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<p>熟考の詰将棋。Nintendo Switch/PS4向け『ウォーハンマー 40,000:メカニカス』を、時間をかけ完璧な一手を編みだす骨太タクティカルRPGとして薦めたい – AUTOMATON</p><p>【コラム】熟考の詰将棋。Nintendo Switch/PS4向け『ウォーハンマー 40,000:メカニカス』を、時間をかけ完璧な一手を編みだす骨太タクティカルRPGとして薦めたい</p><p>『ウォーハンマー 40,000:メカニカス』は、手札の切り方を考える楽しさを存分に味わえるターン制タクティカルゲームである。その魅力を紹介する。同作のPS4/Nintendo Switch版は1月27日より発売中だ。</p><p>Nintendo Switch 版は1月27日より発売中だ。 本作は、ミニチュアゲーム『ウォーハンマー40,000』を題材としたターン制タクティカルゲームだ。『ウォーハンマー40,000』は、遥か遠い未来の銀河を題材としたSF作品であり、この世界では人間やエイリアン(と一口に言っても、人間兵器やアーマーを操るオークなど、さまざまだ)による、争いが絶えることはない。『ウォーハンマー 40,000:メカニカス』では、その陣営のひとつである「アデプトゥス・メカニカス」の物語が描かれる。壮大なユニバースの一片を、ゲームで味わえるというわけだ。 「アデプトゥス・メカニカス」は「万機神」を信仰する陣営であり、人間でありながら、身体のほとんどが機械化されているのが特徴的。なによりも“知識”を得ることで万機神の栄光を讃えることを目的としている。彼らが新たに発見した惑星「シルヴァ・テネブリス」に眠る古代文明を調査すべく、技術司祭「テック・プリースト」を指揮するというのが本作の物語だ。なお、本作の物語は公式小説ブラックライブラリー作家のひとり、ベン・カウンター氏によって書き下ろされたものだ。 ウォーハンマーを知らなくても楽しめる、キャラクターたちの個性 『ウォーハンマー』という世界観の歴史は古く、ミニチュアゲームの公式サイトを読んでいるだけでも朝がくるような重厚なSF作品だ。名前は知っていても触れたことがないという方も多いのではないだろうか。筆者もそのひとりで、本作をはじめたころは、まったく知らない世界に迷い込んだ気分だった(実際そうだが)。だが徐々にゲームの面白さを理解し、最初はちんぷんかんぷんなワードや世界観も胸に落ちていくようになった。本作が『ウォーハンマー40,000』の入り口でも問題はない。ただし、世界観への理解があればより楽しめるであろうシーンも少なくはない。 ゲームの進行に合わせてキャラクターたちの個性を感じ取れるようになると、ゲームがグッと楽しくなる。具体的には、ミッション開始/終了時の掛け合いや、新たな敵やボス戦での文言などだ。機械信仰教徒ということもあり、皆思想が強め。その中で随所に挟まる信仰による考えの違いや、教典を引用した文章などは、世界観にリアリティと説得力をもたらしている。現実と同じだ。 とりわけ筆者が気に入ったのは、スケアボラだ。彼はキャラクターのなかでも特に知識に対する貪欲さが旺盛で、仲間にたしなめられることも多々あるような、お茶目さが魅力。彼の発言はテキストウィンドウを巧みに利用したプログラム言語のように表現され、視覚的にも楽しい。 熟考の甲斐あるバトルデザイン 本作の核となるのは、タイル(マス)を用いたターン制シミュレーションRPGだ。戦闘ごとに定められた、敵の殲滅やボスの撃破、テック・プリーストの退避といった目標の達成を目指す。自分でカスタマイズした複数のテック・プリーストへ指示を出して、わらわらと出現する敵を倒していくわけだ。 テック・プリーストは、移動・攻撃・サブアイテムの利用など、1ターンでおこなえることが多く、そのほとんどの行動は、パーティで共有されるコグニションポイント(以下CP)を消費する。CPは、フィールドから入手したり、敵を倒すと自動で手に入ったりする。範囲攻撃など、強力な攻撃になるほど、消費するCPは多くなっていくわけだが、このCPをどのように運用するかが、ひとつのカギとなってくる。 たとえば、2人のテック・プリーストを指揮しているときには、1人目でCPを使い切ると、2人目のできることが極めて少なくなってしまう状況もある。たとえそうなっても、1人目で眼前の敵を倒すことを優先するか、ここで見逃して2人目のもつ、より強力な範囲攻撃でトータルダメージを稼ぐかなど、考えることは多い。自分の起こした行動によって、パーティや戦況がどうなるのかを見極める必要があるわけだ。 また、ゲーム中盤からはアーマーという概念が登場する。それぞれ数値が与えられた物理とエネルギー、2種のアーマーは、数値が高ければ高いほど、その属性に対する防御力が上昇する。例えば、物理3・エネルギー1のアーマーをもった敵であれば、物理よりエネルギー武器のほうが攻撃の通りが良い。なお一部の武器にはアーマーを破壊するものや、アーマーを無視できる武器も登場する。それらはCPを多く消費するが、CP消費を打ち消すスキルや、CPを回復できるスキルを活用することで、一気に畳み掛けることもできる。