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クラウンセダン亡きあとの主役か!? レクサスのBEVスポーツセダンの真相が見えてきた

 2021年12月14日、トヨタはレクサス車を含むBEV16車種を発表した。それから約2ヵ月後の2月9日、突如レクサスUSAはエレクトリファイドセダンコンセプトの写真を発表し、さらに数日後にはエレクトリファイドSUVコンセプト、エレクトリファイドスポーツコンセプトの写真を立て続けに発表した。この時期にレクサスはなぜ発表したのだろうか?

 そしてベストカーwebでは、次期クラウンはSUV化され、マジェスタが復活するスクープ情報を入手しているが、セダンの座はレクサスに任せるということなのか、解説していこう。

文/柳川洋
写真/レクサス

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■突如レクサスUSAがエレクトリファイドセダンの写真を発表

 米国時間2022年2月8日(日本時間2月9日)、レクサスUSAのツイッターアカウントから突然レクサスの新型バッテリーEVセダン、レクサスエレクトリファイドセダンコンセプトの新たな画像が公表された。

 フロントビューの画像は、2021年12月14日に開かれた「トヨタのバッテリーEV戦略に関する説明会」で公開されていたが、サイドとリアからのビューは今回初めてのお披露目となる。

 スポーツセダンのお手本のようなボディライン。ボディ側面から後方にかけて、深い立体感と絞り込み感を加えるプレスが施され、フロントタイヤ後端からリアホイールアーチまで連続する特徴的なキャラクターラインが目をひく。

ワイドかつ低いボディはBEVとはいえコンベンショナルなスポーツセダンの文法に則ったもの
テールランプの形状がより複雑化し、小さなダッグテールスポイラーが装着されているのがわかる

 後方から見ると、ブレーキ冷却用のダクトを活かしたホイールの張り出し感とキャビン部分のコンパクトさのコントラストが非常に強く、ボディをよりワイド&ローに見せるデザインとなっている。あれ、これどこかでみたことあるかも、と感じるかもしれない。

こちらは2021年12月14日のバッテリーEV戦略説明会でお披露目されたエレクトリファイドセダンコンセプト。パールホワイトとブラックのツートンカラーが目立つ。撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

 それもそのはず、2022年1月7日付ベストカーWeb「次期レクサスIS情報キャッチ!! 2025年にEVセダンでデビュー」で既報の通り、このエレクトリファイドセダンコンセプトは、レクサスISの後継車として2025年にデビューする可能性が極めて高い。

BMW3シリーズ、メルセデス・ベンツCクラス、アウディA4などと激しい競合を繰り広げて鍛えられてきたレクサスIS350

 上の写真は現行のIS350だが、ドアパネルより上の部分からリアラゲッジに伸びる部分、サイドパネルの立体感やテールライト周りの雰囲気もよく似ている。エレクトリファイドセダンはまさにISが正統進化した電動スポーツセダンであることがよくわかる。

 2021年12月の説明会では、レクサスではなくトヨタブランドからもう一つのBEVセダンであるbZ SDNも紹介された。

クーペタイプのBEVセダンbZ SDNは、リアのドアパネルの長さがフロント対比で短いように見え、どちらかというとドライバーズカーに見える。撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

 現行クラウンと比較してみると、リアのドアの長さがフロント対比でかなり短いように見え、どちらかというとディメンション的にはカムリのパッケージに近いような印象を受けた。銀行の支店長が後ろに乗るような、ハイヤーでも使われる後部座席の居住性を重視した高級セダン、という感じはあまりしない。

 一部報道では、このbZ SDNが新型クラウンのベースになるのではという見方もあった。仮にそうなるとすると、新型クラウンは前席重視のドライバーズカーで、運転手が運転するようなパッセンジャー重視のクルマは発表が噂されるクラウンマジェスタの後継車、というような棲み分けがなされると考えるのが自然な気がする。

■「LFAの秘伝のタレ」を継承する次世代BEVスポーツカー

 レクサスUSAによるエレクトリファイドセダンのツイートの前後には、エレクトリファイドSUVに加え、エレクトリファイドスポーツコンセプトの1分弱の動画がお披露目された。

 サーキットでLFAをエレクトリファイドスポーツコンセプトが追い越し、行動に出て森の中を海岸線に向かい、レクサスのBEVファミリーとともに駐車する、というアニメーションだ(日本のレクサスのElectrifiedページでも見られる)。

