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 え~、これが法律違反? と思えるような「うっかり」がもたらすケースは意外と数多く、常に身近にあることは、突然遭遇したときになって感じる事実だ。

 誰もがクルマの状況や運転にいつでも「全集中」できているわけではないのだから、普段からできるだけ注意を払っておくべきだろう。

 「うっかり」が「うっかり」では済まされなくなる前に、知っておくべき事例と法律を列挙してみよう。

文/岩尾信哉
写真/ベストカー編集部、ベストカーweb編集部、Adobe Stock(トビラ写真/Adobe Stock@xiaosan)

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■「うっかり」の常連? でも許されない「免許証不携帯」

 ドライバーとして常に頭に置いておくべきことであるにも関わらず、「うっかり」の上位にあるのが「免許証不携帯」に違いない。

 カバンや財布などに普段から収めておけば大丈夫と日頃から思っていると、なんらかのきっかけ、たとえば身分証明用の書類として免許証をコピーする必要があった場合など、タマに外に出すことがあるはず。特に事が慌ただしく進んでいる中では「うっかり」の危険度が増していく。

 2021年度(令和3年度)の交通安全白書によれば、2020(令和2年)年中の交通指導取り締まり件数575万1798件のうち、免許証不携帯は5万3739件と1%にも満たないが、その憂き目に遭えば精神的ダメージ(?)は意外と大きい。

令和2年中における車両等の道路交通法違反(点数告知に係る違反を除く)の取締り件数(出典:令和3年度警察庁交通安全白書)

 道路交通法第95条第1項にある免許証の携帯及び提示義務において、「免許を受けた者は、自動車等を運転するときは、当該自動車等に係る免許証を携帯していなければならない」とされ、第2項では「免許を受けた者は、自動車等を運転している場合において、警察官から第六十七条第一項又は第二項の規定による免許証の提示を求められたときは、これを提示しなければならない」と定められている。

●免許不携帯/反則金:3000円(反則金の支払いを怠ると、2万円以下の罰金または科料に処される)

■車検証と検査標章の表示。罰金は最大50万円!

 これも常識といっていいレベルの話だが、旧車に乗っている人の場合、長く乗らないでいると、車検証を家に持ち帰ったものの、久しぶりに乗る時に車検証を家の中に保管しているのを失念し、積み忘れるという、うっかりもありうる。

 厳密には、日本国内での自動車(軽自動車・小型特殊自動車・二輪の小型自動車を除く)は、国土交通省が管理する道路交通車両法が定める自動車検査登録制度(通称:車検)の元に、一定期間ごとに整備検査を受け合格しなければ運転することができない、というのが「車検制度」ということになる。検査合格後には車検証と、いわゆる車検シールの検査標章を該当車両に、携帯・表示しておく義務があるのだ。

 この点に関する法律は、道路運送車両法第66条1項において「自動車は、自動車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない」と定められている。

 検査標章はともかく、車検証がどこに収納してあるかは、何かの時に(交通違反時に景観にチェックされることもある)提示できるように心がけておきたい。

●車検証不装備および検査標章の不表示/罰金:最高50万円

 蛇足になるがリアサイトウィンドウに貼る、車庫証明を取っていることを証明する保管場所標章については、表示義務はあるが、貼っていない場合の罰則はない。うっかり貼り忘れたという人もいるかもしれないが、貼っておくことをお勧めする。

 また低排出ガス車、燃費基準達成車のステッカーについても、新車時に貼ってあり、そのままにしている場合が多いが、万一剝がしても、貼る義務や貼らないと罰則が科せられるということはない。また、ステッカーをフロントガラスなどに貼りたい場合、貼る位置は保安基準によって違反になる恐れがあるので注意が必要だ。

■自動車損害賠償責任保険証明書の不携帯

 車検証とともに不携帯はもちろんのこと、期限切れによる失効に適宜気をつけるべきなのが自賠責保険証明書だ。「自動車損害賠償責任保険」は自車の所有車の加入が必要で、入っていない車両は公道で運行することができない。

 自動車損害賠償保障法第8条において「自動車は、自動車損害賠償責任保険証明書を備え付けなければ、運行の用に供してはならない」と定められている。

●自賠責証明書不携帯/罰金:30万円以下。未加入で自動車を運行した場合:1年以下の懲役または50万円以下

■高速道路上でのうっかり「ガス欠」

高速道路上でのガス欠「高速自動車国道等運転者遵守事項違反」/違反点数:2点、反則金:9000円(kudoh@AdobeStock)

 高速道路(自動車専用道)のみの話でも、うっかりミスといえるガス欠は、起こってみれば事の重大さに気づかされるはずだ。

 道路交通法第75条10の「高速自動車国道等運転者遵守事項違反」において、「高速道路でガソリン、冷却水、エンジンオイルの不足により自動車が運転できなくなることを防止する」ことが求められる。

