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 マセラティがフラッグシップスポーツ「MC20」の日本でのデリバリーを開始した。2020年9月のワールドプレミアでは、イタリア・モデルと最大の市場となるアメリカ・ニューヨーク、東京の3つの都市で同時開催され、日本にいる熱心なエンスージャストたちに敬意が払われた。

 ついに上陸を果たしたマセラティMC20の詳細を紹介はもちろんのこと、今後の展開についてもお伝えしよう。

文/大音 安弘、写真/マセラティ ジャパン

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■次世代を担うマセラティのスーパーカー

 マセラティ ジャパンは、2022年1月27日、マセラティの最新モデルであるスーパースポーツカー「MC20」の日本デリバリー開始を発表した。

ガルウイングが象徴的なスーパースポーツ、マセラティMC20

 マセラティMC20は、2020年9月9日に、マセラティの次世代モデルの象徴として発表された。その翌日より受注を開始。それから1年4カ月ほどの期間を経て、日本のオーナーの元に届けられるタイミングを迎えた。

 もっとも欧州向けのモデルの生産自体が2020年度末と予告されていたので、生産が問題なく、進行していることを伺わせる。現時点では、ピュアエンジン車のみだが、EV化も前提に開発されているのも、次世代スーパーカーらしい特徴のひとつだ。

■生粋のイタリアっ子というプライド

 グローバル化の流れから、プレミアムブランドでも海外生産されるモデルが存在する。そのなかでMC20は、開発から製造までをすべて自社で行い、イタリア工場で生産していることを強調。

 その象徴といえるのが、新開発エンジンだ。20年以上ぶりとなる自社生産エンジンとなる「Nettuno(ネットゥーノ)」は、3L V6DOHCツインターボとなり、電動化に突き進む現代においては、非常に贅沢な存在だ。

 燃料システムには、自社開発のMTC(マセラティ・ツイン・コンバスチョン)を採用し、ドライサンプシステムも備える。その性能は、最高出力630ps/7500rpm、最大トルク730Nm/3000~5500rpmを発揮。

 車両重量が1500kg以下に抑えられた結果、0-100km/h加速が2.9秒以下、最高速度は325km/h以上というスーパースポーツにふさわしい性能を身につけている。

マセラティ自社開発・生産の新エンジン「ネットゥーノ」を搭載。今や贅沢なV6ツインターボエンジンだ

 開発には、あのダラーラも協力し、2000時間以上の風洞実験室のテスト、100回以上のCFD(数値流体力学)シミュレーションにより設計されている。その美しいスタイルを損なわぬように、ダウンフォースを高めるリアスポイラーも目立たぬものに仕上げられた。

 開発時にも、最先端技術が積極的に使われ、ダイナミックシミュレーターを使用したバーチャル・ビークル・ダイナミクス開発システムは、マセラティ・イノベーション・ラボが自社内で開発したもの。

 バーチャル・カーと呼ばれる複雑な数理モデルをベースに、ダイナミックテストの97%のパフォーマンスを実現させ、開発期間を短縮。もちろん、リアルなサーキットやロードテストの検証後、マシンの最終的な仕上げを行っている。

 これらの技術は、少量生産のメーカーであるマセラティが先進的な開発体制を整えていることをアピールするものでもある。

■カーボンシェルに収まる最新鋭コックピット

 軽量かつ高剛性なカーボンシェルに収まるコックピットは、マセラティらしい上質さと現代スポーツカーの先進性を両立させたもの。ダッシュボードは、シンプルな美が追求され、ボタン類を最小限に留める。

 操作に必要なボタン類は、ステアリング、その周辺に集約。ドライバーへの情報伝達には、メーター用とインフォメーションシステム用の2枚の10.25インチのディスプレイが大きな役目を果たす。

シンプルだが、上質さにあふれるコックピット。運転に集中できるデジタル化も進められた

 トランスミッションは8速DCTで、シフトはスイッチ式を採用。パダルシフトによるマニュアル操作も可能だ。ドライブモードは、標準時の「GT」、スポーツ走行向けの「スポーツ」、性能を引き出す「コルサ」、雨天時などの安全性を高める「ウェット」の4モードを用意。状況に合わせて、走りのキャラクターを変化させることができる。

 もちろん、快適性の面での配慮も忘れていない。ドライバーがより多くのシチュエーションをMC20と楽しめるように、前輪を50mmリフトアップできる「サスペンションリフター」やイタリアの高級オーディオメーカーのソナス・ファベール社のプレミアムオーディオシステムなどをオプションで用意するのは、イタリアンスーパースポーツらしいおもてなし機能といえるだろう。

■注目の日本での価格は……

 日本での価格は、2021年9月のワールドプレミアでは2650万円とアナウンスされていたが、最新の情報では、2664万円に改定されてた。厳密には、その価格も予価となっており、オーダーや納車のタイミングでは改定される可能性があるようだ。おそらく、為替変動や輸送コストなどが要因と思われる。

MC20をサーキットで振り回せる技能が身に付けられたら最高だ

 コンフィギュレーターを覗いてみると、先進安全運転支援機能としては、「ブラインドスポットアシスト」のみを用意。また、一般的な機能だが、自動防眩サイドミラーの設定は、全高の低さから効果は大きそうだ。

 ユニークなオプションが「MC20マスター」。これは専用インストラクターによるドライビングレッスンで、各モードでの最適な走行方法を学べるもの。電子制御の有無にかかわらずというからかなり高度なレッスンも含まれるようだ。

 最新鋭のデータ収集システムを活用し、ステアリング角度、ブレーキ圧、ギアシフト、アクセルなどの使い方を分析し、自身のドライビングを確認できるという。ぜひ日本でも実施して欲しいオプションだ。

■オープンやEVが控えるMC20の未来

 MC20の最新情報は、オープンモデルの開発だ。2021年12月21日、マセラティは、カモフラージュをしたMC20の写真を公開した。テスト用の新開発車にはさまざまなパターンのラッピングが施されるが、MC20には雲をモチーフとしたものを採用。

 これはオープンカーだからというマセラティエンジニアの遊び心のようだ。ルーフまでラッピングが行われていることから、ソフトトップではなく、ハードトップタイプであることが予想させる。

 リリースには、ボディはカーボンダイバーと複合素材のみと記載されているので、間違いないだろう。現時点では、リリース時期については公表されていない。

空色にラッピングがされたMC20は、オープン仕様のプロトタイプだ

 先にも述べたが、将来的にはEVも控えており、こちらはオープンモデルも同様となる。しかし、軽快な走りとエンジンの力強さが味わえるマセラティオリジナルのピュアエンジン仕様を選ぶメリットは想像よりも大きいはずだ。

 しかも、久々のマセラティ自社製エンジンというのもポイントだ。以前の情報では、プラグインハイブリッドの投入の噂もあったが、電動化シフトが加速する今、ピュアエンジンかEVの2択。もしくはエンジンからEVに移行する可能性も充分に考えられる。

 3000万円に迫る価格だけにお買い得とはいえないが、EV化のMC20よりも、ピュアエンジンのMC20のほうが、将来的にも下取りの評価も期待でき、結果的にコスパがいいといえそうだ。

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