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 トヨタが2021年10月29日に詳細を発表した、新型クロスオーバーSUVタイプBEV「bZ4X」。トヨタがこれから送り出す「bZシリーズ」の第一弾であり、バッテリーEV事業戦略の中核となるモデルだ。

 今回は、トヨタとスバルの協業で生み出されたその注目新型EVを、袖ケ浦フォレストレースウェイで最速試乗する機会を得たので、岡本幸一郎氏が徹底チェックする!

 気になるその走り以外にも、今後のトヨタが目指すEV戦略とはいかなるものなのか!? についても分析してきたい。

文/岡本幸一郎
写真/池之平昌信

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■最新プラットフォームを採用したサイズ感と注目ポイント

 2021年12月14日にトヨタが今後のEV戦略を大々的に発表した「バッテリーEV戦略に関する説明会」は、なかなか衝撃的だった。大量に公開されたコンセプトカーの中で最前列にあったうちの1台が、「bZ4X」だ。

トヨタが送り出す新型BEV「bZ4X」と岡本幸一郎氏。開発陣は「Activity HUB(みんなのアクティビティ・ハブ)」をコンセプトワードとして、実航続距離、バッテリー寿命、車両価格、充電時間の長さを高い次元で両立させたと語っていた

 トヨタ全体でみると「レクサスUX300e」がすでにあるが、トヨタブランドとしては初めての純粋なBEVとなる。まずはより多くの人に広く使ってもらえるようにと、売れ筋のミドルSUVが第1弾として送り出される。そのプロトタイプの試乗会が袖ヶ浦フォレストレースウェイで実施された。

 実車を間近で見るのは初めてだが、現行トヨタ車のエッセンスをまじえつつ新しい要素を盛り込んだようなスタイリングはなかなか印象深い。フードからヘッドランプ上部へとつながるハンマーヘッド形状のフロントデザインはBEVなればこそ。タイヤを四隅に配して長いホイールベースを確保するとともに、リフトアップした下半身とスリークなプロポーションの上半身を組み合わせたシルエットも斬新だ。

 車格の近いRAV4と比べると、ホイールベースは160mmも長い2850mmに達し、全長は95mm長い4690mmとなる。全高を60mm低い1600mmとしたのは居住性を確保しつつ全面投影面積を小さくするため。全幅は20mm大きい1860mmで、フロントオーバーハングは同一の915mm、リアオーバーハングは65mm短い925mmとなる。

 インテリアもなかなか斬新だ。ステアリングホイールの上方の遠くに配されたトップマウントメーターは見た目にも先進感があり、視線移動も小さく、薄型のインパネによりダッシュが低いおかげで見晴らしがよい。足元スペースも広く確保されている。ヘッドクリアランスはRAV4比で20mm小さいが、狭く感じることはない。

低いインパネや斬新な上見せメーターなど、開放的で先進的なデザインを採用するインテリア

 前席乗員の足元にトヨタ車初となる輻射ヒーターを採用したのも注目ポイントのひとつだ。冬場の暖房による消費電力を減らすための装備で、ONにすると、たしかに足元が温かい。

 TNGAによるBEV専用のプラットフォームを活かしたパッケージは、”全席等価値”を追求している。後席に座ると、さすがはタンデムディスタンス(前後席間距離)が55mm長い1000mmちょうどというだけのことはあって、膝前はかなりの広さ。一方で頭上はそれほど広くはなく、前席下への足入れ性もフロア形状の影響であまりよろしくない。

 なお、ラゲッジのフロア下を含め車内のつくりはFWD車と4WD車でまったく共通だ。

■気になるその性能は!? 2WDと4WDでがらりと変わるそのキャラクター

 試乗したのは18インチ仕様のFWD車と、20インチ仕様の4WD車で、FWD車はフロントに150kW、4WD車は前後に80kWずつシステムで160kWの同期モーターを搭載。ともに71.4kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載し、水冷方式のバッテリー温調システムにより、あらゆるシーンで安定した入出力性能を確保しており、最大150kWでの急速充電にも対応する。

 車両重量はFWD車が1920kg~、4WD車が2005kg~で、0-100km/h加速タイムは8.4秒と7.7秒となる。WLTCモードでの一充電走行距離は、FWD車が500km前後、4WD車が460km前後と、このクラスのBEVとしてはまずまずだ。