 なにより、JAFを呼んで車両を移動させるなど、事後処理に大きな手間とエネルギーを浪費することを考えれば、「後悔先に立たず」になってしまうからうっかりは禁物だ。

●高速道路上でのガス欠/違反点数:2点、反則金:9000円

■意外に見かけるトンネル内無灯火

トンネル内無灯火/違反点数:1点、反則金:6000円(普通車)(YUTO PHOTOGRAPHER@Adobe Stock)

 夜間の走行時はヘッドライトを点灯することが道路交通法第52条で定められ、さらに道路交通法施行令第19条では上記の第52条の元に「トンネルの中や濃霧がかかっている場所などでは、高速道路では200m、その他の道路では50m以下であるような暗い場所を通行する場合灯火する必要がある」というような規定がある。

 オートライト機能が新車への義務づけが進んでいるとはいえ、トンネル内での無灯火走行は周囲からは認識されにくいため、走行中は注意が必要だ。

●トンネル内無灯火/違反点数:1点、反則金:6000円(普通車)

■車両通行帯違反

追い越しは右側車線で実施しなければならない。違反すると、車両通行帯違反/違反点数:1点、反則金:6000円(普通車)(hiro@Adobe Stock)

 高速道路上での取り締まりの「最高速度違反」とともにいわば定番メニューといえる「車両通行帯違反」を「うっかり」の範疇とするのは異論もあるだろう。いうまでもなく、2車線以上の道路においては、左側車線を走行しなければいけないという「キープレフト」は交通ルールの基本といえるからだ。

 道路交通法の第20条第1項において、「車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。」と規定されている。

 ところが、高速道路での走行マナーとして常識といえる右側車線からの追い越しでも、一般道でも適用されることをうっかりしてはいけない。

 前述の道路交通法第20条の第3項では「追い越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない」と規定されており、高速道路限定とはされていない。

 すなわち一般道であっても追い越しは右側車線で実施しなければならず、これを違えれば違反行為となる。さらに左車線からの追い越し車線を走行する先行車両の追い越しは、違反点数:2点、反則金:9000円(普通車)が科せられる。

 運転の基本中の基本とはいえ、たとえ気が急いていても、落ち着いて運転するべきであることを肝に銘じておきたい。

●車両通行帯違反/違反点数:1点、反則金:6000円(普通車)

■あおり運転(車間距離不保持違反)をするとこうなる!

高速道路でのあおり運転「車間距離不保持違反」/違反点数:2点、反則金:普通車 9000円。悪質と判断されると『3年以下の懲役又は50万円以下の罰金/違反点数:25点』、さらに他の自動車を停止させた場合は『5年以下の懲役又は100万円以下の罰金/違反点数:35点』に処される(Imaging L@Adobe Stock)

 うっかりでは済まされないのがいわゆる「あおり運転」に関する法律の規定だ。前方の車両を嫌がらせのように執拗に追い回す「あおり運転」は、死亡事故の原因になるなど特に危険な行為であり、道路交通法第26条により車間距離不保持違反として摘発される。

●高速道路でのあおり運転/違反点数:2点、反則金:普通車 9000円

■これ知っている? 他の車両に追いつかれた車両は譲る義務がある

後続車に追いつかれて道を譲らない場合も違反となる。他の車両に追いつかれた車両の義務違反/違反点数:1点 反則金:6000円(Fotoschlick@Adobe Stock)

 これはうっかりの部類に入るように思うのだが、高速道路上で後続車両への注意を怠れば、後続車に追いつかれても車線を譲らないことで、いわゆる「あおり運転」を招くことも含めて、危険な状況を招きかねないことを留意しておきたい。

 道路交通法第27条では「道路の最高速度の範囲内で後方のクルマに追いつかれた場合、追いついたクルマが追い越しを完了するまで速度を上げてはいけない。そして一車線しかない道路でも左端に寄って進路を譲る義務がある」とされている。

●他の車両に追いつかれた車両の義務違反/違反点数:1点 反則金:6000円

■速度低すぎも違反になる、最低速度違反

最低速度違反/違反点数:1点、反則金:6000円(naka@Adobe Stock)

 高速道路でのスピード違反のなかでも最高速度違反は誰もが認識していても、最低速度違反については意外と見過ごされがちだ。

 最低速度違反は高速道路の本車線が対面通行でない区間に適用され、法定最低速度は50km/hと規定されている。漫然運転ともいえる行為を戒める法律は珍しいかもしれない。あおり運転が被害者側の「うっかり」がもたらすこともあり得ることも頭に置いておくべきではないか。

