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 東京都交通局が「東京都交通局2021経営レポート」をまとめた。このうち都営バスの系統別損益について順位をまとめてみた。意外な路線がワーストにランクインしていて興味深い。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)


都営交通は独立採算制

 都営バスはもちろんだが都営地下鉄や都電荒川線、日暮里舎人ライナーを運営する東京都交通局は東京都の組織には違いないが、地方公営企業法に基づく独立採算制の公営企業だ。よってすべてを税金でまかない運営されているわけではない。

錦25系統は第8位

 もっとも補助金等の受け取りはあるだろうが、それは民営企業も同じことなのでその点において特殊性はない。交通局は交通事業の他に広告業や不動産業、意外と知られていないのは水力発電所を持っているので電気事業での収益もある。

 予算は都議会の議決を経るものの、東京都の一般会計とは独立した特別会計で運営されており会計の方法は一般企業と同じだ。本稿では都営バスの各系統の公表された数字をもとに、系統別損益の順位に注目する。

系統別で黒字なのは8路線だけ!

 まずは系統別の損益額上位を見てみる。これは乗客が多いから収益性が高いわけでもなく、便数が多ければバスの台数も運転士の人件費も増えるので、乗客に比例して収益性が高くなるわけではないことに注意したい。仮に1日1便しかない路線でも満席ならばおそらく黒字だろう。そういう意味だ。

都07系統は第3位

 都営バスの全系統のうち黒字なのは8路線しかない。第1位は「品99」系統「品川駅港南口~(品川埠頭循環)~品川駅港南口」で収入から支出を差し引いた損益額(以下同じ)は122,187千円だった。

 第2位は「東22」「錦糸町駅前~東京駅丸の内北口」で119,142千円。第3位は「都07」「錦糸町駅前~門前仲町」で105,736千円。第4位は「新小21」「西葛西駅前~新小岩駅前」で81,380千円。

 第5位は「北47」「足立清掃工場前~北千住駅前」で58,912千円。第6位は「王57」「赤羽駅東口~豊島五丁目団地」で44,126千円。第7位は「上58」「早稲田~上野松坂屋前」で674千円。第8位は「錦25」「葛西駅前~錦糸町駅前」で358千円でほぼトントンだ。これ以外の路線はすべて赤字ということになる。

ワースト10位には意外な路線がいっぱい!

 損益額だけで判断することはできないものの、ワースト10位には意外な路線が多く含まれている。ワースト順で第129位「都05」、第128位「海01」、第127位「都01」、第126位「梅70」、第125位「業10」、第124位「都06」、第123位「錦13」、第122位「東16」、第121位「品93」、第120位「白61」だった。

白61系統は第120位

 都市新バスとして「都」の系統番号を冠する系統も含まれ、それ以外でも便数が多い大幹線がワースト10に並ぶ。比較的中・長距離路線で運行効率の悪い路線や、幹線で便数は多いものの一部の区間だけが混雑していて区間便がないか少ない場合も運行効率が悪いと言えるだろう。

運行効率だけを満たすのは難しい

 バスの路線は沿線人口や並行する鉄道線の有無、営業所の位置関係から全区間で効率的な運行を行うことはどの路線においても難しいかもしれないが、乗客が多いから「もうかっている路線」とは言えないようだ。

梅70系統は第126位

 今回は系統別の収益だけにスポットを当てたが、別の角度から見ると違った都営バスの姿が見えるかもしれない。

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