18日午前に行われた衆議院予算委員会の質疑が話題を呼んでいる。質問に立ったのは元首相の野田佳彦元首相(立憲民主党)。「私と総理は93年初当選で同期。しかも、ともに昭和32年生まれ、同い年です」と切り出した上で、「岸田首相を評価したいことがある」として次のように述べ、国会で笑いを取った。
「前首相もその前の首相も首相公邸に住まなかった。岸田首相は公邸に住むようになった。これは危機管理の基本の基だと思っている。“事故物件扱い”されてしまっている公邸だが、妙な都市伝説を吹き飛ばす。これは大切だと思う。幽霊見ていないですよね?大丈夫ですよ。しっかりそれは続けていただきたい」
首相公邸は、1932年の五・一五事件や1936年に起こった二・二六事件の舞台となっている。五・一五事件では当時の犬養毅首相が、二・二六事件でも当時の岡田啓介首相の義弟が殺害されている。
「何らかの事件や事故で人死のあった物件のことで、居住するには心理的な不安や抵抗感がある物件」という事故物件の定義にならえば、首相公邸は立派な事故物件と言える。
野田元首相が指摘したように、菅義偉前首相も安倍晋三元首相も首相公邸に住んでいない。昨年2月、宮城県、福島県で最大深度6強を観測する東日本大震災の余震とみられる地震が発生したが、これを機に首相が公邸に住まないことを問題視された。野党は「首相が公邸に住まないのは危機管理上、問題がある」と求めたが菅前首相はかたくなに応じなかった。
なぜ菅、安倍両氏は住むのが嫌だったか
安倍首相は2006~2007年までの第1次政権時には公邸に住んでいるが、2012~2020年第2次政権時には住んでいない。安倍首相は公邸を公務には活用したが、寝泊まりするのは東京・富谷の高級マンションだった。国会で疑問が呈された際には、「官邸まで15分しかかからない。危機管理対応に支障はない」と反論している。
菅前首相も安倍元首相もなぜそこまでかたくなに首相公邸に住むのを嫌がったのか。家庭の事情や家族の要望があったのかもしれない。それとも、本当に幽霊を怖がっていたのだろうか。家族や幽霊以外の理由として、当時「ジンクス説」を取り上げた週刊誌もあった。首相公邸に住んだ首相は短命政権に終わるというジンクスだ。
現在の首相公邸は、1929年竣工の旧首相官邸を改装したもので、2005年から公邸として利用されている。公邸に住んだのは、任期途中だった小泉純一郎氏、第1次政権時の安倍元首相、福田康夫氏、麻生太郎元首相、鳩山由紀夫氏、菅直人元首相、野田佳彦元首相の7人。小泉氏以外、全員が1年ほどの短命政権に終わっている。
NHKが14日に発表した内閣支持率では、50%台を維持した岸田首相。一方で、投資家の支持率がわずか3%と言われて話題になった。
「首相公邸に住んだ首相は短命に終わる」。今夏に参院選を控える首相。その結果次第で、ジンクスが当たってしまうのだろうか。