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 自動車を所有するにあたって絶対に必要な費用は様々あり、買っておしまいにならないのがユーザーにとってつらいところ。様々な税金に加えて、自賠責保険の加入も義務づけられている。さらに万全を期すためにも任意保険も欠かせない。

 その中で必須の自賠責保険が2023年度から値上げするという! 事故が増えたわけでもないのに値上げする理由とは!?

文/藤田竜太、写真/AdobeStock(トップ写真=camera papa@AdobeStock)

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■事故件数が減れば保険料も下がるのが本来の自賠責

事故件数が減って保険料収入が保険金支出を上まわると保険料が下がるのが自賠責の本来の仕組みだ(BlueBeans@AdobeStock)

 クルマの購入時と車検の際に加入と更新が義務づけられている自賠責保険。近年、AEB(衝突被害軽減ブレーキ)の普及もあり、事故件数は減ってきており、自賠責保険の追突事故の支払額は、2016→2017年で-4.2%、2017→2018年だと-5.6%となっている。

 加入が義務づけられている強制保険の自賠責は、「ノーロス・ノープロフィット(損も得もしない)の原則」が適用されており、事故件数が減って、保険料収入が保険金支出を上まわると保険料が下がる仕組みになっている。

 実際、2020年4月からは平均で16.4%も引き下げられ、2021年4月1日からはさらに平均で6.7%の引き下げがあり、2年連続の値下げが続いていた。

 ドライバーにはうれしい流れが続いていたのだが、ここへ来て2023年度から再び値上げになるというニュースが入ってきた。

■自賠責値上げの理由は財務省の尻拭い!!

悲しむビジネスマン

 値上げということは、事故が再び増え出してしまったのかと思うがさにあらず。じつは事故件数とまったく無関係な理由で自動車ユーザーの負担が増えることになりそうなのだ。

 その元凶となっているのは、いわゆる「自賠責の運用益6013億円の未返済問題」。

 自賠責保険は、事故が起きてしまったときに最低限の賠償責任を担保するための仕組みだが、じつは事故で重度後遺障害を負った人の支援にも使われている。

 この支援事業の費用は、年間150億円ほどで、事業費は保険料の運用益を積み立てる「自動車安全特別会計」から充てるのだが、この運用益がたりないというのが、今度の自賠責保険料の値上げの理由。

 「低金利時代だから、それも仕方がないのでは」と善良なドライバーは思うかもしれないが、運用益が足りなくなったのは、積立金自体が足りないから。

 そしてなぜ積立金が足りないかというと、20年以上前に公共事業などに使う一般会計の補填として、財務省が自賠責保険の運用益から1兆1200億円も借金をし、そのうち6013億円の返済が滞っているため。

 本来こうした借金は、単年度決裁で一括返済が基本なのだが、財務省は借金返済を先送りし続け、不足している自賠責の支援事業費用は、毎年、積立金を取り崩した「持ち出し」で穴埋めしているというのが現状だ。

 ちなみに、昨年2021年度は、事業費144億円のうち、77億円を積立金から当てている。

 毎年、70億円も切り崩していれば、あと20年で積立金(残高は、21年度末におよそ1500億円)は底を尽きるので、支援制度が崩壊してしまう……。

 さすがに財務省も2018年から返済を再開しはじめたが、その額は年間わずかに23億円。2022年度から54億円に増額されることになったが、この額では100年返済し続けても5400億円なので、完済できない計算に!

 そこで保険料に「賦課金」を乗せて事業費に充てようというアイデアが急浮上し、車両1台あたり125円ほどの値上げするという方針が示された。

 財務省が借りた金を返さないので、支援事業費が足りないのに、自動車ユーザーに「賦課金」という名目で新たな負担を強いるのはお門違いもいいところ。「ふ・ざ・け・る・な」としか言いようがない。

■国会の審議を経ずに値上げが決定!! こんなこと許していいのか!?

この一連の流れは国会での審議を経ず、大臣折衝で決定されている。国民の理解を得られないのでウラで決めたのだと思われても仕方ないだろう(taa22@AdobeStock)

 しかもこの一連の流れ、秋の臨時国会が閉会したあと、国会の審議を経ず、鈴木俊一財務大臣(自民党)の斉藤鉄夫国土交通大臣(公明党)による大臣折衝で決まったもの。

 この大臣折衝こそ諸悪の根源で、過去5回の6013億円の返済先延ばしも大臣折衝で決まったこと。

 今回の6回目の先延ばしも大臣折衝で決まってしまい、しかも議事録などは残っていない!

 仮に議事録があったとしても、期間統計である「建設工事受注動態統計」ですら改ざん・不正、修正指示後も書き換え、データ二重計上、を続けた国土交通省がまともな記録を残しているとは思えない……。

 日本の自動車ユーザーは、3年間で50万円以上の自動車関連税を支払っていると言われ、自動車重量税やガソリン税などは、道路整備費の財源をまかなうため、「暫定措置」といいつつ本来の税率の約2倍の税金を40年も負担させられている。

 また道路特定財源だったガソリン税や自動車重量税が一般財源化されたのも記憶に新しいはず。

 その他、車齢13年超の車両の重量税の増税や、軽自動車税の増税など、国の税金の約1割を自動車ユーザーが負担しているなか、財務省の借金のとばっちりで、自賠責保険が値上がりするなんて許しがたい。

 自動車ユーザーは本気で怒りの声を上げた方がいいだろう。

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