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石牟礼道子の『椿(つばき)の海の記』は、有機水銀に汚される前のふるさと水俣を、4歳の幼女だった頃の目を通して綴(つづ)った作品である。海も山も美しく豊かだが、人の世にはさまざまな辛苦がある。他人の悲しみが、その意味を汲みとるだけの経験がないはずの心に、なぜかしみ入ってくる――魂の…