それらをいつ使用すれば最大の効果を発揮するのか、慎重かつ大胆に判断することが重要だ。 テック・プリーストもカスタマイズによってはアーマーを得る。適正に合った敵と対峙するようにテリトリーを広げたいところだが、残念ながら敵がどのような攻撃を放ってくるか、どんなアーマーをもっていて、どの程度のHPなのかは、一部の調査スキルを用いて調べない限りブラックボックスだ。与えたダメージすら表示されない。調査せず連続で攻撃を入れて倒せるか、イチかバチかの賭けに出るのも面白い。中々倒れないと思って調査するとアーマーが固くまったく攻撃が通っていなかったなんてこともある。そうならないようにテック・プリーストの体力管理や、調査スキルの運用を考慮する必要があるわけだ。 テック・プリーストの他にも指揮できる存在がある、「突撃兵」だ。これは1ターンの初めにCPを消費してフィールドに召喚できるもので、彼らは基本的に攻撃しかできない。捨て駒として扱う場面が多いが、遠距離・近距離やアーマー無視など、突撃兵ごとの特性がある。活用することで大きな力を発揮するので、積極的に使っていきたい。 つらつらと書いてきたが、タイル制を用いたフィールドや、CP・アーマーなど、ベースにあるシステムはシンプルなものだ。それらが組み合わさることで、冷静に考えれば紐解けるような絶妙な複雑さになっているのが、本作におけるバトルの最大の魅力に思える。逆に、冷静さを欠いてケアレスミスをしてしまえば、計画にほころびが生まれ、そこからガタガタと歯車が狂っていく。雑にプレイしてしまうと、ボタンを押したあとに気づくミスや、順番を変えるだけで格段に優位に立てたシーンなど、後悔の一手が多くなってしまう。1ターンごとに熟考し、その先を読むのが勝利へのカギであり、本作の楽しさだ。計画通りにことが進めば、重厚なSEをもった攻撃も相まって、青く熱い炎が灯るような爽快感がある。 出撃できるテック・プリーストの数や、CPの上限などは、ゲームの進行に合わせて徐々に増えていく。使うスキルや攻撃の順序など、考える楽しさが増えるにつれ、1ターンに出せるトータルダメージも増えていく。するとミッション自体が簡単にクリアできてしまう点は、プレイヤーによっては物足りなく感じるかもしれない。その場合はゲーム設定を開いて欲しい。詳細に難易度を調整することが可能だ。 また、ミッションは原則としてダンジョンを探索する形式で進行し、その部屋の一部でバトルが発生する。ダンジョンの部屋には、さまざまな仕掛けが施されており、それらはテキストで表現されている。表示された選択肢を選ぶことでCPが得られたり、逆に体力が削られたりと、なにかしらのアクションが起こる。ダンジョンには目標となる部屋があり、そこを目指すことになるが、部屋を移動するごとに脅威レベルのメーターが上がっていく。一周ごとに脅威レベルが上がり、バトルで追加の敵が出現するほか、敵が活動を停止してから復活までの時間が短くなるなど(本作の敵は原則、HPを削りきった後にとどめを刺す必要がある)、こちらがより多くの知識を得るほど、敵の脅威が高まるシステムだ。これはダンジョン内の部屋だけでなく、バトル内でターンを重ねることでも上昇する。少ないターン数で敵を殲滅することが有利になるというデザインが、一手の重要性を高めている。 豊富なカスタマイズ 本作で指揮するテック・プリーストたちは、細かくカスタマイズ可能だ。そのひとつ目は装備だ。ミッションをクリアすることで得られる、斧やプラズマライフルなどの武器はもちろん、サブガジェットも豊富で、敵からCPを奪うものや体力を回復するもの、一時的にアーマーを強化するものなどが用意されている。 ふたつ目は、「研究」だ。いわゆるスキルツリーのようなもので、ミッションクリアで得たブラックストーン(お金のようなもの)を使って、スキルや装備品を解放することができる。それぞれの分野によって特性が分かれており、わかりやすいところでは、CP入手に特化したものや、回復に特化したものなどがある。中には、攻撃のたびにHPがマイナスされるが、失ったHPの分クリティカル率が上昇するなど、尖った分野も用意されている。 汎用性の高い構成にしたり、一定の分野に特化したりと、テック・プリーストを自分好みにカスタムするのは楽しい。見た目の色合いを変更できる点も、ミニチュアゲームの本流を汲んでいるようだ(ミニチュアゲームでは、プレイヤーがミニチュアをペイントする文化がある)。 冒頭でも触れたが、本作はテキストの量がかなり多い。ダンジョンの部屋や、ミッション開始/終了時の掛け合い、新たな敵やボス戦など、随所で会話だけでなく、ダンジョン内でのテキストなどを通じて、しっかりと世界観やキャラクターに触れることが可能だ。一部のミッションのクリアによっては、エンディングが変化するなど、アドベンチャーゲーム的側面も見られる。 ターン制シミュレーションRPGとして、適度に複雑なゲームデザインの秀逸さは述べてきたとおりだ。浅い一手のために不利な状況に陥る悪循環の裏側にある、食い入るように画面を見つめた熟考の末にある究極の一手を決める瞬間はとても爽快だ。プレイ後には脳みそを動かしたあとの独特の疲労感を覚えるだろう。そのほかにも、ビジュアルに即した重々しい武器のSEや、パイプオルガンを用いた賛美歌のような音楽は、まるで「ウォーハンマー」という世界へ妖しく手招いているようだ。 『</p>