 エレクトリファイドスポーツコンセプトは、バッテリーEV戦略説明会で豊田章男社長が「いわばレクサス『秘伝のタレ』であるLFAの乗り味を継承する次世代BEVスポーツカー」と紹介していた特別なクルマだ。

前面投影面積が少なくエアロダイナミクスに相当力を注いでいることが容易に想像できるスーパーカーを名乗るにふさわしいサイドビュー

「『秘伝のタレ』っていうニュアンス、外国人にも伝わるのかな」と筆者はやや疑問に思っていたが、レクサスUSAのツイッターにはなんと「An EV supercar with the ‘secret sauce’ from the LFA」、まさに「LFAから引き継ぐシークレットなソースで味付けされたEVスーパーカー」と書かれていたのが非常に興味深かった。

 その性能とデザインの美しさは「スーパーカー」の名に恥じないもの。0→100km/h加速性能は2秒台前半、航続距離も700kmを超えるとされ、全固体電池の搭載も視野に入れている。エレクトリファイドセダンとも共通項のあるサイドビュー、超ロングノーズの大胆かつ流麗なデザインなどディテールにも見どころが多い。

フロントフードにはレーシングカーのようなボンネットピンと大きな開口部が目立つ

 またベストカーでは以前からトヨタとマツダの協業について報じてきているが、エレクトリファイドスポーツコンセプトのディメンションを見ると、マツダRX-9との類似性の高さにも気付かされる。

 ドア後ろ、レースカーの給油口にあたる位置にあるのは充電リッドだろうか。期待は高まるが、ドアハンドルがないように見えることから、まだ実際に姿を表すには時間がかかるだろう。

 余談になるが、豊田章男社長は「秘伝のタレ」の他にも、「BEVで4輪駆動のプラットフォームを作れば、制御によってFRやFFはすぐ作れるが、(クルマの素性を磨かずに)ただ制御だけして味付けしたところで、伸びたうどんに天ぷら入れるようなものだ」と説明会で発言していて、食べ物での喩えがお好きなようだ。食いしん坊の筆者は親近感を覚えてしまった。

■エレクトリファイドSUVは4月に発表予定のRZと何が違う?

 2021年12月に発表されたエレクトリファイドSUVと、日本では2022年4月に発表予定のレクサス初のBEV専用プラットフォームを用いた新型RZの2つの画像を並べて見てみよう。一見極めてよく似ているが、実は多くのところで違いがある。

 エレクトリファイドSUVはノーズは高く、ホイールアーチも厚みがあってボクシーで、ランドクルーザーやLX600を思い起こさせる。スピンドルも幅があり、フロントノーズ側面は後方に傾くのではなく、より垂直に近い形状となり、前から見た時の押し出し感が強い。

 LEDライトはカスケード型でより彫りが深く立体的に見える。ルーフ部分はボディ同色ではなくブラックアウトされており、ソーラーパネルが装着されるのかもしれない。またサイドミラーではなくカメラを採用、ドアハンドルも格納型だ。

RZよりもホイールベースが長く見えるが、RZがbZ4X/ランクル/LX600同様2850mmとするとこちらも同じかもしれない

 こちらが2022年4月に発表され、12月以降の発売予定とされているRZは、北米ではRZ450eという名前でデビュー予定。最初にRがつくことから、2022年6月に発表され、10月に発売予定とされるRXのBEVバージョンという捉え方でいいはずだ。

見た目は現行RXにより近いがグリルがなくすっきりとしたフロントビューで見間違えることはないだろう

 実は、RXというのは、レクサスのなかでは非常に特別なクルマ。2021年、レクサス最大の市場であるアメリカで販売された11車種、30.4万台のうち、デビューから6年以上経つRX1車種だけで全体のほぼ4割、11.5万台が売れた。その化け物級の大ベストセラーのBEV進化版後継車なので、力が入っているのは間違いないが、デザインなどで大きな冒険ができないのも事実。

現行RXはフルモデルチェンジから6年以上経つがそのデザインからは古臭さは感じられない

 ドアミラーと通常型のドアハンドル、ホイールアーチ部分など曲線が多くマッチョすぎないエクステリアなど、エレクトリファイドSUVよりも現行RXにより似ている。

 ルーフ部分はボディ同色のように見えるが、ソーラーパネル装着車も用意されるかもしれない。BEVとなったのでグリルはなくなったが、特徴的なスピンドル形状は踏襲している。

