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新型ランクルは4年待ちなのに…日産最強のSUVサファリはなぜ日本から消えたのか?

 2021年8月に、14年ぶりとなる新型が発売となった、トヨタ「ランドクルーザー(以下ランクル)」。6月の新型発表直後から、販売店には、ユーザーから予約注文が殺到していたようで、公式サイトによると、現在(1月22日時点)の納期はなんと4年。

 異常ともいえる新型ランクルの販売状況だが、もしいまでも、かつてのライバル「日産サファリ」が存在していたら、この様子は違っていたのだろうか。サファリは海外で、いまもランクルと並んで人気がある(海外では「パトロール」という車名)。なぜサファリは国内から消えなければならなかったのか、復活の可能性とともに考察しよう。

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN、TOYOTA、MITSUBISHI、ベストカー編集部

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国内でのイメージを一新するべく誕生した、初代サファリ

 初代パトロールは、1951年に登場したグローバル向けの戦略車で、堅牢なラダーフレームとパートタイム式4WDという本格オフローダーの基本コンポーネントを熟成し、過酷な環境下での作業車として、世界的な販路拡大を狙ったモデルだ。特に海外ではそのタフさが好評で、ランドクルーザーと共に人気を獲得した。

 しかし国内では、レジャーユース向けに細かく仕様変更を行い、小型ディーゼルエンジンの投入などで国内市場でも成功したランクルに対し、パトロールは4.0L 直6OHVエンジンのみという選択肢しかなく、個人ユーザー向けのニーズにうまく対応できなかった。

 そんな苦しい国内市場の状況を打破するべく誕生したのが、初代「サファリ」だ。国内用に車名が与えられ、ボディを刷新、3.3L 直6ディーゼルエンジンも用意した。ボディタイプはロングホイールベースの「バン」と、ショートホイールベースの「ハードトップ」が設定された。

 シンプルでありながら芯の強さを感じさせる質実剛健なデザインと、乗用車然としたモダンなインテリア。イエローやレッドなどのポップなボディカラーがラインアップされ、カタログには乗用車としての明るく開放的なイメージの写真が掲載された。それまでのパトロールの流れからすると、まさに革新的とも思われた。

初代サファリの後期型。2020年の日産TVCMで、初代サファリが荒々しく川を渡っているシーンが映し出されていた

登場直後、ライバルは一歩先へ

 しかし、初代サファリが登場した1980年、ランクルは60系を投入。ヘビーデューティ系とは異なる「ステーションワゴン」系といわれる60系は、現行型である300系の先祖。ボディは大きくマッチョなデザインで、絨毯敷となるラグジュアリー色の強いインテリアが採用され、ランクルは「乗用車感覚のオフローダー」というキャラクターを明確に打ち出してきた。

 さらに1982年には、オンロードでも快適な本格オフローダーを目指した「パジェロ」も登場。乗用車感覚をメインとしたランクルやパジェロに対し、サファリは機能性をメインにした味付け・デザインで、出遅れ感が否めなかった。

 サファリは、1982年8月のマイナーチェンジで、上級グレードの内装を絨毯敷にし、シートをファブリックに換装。大きな「NISSAN」のロゴをグリル中央に配置するデザイン変更でイメージチェンジを図る。しかしメカニズムに変更はなく、トランスミッションはライバルの5速MTに対し、サファリは4速MTのままだった。

初代サファリのインテリア。雰囲気は悪くないのだが、ライバルに比べると乗用車感覚は薄いか

日本に主眼がおかれていなかったことが消滅の理由

 1987年には2代目にフルモデルチェンジ。基本的なパーツの多くは初代を流用しつつも、フレームを新設計にするとともに、サスペンションをリーフリジッドからコイルスプリングへと変更。オンロードでの安定性や乗り心地を大きく向上させた。

 しかしその2年後、ランクルは80系をリリース。北米市場を強く意識した重量感たっぷりのボディに高級感のある内装で、「ラグジュアリーオフローダー」のキャラクターをはっきりと確立したモデルとなって登場した。メカニズムも従来のパートタイム式からフルタイム式に変更し、イージードライブ化を進めた。

 当初、1ナンバーの貨物車扱いだった2代目サファリだが、この80系ランクルのキャラクターに寄せるかのように、1991年、3ナンバー登録の「ワゴン」を設定。ガソリンエンジン搭載車や、本革シートのラグジュアリー路線を狙った最上級グレードも設定された。

 しかし、エクステリアデザインが「無骨なオフローダー」のイメージが強い2代目サファリの内装をいくらゴージャスにしても、高級車の選択肢には入りにくい。海外ではともかく、残念ながら日本人には刺さらなかった。

 そしてそれは、1997年に登場した3代目サファリも同様だった。オフロード性能も本物であったし、デザインはモダンに進化したが、やはり「無骨感」は拭えなかった。しかもメカニズムはパートタイム4WDのままだ。クロスオーバーSUVの台頭で市場が縮小した上、ランクルに対する優位性も見いだせないまま、サファリは2007年、国内販売を終了した。

 日本のユーザーに合わせた対応をしたランクルと、それをしなかった(もしくはしたくてもできなかった)サファリ。サファリは、海外市場に目を向けたパトロールが始まりだったこともあり、やはり海外が主眼だったのだろう。

1987年登場の2代目サファリ。本物志向のシブさは感じられるが、高級路線には持って行きにくい

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 現行型のパトロールは2010年に登場、従来のメカニズムやデザインとは全く異なる方向性にシフトしたモデルとなっている。特に2019年にアブダビで発表された新型モデルは、高級感、洗練度共にピカイチの高級オフロードSUVに生まれ変わった(ちなみにインフィニティQX80が兄弟車だ)。カッコよさとラグジュアリーさでいえば、300系ランドクルーザーにも負けていない。

 決して大きくはない日本の本格オフロードSUV市場ではあるが、あのランクルの異常な人気ぶりを見れば、サファリ復活もありなのではないか、と思えてくる。しかし、日産はそこを狙ってはこないだろう。残念ながら国内サファリの復活は期待できないが、海外ではパトロールが、今後も活躍してくれるだろう。

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