BEVならではの運転の楽しさ、ワクワク感を提供することを目指したe-TNGAの考え方に基づいた高剛性の新型プラットフォームを採用。薄型大容量電池パックの床下・平置き配置で
低重心化したことで、旋回時の安定した車両姿勢を実現

 約2.4kmのコースを、それぞれ3周×2回ずつFWD車と4WD車で走ってみたところ、それなりに違いはあったのだが、いずれも動きが素直で乗りやすい点では共通していた。

 リニアなアクセルレスポンスと伸びやかな加速フィール、正確なライントレース性といったBEVならではよさは十分に味わえる。欲をいうともう少し何かプラスアルファの”Fun to Drive”があるとなおよい気もしたのだが、性能の高さをウリにするBEVではないのでこれでよいかと思う。

 アクセルペダルをゆるめると減速度が増大し、なめらかに減速させる回生ブースト機能も選択できる。減速度はそれほど強くないが、おそらく公道で日常的に使うには、これぐらいがちょうどよく感じられることだろう。いかに不快な挙動を出さないかを重視したようで、加速状態から減速に転じる際にも急激にGが変わることなく、なだらかに移行するように味付けされているあたりにも、トヨタらしい心配りを感じる。

4WD車は、RAV4よりもリアモーターの使用範囲を拡大させることで、より安定感のある走りに。スバルと共同開発したX-MODEを採用することで、雪道などの滑りやすい路面やライトオフロードでも高い走破性を実現

 ハンドリングもEVならではの強みを感じさせる。フロア下にバッテリーを搭載するので重心が低く、コーナリングでのロールは小さめ。全高を抑えたことも効いているだろうが、210mmも地上高があるとは思えない動き方をする。

 FWD車と4WD車ではドライブフィールがそれなりに違う。サーキットで限界走行を試した今回の試乗ではなおのことだろうが、やはりバランスがよいのは重量配分が前後均等に近い4WD車で、FWD車はフロントヘビーで、前で引っぱる感覚が強い。ただし、感触としてはFWD車のほうがだいぶ身軽に感じられた。

 VSCのON/OFFを試すと、よりそれが顕著に表れる。OFFにして攻めると、FWD車はアンダーステアやオーバーステアが出やすいのに対し、4WD車はその度合いが圧倒的に小さく、挙動も乱れにくい。根本的な素性として操縦安定性に優れているようだ。

 さらに、VSCをONにすると、どちらも本当に意のままに走れて感心した。作動時にはそれを示すランプが点灯するものの、その存在を感じさせないぐらい制御がスムーズであることに驚いた。これも緻密に駆動力を制御できるBEVなればこそに違いない。

■トヨタが見据えるBEV戦略とはどのようなものなのか!?

 そんなbZ4Xは、2022年半ばの発売が予定されている。また、KINTOのみでの扱いとなるというのも報じられているとおりのようだ。

 bZ4Xの開発は2018年にスタートしており、トヨタの誘いにスバルが乗る形で計百数十人からなる両社の合同チームにより開発が進められてきたという。外観だけでなく装備などの細部が微妙に差別化されているのは両社のコダワリの表れ。それについてはソルテラのことが明らかになった際に改めて述べたい。

トヨタ bZ4X(写真左)とスバル ソルテラ(写真右)。両社のこだわりにより、細部が微妙に差別化されている

 2021年12月14日の発表の要点をおさらいすると、トヨタは2030年までに30車種のEVを投入し、合計350万台を販売するという具体的な数字まで出した。さらには、レクサスを2035年に100%BEV化するというのにも驚かされた。モックアップとはいえ考えているものを形として大量に披露したのもインパクトがあった。

 欧州プレミアムブランドにも大胆な電動化を宣言したメーカーがあり、なかにはそれは無理だろうと思わざるをえない内容も見受けられるが、極めて現実主義のトヨタが、カーボンニュートラルの一環としてEVを手がけ、今後は世に送り出していく考えがあるのを明らかにしたのは、むしろあのタイミングだったからこそなおのこと説得力があったように思う。もはやいまだ根強くあるトヨタがEVに消極的という声は、まったく見当違いであることは明白だ。

 bZシリーズについても、将来的にいくつかが展開されていくことは間違いなさそうだが、そのなかには同じようにスバルが関係しているものもあるかもしれないし、今やいくつもの国内完成車メーカーが属するトヨタのパートナーのほかのどこかとの協業になるかもしれない。それについてもおいおい明らかになっていくことだろう。

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