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義務? マナー?? 交差点で救急車が来たのに止まらないとどうなる?

 昨年、緊急走行中の救急車の前に徒歩で入って立ち止まり、走行を繰り返し妨害した罪で、20代会社員の男が、「道路交通法違反(道路における禁止行為)」の疑いで秋田区検に書類送検された。県警の調べによると、「日頃からサイレンの音がうるさく、嫌がらせをしようと思った」と話したという。

 妨害したことで、救急搬送中の患者が亡くなってしまう可能性があることを想像できなかったのかと、首をかしげたくなる件だが、本件のように意図的ではなく、無意識のうちに緊急車両の走行を妨げてしまった場合、交通違反に問われるのだろうか。

文:吉川賢一
アイキャッチ画像:Adobe Stock_jaraku
写真:Adobe Stock、写真AC

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緊急走行を妨げると、反則金6000円、違反点数1点

 緊急車両に道を譲るのは「マナーの範囲」だと思っている方もいるようだが、しっかりと道路交通法で励行が定められている行為だ。緊急車両の走行を妨げる行為に関して、道路交通法では「緊急車等妨害違反」と「本線車道緊急車妨害違反」という2つの種類がある。

 「緊急車等妨害違反」は、緊急車両が自車に近づいているのにも関わらず、そのまま走行を続ける違反行為だ。反則金は、普通車の場合だと6000円、交通違反点数は1点となる。

 「本線車道緊急車妨害違反」は、緊急車両が、一般道や高速道路などで、本線車道に車線変更するときや、本線車道に合流するときに進行を妨害する違反行為だ。こちらも同じく、反則金は普通車で6000円、交通違反点数は1点でとなっている。

 昨今は、ドライブレコーダーや監視カメラといった映像記録装置を装備するクルマが増えており、その場で取り締まりされなかったとしても、映像データが残っていれば、後からお尋ねが来る可能性は高い。緊急車両に遭遇したら、しっかりと安全を確認したうえで、道を譲ろう。

クルマで走行中に緊急走行を妨げると、反則金6000円、違反点数1点。緊急車両に遭遇したら、しっかりと安全を確認したうえで、道を譲ろう(PHOTO:写真AC_ fujikiseki1606)

狭い場所でも周囲のクルマと協力して道をあける

 冒頭で紹介したような不届き者はさておき、関心事は、渋滞中や道幅の狭い箇所などで、進路を譲ることが難しい場合。この場合も、我々一般車両は、周囲の安全に注意しながら前後左右のクルマと協力して、緊急車両が通行できるよう、最大限の努力をする義務がある。

 もちろん、何をしてでも道を譲らなければならない、というわけではなく、「安全運転の義務」(道路交通法第70条)の範囲で努力することが求められる。縁石やガードレールにボディをこすりつけるまでして道をあけたり、前のクルマにぶつけて押し除けたりしてはいけない。

緊急車両は、救急車・パトカーだけではない!!

 では、どんなクルマが「緊急車両」に該当するのか。緊急自動車の定義は、道路交通法第39条第1項において、「政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう」と規定されている。

 具体的には、救急車やパトカー、消防車のほか、JAFやハイウェイパトロール、電気やガスといったインフラ系の緊急作業車、自衛隊、日本赤十字社の血液運搬車、国土交通省の災害本部車や地方公共団体が所有する車両、などだ。いずれも緊急走行中は、サイレンを鳴らし、赤色の警光灯(回転灯)の点灯がルール(道路交通法施行令第14条)となるので、「赤色の警光灯が点灯しているクルマには道を譲らなければならない」と考えておいてほしい。

 なお、黄色や青色のランプ点灯をするクルマは、緊急車両には該当しない。青色灯は、防犯パトロールカー(青パト)のような、警察ではなく地域の人が使用する車両向け、黄色灯は、国土交通省やNEXCOが保有する、道路維持作業用の自動車に設置する回転灯、ちなみに緑色灯は、大きな荷物を運搬する特殊車両を誘導する場合のみに点灯が許される。

道を譲らなければならない緊急車両は、救急車やパトカー、消防車のほかにもある。赤い警光灯が点灯していたら、道を譲ろう(PHOTO:写真AC_まぽ)

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 緊急走行しているクルマの多くが、人命にかかわる緊急事態に対応している最中だ。「緊急車両に道を譲ることが交通ルールにあるから守る」という考え方ももちろん重要だが、「道を空けてださい!!」と発する緊急車両の中の状況を想像すれば、「なんとかしなければ」と多くの人が思うだろう。

 渋滞中の道で、緊急車両が通行するための道があけられていく様子は、助け合いの結果であり、救急車に乗っている当事者やその家族にとっては、皆が神様の様にも見えるそうだ。いつかは自分や家族が、緊急車両に乗る側に回るかも知れない。そうなるときのために「徳を積んでおく」と考えて、今後も協力していこう。

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