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ホンダ新型NT1100がデビューし、CB1300はファイナルエディションに!? その因果関係とは?

 3月17日の発売に先駆け、ホンダが新型NT1100の試乗会を実施した。NT=ニューツアラー(New Tourer)という新しい大型のスポーツツーリングモデルで、CRF1100アフリカツインをプラットフォームに開発された。

 NT1100は、オフロードモデルのアフリカツインにオンロードでもスポーツ走行を楽しめるように専用の足まわりを与えることで、CB1300に近い立ち位置となった。そして、この秋に30周年を迎える同車にファイナルエディションが用意されるという。これらの動きに関連はあるのか?

文/市本行平、写真/宮下豊史、HONDA

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NT1100の精度の高いハンドリングはCB1300に通じるフィーリング

 今回、NT1100に試乗してすぐに扱いやすいハンドリングに安心感を覚えた。カッチリとした精度の高さがあり、これがライダーの技量を補ってくれるので大型バイクの扱いをよりイージーにしてくれるのだ。これはまさにCB1300が長年熟成させてきたものと同じフィーリングだった。

 車重が270kg前後もある超大型のCB1300がロングセラーになったのは、徹底的に扱いやすさにこだわった改良が功を奏したからと言えるだろう。NT1100にもこの技術が感じられ、さらにCB1300より軽量な車体で気軽に付き合うことができる存在になるだろう。

 実はNT1100に乗る前に、CB1300シリーズにファイナルエディションが用意され、2022年で生産終了になるという噂を聞いていた。CB1300は2021年型でモデルチェンジしたばかりなのになぜ? と不思議だったのだが、NT1100に乗ると走りやモデルコンセプトがCB1300スーパーボルドール(SB)と被っており、「ついに世代交代か~」と納得したのだ。

3月17日に発売される新型NT1100。快適性と多用途性をバランスさせることを重視した、ホンダとしてはVFRシリーズ以来久しぶりのスポーツツーリングモデルとなる。価格は168万3000円
NT1100は並列2気筒1082ccエンジンを搭載。アフリカツイン(右)をベースにオンロードタイヤとハーフカウルを装備している
海外版のブロスやドゥ―ビル(写真)が冠した「NT」というコードで令和にデビューしたNT1100は、開発者によるとドゥービルを参考に開発されている

NT1100はCB1300のダウンサイジング需要に対する受け皿に

 実際、NT1100の製品企画でもCB1300のダウンサイジング候補としてNT1100を位置づけている。開発者責任者の清野氏は「今までの大型ツアラーは快適性が高い一方、取りまわしし難かったりツーリング以外に使うには気が引けるという声がありました」と語る。

 これは、1800ccのゴールドウイングやCB1300SBを指すのだが、CBの並列4気筒1284ccエンジンが113PSを発揮しているのに対してNT1100は102PSとほぼ同じレベル。パワーウエイトレシオでは横並びなので、NT1100はCB1300SBの機能を満たすと言えるだろう。

 加えて、NT1100はCB1300SBよりも20kg以上軽量なので、日常での使い勝手も視野に入る。欧州での現地調査によるとNT1100の前身であるNT750ドゥービルのオーナーたちは、日常使いから週末のツーリングまで幅広い用途で活用しており、これの代替機としても想定されている。

 日本の交通事情では日常使いには難しい面があるが、旧来のコンセプト上にあるCB1300SBに対してNT1100が提供できるものは多く、ほぼ同じ車両価格でDCTやアップルカープレイ及びアンドロイドオートなどによる新次元の快適性が味わえるのも利点となるのだ。

2021年型で電子制御スロットルやトラクションコントロールを装備して排ガス規制にも対応したCB1300スーパーボルドール。価格は167万2000円
国内でのNT1100の位置づけはCB1300SB(赤丸)やVFR800X(黄丸)の代替え候補。CB400SB(青丸)も含め2022年に生産終了予想なので、4気筒のツアラーがここで途絶えるだろう
NT1100はスマホをUSB接続するだけでアプリをメーター画面に表示する。インカムでガイドも聞ける。こういった現代的価値を提供することもNew Tourerの真価だろう
NT1100はネイキッド由来のCB1300SBと異なり、ツーリングに必要な装備も同時に開発されている。このように純正オプションでフルパニア化も容易だ

今はビッグバイクもスマートに乗る時代に?

 CB1300スーパーボルドールがデビューしたのは2005年。日本国内で高速道路での二人乗りが解禁されたタイミングに合わせて発売されたのだ。そして、今回のNT1100はAT限定大型免許の排気量上限撤廃に加え、4月からの高速料金定率割引の実施に合わせた市場投入となる。

 ホンダは日本の「二輪文化は成熟へ」向かうフェーズにあると分析しており、NT1100はこれに対する最適解となる。これまでの軽自動車と同じくくりではなく、普通車の半額という二輪料金で高速道路でより長距離をこなしてくれるモデルが求められており、クラッチ操作は不要で二人乗りが快適。さらに荷物もたくさん積むことができるスマートなビッグバイクだ。

 CB1300の前身である初代CB1000スーパーフォアが登場した1992年末からビッグバイクを取り巻く環境は大きく変化しており、ホンダがCB1300シリーズのファイナルエディションを出すのはこれに対応するのが理由だろう。

 NT1100は欧州でも発売されグローバルでも通用する成熟市場へ向けたモデル。一見、日本では需要が低そうなスタイルに見えるが、ホンダモーターサイクルジャパンによると計画台数800台に対して現時点で450台の受注を受けており、販売は好調だという。

 NT1100と入れ替わるタイミングで、ホンダファンバイクで唯一生き延びたガラパゴスモデルのCB1300/400シリーズが生産終了すると予想されるのは、時代の変化を象徴する出来事だろう。

1988年のゴールドウイング(1582cc)から始まった規制緩和。昔を知るライダーにとって現在はバイク天国と言える環境に。NT1100はここにドンピシャな存在だ
2気筒エンジンはフラットトルクなので急かされずロングツーリングしたくなる。BMWツアラーに近いコンセプトでベテランライダーほど良さが分かるだろう

2022年型NT1100主要諸元

・全長×全幅×全高:2240×865×1360mm
・ホイールベース:1535mm
・シート高:820mm
・車重:248kg
・エンジン:水冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ 1082cc
・最高出力:102PS/7500rpm
・最大トルク:10.6kgf-m/6250rpm
・燃料タンク容量:20L
・変速機:電子式6段変速(DCT)
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17
・価格:168万3000円

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