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東京都の小池百合子知事は13日、新型コロナウイルスの感染症法上の分類について、季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げるべきだとの認識を示した。都庁で記者団に、「5類への適用類型への変更も含めて、科学的な知見を集めていただくようお願いを申し上げたい」と述べた。

小池都知事と会談する岸田首相(6日、官邸サイト)

新型コロナウイルスの感染症法上の分類は現在、結核やジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)などと同じ2類相当。11日には、大阪市の松井一郎市長も感染が急拡大している新変異株「オミクロン株」による重症化率は季節性インフルエンザよりも低いとしたうえで、「5類に位置付けるよう専門家で協議するべきだ」との考えを明らかにしていた。

新型コロナウイルスの感染症法上の分類に関しての議論は、「オミクロン株」の感染が急拡大するようになった今年になって特に活発になっている。1月3日には、安倍元首相が読売新聞のインタビューで次のように述べている。

感染の仕組みが次第に解明され、昨年末には飲み薬も承認されました。オミクロン株への警戒は必要ですが、薬やワクチンで重症化を防げるならば、新型コロナを季節性インフルエンザと同じ『5類』として扱う手はあります。

ネット上では、安倍発言には肯定的な意見が目立つ。

無症状、軽症者しかいないのなら、インフルエンザと同じだろう。無症状、軽症者向けの飲み薬が出来たら自宅療養で対応できて、病床逼迫も解消出来る。

それで良いんじゃないですかね。やっと普通の世界になる。

お願い。早く5類にしてください。

首相「急拡大の中で現実的ではない」

ただ、医師などの専門家は5類への引き下げには否定的な意見や慎重な意見が少なくないのが現状だ。沖縄県立中部病院感染症内科の高山義浩医師は「(2類相当から5類への引き下げ時期は)まだ早いです」と自身のフェイスブックで見解を述べている。

愛知医科大学大学院臨床感染症学教授で、日本感染症学会理事長の三鴨廣繁氏も出演したテレビ番組で「医療従事者への感染リスクが高まってしまうので、5類にするのは時期尚早ではないか」との見解を示している。

kuremo /iStock

こうした専門家の声を受けてか、岸田首相も新型コロナウイルスの2類相当から5類への引き下げには慎重な姿勢を崩さない。岸田首相は13日、「感染が急拡大している状況の中で分類の問題を変更するということは、たちまちは現実的ではない」と述べている。

確かに現状、新型コロナウイルスの感染者は、連日倍々ゲームのように増えている。ただ、東京都と大阪市の2大都市のトップがそろって「5類に引き下げるべき」との認識を示しているのは、岸田首相が言う「感染が急拡大している状況の中」だからではないだろうか。小池知事と松井市長は「感染が急拡大している状況の中、このままだと社会が回らなくなるから5類に引き下げるべき」と言っているように聞こえる。

12日には、大阪府の吉村知事も「感染者数が数万単位になれば手に負えなくなる。このままの路線で行くのか、季節性インフルエンザなどと同じ『5類相当』にするのか、国は、専門家も入れた本質的な議論を行うべきだ」と発言。政府に5類への引き下げも含めた活発な議論を促している。

就任以来、岸田首相は自身のセールスポイントを「聞く力」と強調している。現場の状況を知る知事や市長からの「5類に引き下げるべき」との意見を聞く力はあるか、狭まる“包囲網”を前に、いま試されているのかもしれない。