2022年1月28日、トヨタは「KINTOファクトリー」と呼ばれるサービスを開始。オーナーが所有するトヨタ車、レクサス車を最新の状態に進化させる。
主なサービス内容は、古くなったアイテムを新品に交換する「リフォーム」、アクセサリー電源コンセント、安全装備などを装着をする「アップデート」、それぞれのオーナーの好みに合わせて、クルマを最適化する「パーソナル」の3種類。
今回、「リフォーム」と「アップデート」のサービスが開始された。「パーソナル」に関しては、調整中とのこと。
現時点での対象車種は、プリウス、アルファード、ヴェルファイア、レクサスUX、レクサスCTを含む全8車となる(以下本文参照)。2022年2月中旬時点で、このサービスを受付している店舗は、東京都28店舗と静岡県1店舗に限られる。将来的に、対象店舗が拡大されていく予定だ。
そこで、本稿では「KINTOファクトリー」の概要を解説しつつ、このサービスの意義や将来性について考察する。
文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】愛車の機能向上サービス「KINTOファクトリー」の対象車種ををギャラリーでチェック(23枚)画像ギャラリー「KINTOファクトリー」とはどのようなサービスなのか
「KINTO」はトヨタが実施するサブスクリプションサービスの名称だ。定額制でクルマを使うカーリースの一種に位置付けられる。
このKINTOの名称を使った「KINTOファクトリー」と呼ばれるサービスが2022年1月28日に開始された。将来的には定額制のサービスも予定しているから、KINTOの名称を与えたが、今のところ直接的な関係はない。
KINTOファクトリーは、自分が所有するトヨタ車やレクサス車をリフレッシュさせるプランだ。その内容はリフォームとアップグレードに分けられる。
リフォームには、今のところシート表皮の張り替え、シートクッションの交換、本革巻きステアリングホイールへの変更、特別仕様車などに設定されるホイールキャップへの交換などがある。
アップグレードは、主に機能や装備の後付けだ。AC100V・1500Wのアクセサリー電源コンセント(ハイブリッド車)、パーキングサポートブレーキ、ブラインドスポットモニター&リヤクロストラフィックアラートなどの装着が可能になる。
これらの装備は、いずれも標準装着、あるいはメーカーの生産ラインで装着されるメーカーオプションだ。ディーラーオプションと違って、本来は後付けのできないパーツに分類される。それをKINTOファクトリーでは、購入後の装着も可能にした。メーカー保証が付帯されることもメリットだ。
今のところ東京と静岡のみ!? 気になる対象車種とサービス価格とは?
現時点のKINTOファクトリーの対象車種は、プリウス(先代型と現行型)、プリウスα、アクア(先代型)、アルファード(現行型)、ヴェルファイア(現行型)、レクサスUX、レクサスNX(先代型)、レクサスCTになる。
リフォームとアップグレードの内容は、車種と年式で異なる。例えば現行プリウスの場合、メニューとしては、まずシートのリフレッシュが挙げられる。ファブリックシート生地とシート内部のウレタンクッションを交換して、ステアリングホイールを本革巻きに変更するものだ(スイッチやパッド類は変更しない)。この価格は前席のみは6万6000円で、前後席なら8万8000円になる。
上記のリフレッシュに際して、シート生地を合成皮革にグレードアップすることも可能で、この価格は前席のみが7万7000円、前後席は9万9000円だ。つまりファブリックの価格に1万1000円を加えると、合成皮革を選ぶことが可能になる。ステアリングホイールのみを本革巻きに変更するプランもあり、この価格は1万6500円だ。
AC100V・1500Wアクセサリー電源コンセントの後付けは、プリウスの場合、8万9100円になる。以前のオプション価格は4万3200円(消費税が10%なら4万4000円)だったから、2倍近い金額だが、新たに3年間/6万kmのメーカー保証も付帯される。
保証期間は商品によって異なり、最短では1年保証もあるが、いずれもリフォームやアップグレードを行ったときから起算される。古い車両に施工したときも、対象箇所については相応の保証期間が付帯される。
ホイールキャップを4本セットで交換することも可能だ。ノーマルタイプのプリウスに、PHV仕様のホイールキャップを4本セットで交換すると、セット価格は1万6500円だ。ちなみに新車販売店で購入したときには「4本セットなら約3万円になる」という。
つまりKINTOファクトリーによるリフォームやアップグレードの価格は、メーカーオプションで装着した場合に比べると高いが、補修用部品を取り寄せて交換するのに比べると安い。
このほかレクサスCTでは、本革シート生地と内部のウレタンクッションを交換する場合、前席のみなら11万円、後席を含めると19万8000円だ。
なおKINTOファクトリーによると、「施工をご依頼いただく場合は、予め申し込みが必要になる。その後、持ち込み可能な店舗に車両を預けていただく。クルマを預けている期間は1~1.5カ月になる」という。一般的な車検や点検に比べると、車両を預ける期間は大幅に長い。
また車両を預けられる店舗は、2022年2月中旬時点で、東京都(トヨタの4店舗+レクサスの24店舗)と静岡県(1店舗)に限られる。KINTOファクトリーによると「発足して間もないサービスだから、今は実施している地域が少ない。今後は全国的に展開していく」という。
保有されているクルマを有効利用することが重要?? KINTOファクトリーの真意
2021年に国内で新車として売られたクルマの台数は、コロナ禍の影響も受けて445万台に留まった。1990年の778万台に比べると、わずか57%に過ぎない。
また近年のクルマの安全装備や運転支援機能が充実したのは喜ばしいが、クルマの価格も、約15年前に比べて1.2~1.3倍に高まった。そのいっぽうで平均所得は、1990年代の中盤から後半をピークに減っている。最近は平均所得が回復基調だが、いまだに25年前の水準には戻っていない。つまりクルマは値上げされ、所得は減っているから、売れ行きが伸び悩むのは当然だ。
そこで保有されている車両を有効活用することが求められている。かつては新車のデザインや機能を進化させ、保有車両を古く感じさせて乗り替えを促進する戦略だったが、今は通用しない。
「愛車の内装をリフォームしたり、安全装備をアップグレードしたら、新車が売れなくなって困るのではないか?」とも思うが、そんなことを心配していられる状況ではなくなった。保有車両でも、中古車でも、何でも活用して売り上げに結び付けることが自動車業界の緊急課題になっている。
新型コロナウイルスの問題も絡む。次々と変異株が生まれ、いつ終息するのか分からない。供給が滞るパーツも半導体に限らず、開発者は「さまざまなユニットまで含めて、供給が幅広く遅れている」という。納期の遅延が今後も続く可能性を否定できず、仮にそうなれば、保有車両の有効活用が一層重要になる。この状況も視野に入れて生まれたのがKINTOファクトリーだ。
現状を踏まえると、自動車税制も見直さねばならない。初度登録から13年を超過した車両に重税を課す仕組みは、即座に撤廃すべきだ。KINTOファクトリーなどを活用しながら、クルマを長く大切に使うことが改めて重要な時代になるからだ。
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