●最低速度違反/違反点数:1点、反則金:6000円

■うっかり目的のインターチェンジを通り過ぎてしまったら「逆走に注意」

 ここ数年、ニュースでよく聞くことが多くなってきた高齢者による高速道路の逆走事故。直近の全国の高速道路で起きた逆走事案のデータをみると、逆走が起きている場所の約6割がインターチェンジやジャンクションで起きている。

 2018年に発生した200件の逆走事案の動機では、進行するルートを誤って逆走が41件(21%)、本来のルートへ戻るための逆走が39件(約20%)、本来のルートへ復帰するための逆走が24件(12%)。

 ちなみに逆走したドライバーの年齢は65歳以上が69%、そのうち75歳以上が48%を占め、逆走の認識なしが41件(21%)もあり、認知症が27件(14%)も確認されていることに驚かされる。

 基本的なことだが高速道路は一方通行。間違えて入ってしまったり、降りるインターチェンジを通り過ぎても本線上や料金所付近でのUターン(転回)やバック(後退)は絶対にしてはいけない。また、サービスエリア、パーキングエリアでは、本線車道に戻る際に進行方向を間違えないように注意。

 もし、うっかり目的のインターチェンジを通り過ぎてしまった場合は、高速道路上でUターンやバックはせず、そのまま走行して次のインターチェンジで降りること。

 その際、インターチェンジ出口では一般レーンを通行し、料金所スタッフに申し出ること。ETCを利用している人がほとんどだと思うが、事前にETCカードをETC車載器から取り出したうえで料金所まで行くこと。

 料金所係員によって、目的のインターチェンジまで戻るように案内されるので心配は無用だ。その際の通行料金は当初流入インターチェンジから目的のインターチェンジまでの通行料金となるとのこと。これを特別展開制度というそうだ。なお、インターチェンジの構造等によっては対応できない場合があるので注意が必要だ。

NEXCO東日本「高速道路の出口を通り過ぎてしまったら」

 では逆走すると違反の対象となるのか? 逆走は道路交通法第17条通行区分違反となり、普通車の場合、違反点数が2点、反則金が9000円。

 軽すぎると思えてならないが、逆走事故を起こしてしまうと重い処分を受けることになる。自動車運転死傷行為処罰法により、交通事故を起こして、過失により相手を死傷させた場合には過失運転致死傷罪が適用され、7年以下の懲役または100万円以下の罰金となる。

 故意に高速道路を逆走して相手を死傷させた場合には危険運転致死傷罪となり、負傷の場合は15年以下の懲役、死亡した場合には、危険運転致死罪となり、1年以上20年以下の懲役となる。行政処分として、過失運転致死傷罪は相手のケガに応じて3~20点の違反、危険運転致傷罪は45点~55点、危険運転致死罪では62点となっている。

●通行区分違反/違反点数:2点 反則金9000円。刑事罰として5万円以下の罰金、または3ヵ月以下の懲役

■あるのが当然? 発炎筒(もしくは赤色懐中電灯)も注意したい

基準に適合した発煙筒を装備する義務がある。罰則はないが車検が通らない(あんみつ姫@Adobe Stock)

 車検時の「うっかり」で気をつけたほうがよいのが、発炎筒の装備だ。発炎筒にも正式名称があって「自動車用緊急保安炎筒」とされ、道路運送車両法保安基準第43条2において「灯光の色、明るさ、備付け場所等に関し告示で定める基準に適合する非常信号用具を備えなければならない」とされ、法律上の罰則規定はないものの、未装備の車両は車検が通らないことになる。ちなみに告示で定められた保安基準は以下のようになる

・夜間200mの距離から確認できる赤色の灯光を発するものであること
・自発光式のものであること
・使用に便利な場所に備えられたものであること
・振動、衝撃等により、損傷を生じ、または作動するもの

■標準装備ではなくなった三角表示板

三角表示板非表示「故障車両表示義務違反」/反則金:6000円(高速道路、普通自動車)(Imaging L@Adobe Stock)

 三角表示板(正式には停止表示板)は、車両に携帯してなくても車検を通すことができ、何事もなければ反則金や罰金は科せられないので、車両によっては標準装備から外されているケースも見られるので「うっかり」というには無理があるかもしれない。

 ただし、道路交通法第75条11では「高速自動車国道等において自動車を運転することができなくなったときは、政令で定めるところにより、当該自動車等が故障その他の理由により停止しているものであることを表示しなければならない」と、三角表示板の停止時の設置(表示)が義務付けられているのだから微妙なところだが、個人的には装備しておけば運転中の安全安心につながると思う。

●三角表示板非表示/反則金:6000円(高速道路、普通自動車)

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