってあげることが理想的です。毎日乗ることができなくても、3日に一度、できれば1週間に一度は、30分以上クルマを走らせて、状態をチェックするようにしてください。
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