2022年に入り、1月7日にホンダ「ステップワゴン」が世界初公開、その6日後の1月13日にはトヨタ「ノア/ヴォクシー」発表発売と、相次いで人気ミドルサイズミニバンの新型が披露された。日産の「セレナ」も2022年内~2023年初頭には、新型へとモデルチェンジする見込みと、今年2022年はミドルサイズミニバンの年となりそうだ。
近年のミドルサイズミニバンは、2018年と2019年は、2年連続でセレナが登録台数トップに、その後、2020年と2021年はヴォクシーがトップという状況。
はたして、ミニバン新時代を制するのはどのモデルか!? 3モデルの優位点や不利な点を比較するとともに、いち早く発売開始となっている新型ノア/ヴォクシーを狙っているユーザーは、すぐに買ったほうがいいのか、ほかのモデルが登場するのを待ったほうがいいのか、についても考察していこう。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、ベストカー編集部
「顔面強化」で迫力を増した新型ノア/ヴォクシー
いち早く発売開始となった新型ノア/ヴォクシー。新型ノアは先代同様、標準モデルとエアロモデルを用意。標準モデルは、フロントグリルがボディ同色となり、落ち着いた印象を受けるが、エアロモデルは、フロントバンパーからサイドのグリルまでが、メッキ化とブラックアウト化され、アルファードのような清潔感のあるエアロフェイスとなった。
新型ヴォクシーはエアロの1グレードだ。「好き嫌いが分かれるようにあえて狙っている」という、プレデターのような独創的なフロントマスクにはかなり驚かされたが、ボディーカラーが、新型ヴォクシーのイメージカラーとなっている「マッシブグレー」ではなく、ホワイトパールだと「これもアリだな」と思えてくる。
ボディサイズは、全長(4695mm)とホイールベース(2850mm)は先代から維持したまま、全幅を1730mm(先代型の標準仕様は1695mm、エアロ仕様は1735mm)で統一、全高は1895mm(先代は1825mm)と70mm上げてきた(全高アップはほとんどが「シャークフィンアンテナ」のぶんだそう)。
全幅と全高が大きくなったことに加え、先代よりもインチアップした最大17インチタイヤを装着したことや、リアテールランプの位置を、新型ノアはL字型、新型ヴォクシーでは2本の水平ライン形状となり、リアガラスの面積が広がったことでアルファード/ヴェルファイアのようなどっしり感、迫力が備わった。これまで「ノア/ヴォク」では(迫力が)物足りない、と感じていた方にも刺さる仕上がりだ。
車内のユーティリティも、2列目のストレート超ロングスライドや、ユニバーサルステップ、フリーストップバックドア、3列目ワンタッチホールドシートなど、ユーザーの声を真摯に取り入れて正常進化している。軽い力で跳ね上げて、固定までできる3列目ワンタッチホールドシートの出来は、跳ね上げタイプの「最終形態」と言ってよいだろう。
バックドア開閉のスイッチが、バックドア側からボディサイド側に移動しており、バックドアの開き具合を見ながら開閉できるというアイディアも秀逸だ。
パワートレインは、ハリアーにも搭載している2.0Lガソリンと、燃費23.4km/Lをたたき出す新開発1.8Lハイブリッドそれぞれに、2WDと4WDを設定。顧客が選択できるよう、豊富な仕様をラインアップできるのは、トヨタならではの強みだ。
新型ステップワゴンは「シンプルすぎるデザインが心配」
新型ステップワゴンは、より奇抜となった新型ノア/ヴォクシーとは逆に、よりシンプルなエクステリアとなった。直線基調で高いベルトラインのボディシェイプや四角いヘッドライト、縦型のテールライトといった細部のデザインは、初代や2代目のステップワゴンをモチーフにしているようにみえる。
インテリアでは、使い勝手が重視されており、Aピラーの根元を後退させたことで、この手のミニバンに多い、フロントウィンドウの遠さがやや解消されている。この「視界の良さ」は強い味方となるはずだ。
新型ステップワゴンに関しては、1月7日に行われたのオンラインジャパンプレミアで、内外装デザインと、e:HEVの搭載といった大まかな情報は明らかにされたが、ガソリンエンジン車の有無や詳細なメカニズム、車両価格など、具体的な内容については現時点(1/25)未発表。
発売も2022年5月ごろからと、まだ少し先となるため、新型の競争力に関して明確なことがいえる状況ではないが、デザインがシンプルにまとめすぎなのでは…という心配がある。