アメリカではRZ450eという名前で販売されるが、ハイブリッド車である現行RX450hの後継であることが強く連想される 

 エレクトリファイドSUVとRZの違いは、リアビューを見るとより際立つ。どちらも新世代のLEXUSのロゴが入るが、前者はかなりシャープでボクシー、未来的。後者は複雑な形状で高級感を出しているが、マッチョ度合いは比較的低い。現行RXと比べるとテールランプ幅が薄く、リア全体に回り込むなどよりすっきりとした形状となった。

エレクトリファイドSUVのテール周りのデザインの処理は水平方向を強く意識させ非常にすっきりした機能的なものに見える

 RZはトヨタブランドのbZ4Xと同様に、スバルと共同開発したBEV専用のプラットフォームe-TNGAを使用するとみられる。スバルの持つAWD技術「X-MODE」とトヨタの電動化技術も組み合わされる。

 前述した通り、最新の情報では新型RXの発表は2022年6月、発売は10月に予定されており、RZはその前の4月に発表、発売は12月以降になる予定。

 通常レクサスの新車種は、発売開始の1カ月半から2カ月前、つまり10月発売であれば7月ごろから先行予約を取り始めるので、興味がある人は早めにディーラーに連絡したほうがいい。

欧州トヨタのHPでbZ4Xの動画、画像が公開されたが日本での発売は現時点で年央とされている

 仮にRZがbZ4X同様のモーター・電費性能だとすると、最大システム出力はAWDで前後80kwずつの計160kw、電池容量は71.4kWh、航続距離は460km程度となる。

 bZ4Xのホイールベースは、ランドクルーザーやLX600同様の2850mmとなることから、RZのホイールベースも現行RXの2790mmより長くなり、居住性と走行安定性が高まるものと見られる。

bZ4XのインテリアはBEVだからといってゴリゴリの先進感をあえて演出せず比較的シンプル

■レクサスがBEV化を急ぐ背景とブランド戦略

 2021年12月のトヨタバッテリーEV戦略説明会以降、レクサスのBEVに関する情報量が急増してきているが、その背景には何があるのだろうか。

この戦略説明会に先立ち12月2日に豊田章男社長は岸田首相と面談して自動車業界と政府との協力を確認したとされる。撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

 クルマの電動化技術の進化に伴い、これまでとは次元の違う先進的な移動体験が可能となりつつある。

 それに伴い、少々高い値段を払ってでもバッテリーのもたらす高級な乗り心地やこれまでにないクルマの進化を体験したい、と思う層がいわゆるアーリーアダプターだけでなくやや保守的だった富裕層にまで広がってきており、彼らからのBEVへの期待値が急速に高まってきている、というのがトヨタ・レクサス経営陣の現状認識だ。

 アーリーアダプター層はテスラが主導権を握り、やや保守的な富裕層をめぐっては競合しているメルセデス・ベンツがすでに高級フラッグシップBEVのEQSを北米市場に投入しているなかで、急速に変化しつつあるニーズに応えるべく、レクサスは「2030年までに北米、欧州、中国での新車販売におけるBEV比率100%、BEV全世界販売台数100万台達成」「2035年までには全世界新車販売を完全BEV化」の目標を掲げ、「クルマ屋だからこそできる性能の作り込み、人の感性に響くモノ作りに磨きをかける」ことで、自らを差別化していこうとしている。

 アメリカのバイデン政権の看板法案、「ビルド・バック・ベター」は現在上院民主党内からの反対もあり宙に浮いてしまっているが、もしなんらかの形で可決されれば、BEV購入に対して今より5000ドルも多い最大1万2500ドル、およそ150万円弱の税額控除、つまり政府による実質的な値引きが受けられるようになる。

各国での内燃機関車販売規制だけでなく、消費者、特に富裕層の嗜好の変化が予想外に急激なことでトヨタもそれに応えるべく全力で対応しようとしている

 そうなれば欧州だけでなくアメリカでも急速にクルマのゼロエミッション化や充電インフラの整備が進むこととなり、北米を最大の市場とするレクサスとしてはここで出遅れるわけには絶対行かない状況だ。直近のレクサスのBEVに関する情報量の急増は、現在シカゴオートショーが行われているからというだけではなく、このような背景がある。

 エレクトリファイド・コンセプトシリーズではセダン、SUV、スポーツの3種類が披露されたが、今後は2017年にフルモデルチェンジされたLSの後継となるBEVラグジュアリーセダンに期待がかかる。

 レクサスの原点となるLS400が発売された1989年同様、レクサスが改めてBEVで世界の高級車の定義を塗り変える時が来るのを、日本人として大いに期待している。


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