やはり、この手のミニバンの現時点の正解は、新型ノア/ヴォクシーのような「派手目のフェイス」だ。シンプルでも惹きつけられるような印象的なデザインが実現できていれば魅力的なモデルとなると思うが、新型ステップワゴンを写真で見る限りは、それが実現できているかどうか微妙。
インテリアも、ハニカム形状のエアコングリル(新型シビックと同じ)を使った点は、ハードな印象を与えたいのか、シンプルクリーンな印象を目指したいのか、チグハグに感じてしまう。
スパーダの上級グレード「PREMIUM LINE(プレミアムライン)」や、アフターエアロパーツといったカスタムパーツが前提ならば、今よりも「強面」になるかもしれない。現時点わかっている情報では、厳しい戦いとなりそうな新型ステップワゴンだが、正式発表でこれらを挽回する内容が発表されることを期待したい。
次期型セレナは「質感高いインテリアと新世代e-POWERがカギ」
現行セレナが登場したのは、2016年7月のこと。今年の7月で6年目に突入するモデルだ。2017年のe-POWER追加で、一躍人気ミニバンとなった。発電用の1.2リットル3気筒エンジンと、最大出力136ps、32.6kgf・mを誇るモーターで、重たいボディを力強く駆動する。また、現在は当たり前となった装備ではあるが、2017年のデビュー時に、プロパイロットがいち早く搭載されたのがセレナだった。
セレナ独自の特徴は、やはり人気ミニバンへと躍進するカギとなった「e-POWER」だ。現行ノートに搭載された第2世代e-POWERは、動力性能と燃費性能の両立を果たし、更に質感の高いハイブリッドシステムへと進化している。このユニットが次期型セレナに搭載されることは間違いないだろうが、それだけでは、新型ノア/ヴォクシーや新型ステップワゴンと戦い、勝ち抜くことができる武器としては足りていない。
そこで期待したいのがインテリアだ。ノートやアリア、ノートオーラといった最近の日産の新型車のインテリアは、かなり魅力的になった。和モダンとデジタルを融合した路線のインテリアは評判が良く、次期型セレナにもこの要素が加われば、新型ノア/ヴォクシーにも負けない強力な武器となる。新型ノア/ヴォクシーも新型ステップワゴンも踏み込んで来なかった「フルデジタルメーター」を、200万円台前半のノートで導入してきた日産。それくらいの思い切りがあってこそ、超激戦区のミドルクラスミニバンジャンルで、購買意欲をくすぐることができる。
そして最後にフロントフェイスを「外さない」ことだ。新型ヴォクシーが攻めたアウト側と、新型ステップワゴンが攻めたイン側、その真ん中の新型ノア。セレナが狙うのは、新型ノアと新型ヴォクシーの中間か、新型ステップワゴンと新型ノアの中間だ。アリア顔が新型車の定番となりつつある日産だが、次期型セレナで新たな路線のフェイスにチャレンジできるかは、非常に楽しみだ。
FMCサイクルだと2023年初頭が次期型の登場タイミングとなるセレナ。トヨタとホンダに対して最後発となるが、その後れをはねのけるような魅力的なモデルで登場することを期待している。
新型ノア/ヴォクは「買って間違いない!!」
新型のデザインが判明している新型ノア/ヴォクシーと新型ステップワゴンで比較したとき、ユーザーの声を正確に反映できているのは、やはり新型ノアヴォクシーのほう。その証拠に、新型ノア/ヴォクシーには受注が殺到しているようで、ホンダがこの状況をどう受け止めるのかは気になるところだ。
新型ノア/ヴォクシーは、エクステリアに目が行きがちだが、中身も大きくブラッシュアップしている。新型ステップワゴン、次期型セレナの内容が判明していない段階であり、購入検討されている方にとっては悩ましいところではあるが、新型ステップワゴンや次期型セレナと比較して、新型ノア/ヴォクシーが明らかに見劣りするようなことはまずない。
加えて、ノア/ヴォクシーはリセールバリューも高い。もちろん装備内容などは若干異なるだろうが、デザインが好みであるならば、いますぐ購入しても間違いはないだろう。
群雄割拠のミドルクラスミニバン 「ノア/ヴォクシー」 「セレナ」 「ステップワゴン」の最新モデルを詳しく!!(49枚)画像ギャラリー投稿 「顔面強化」新型ヴォクシー/ノア登場で幕が開いたミニバン戦国時代!! 激戦を制するのは…? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。