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 自動車業界でよく耳にする「OEM」という言葉。これは協力関係にある他メーカーの車種を自社ブランドで販売する際に使われるもので、例えばダイハツの軽自動車をトヨタが自社ブランドで販売したり、マツダがトヨタの商用車を自社ブランドで販売したりすることだ。このOEM車は多くの場合、自社で一から開発するほどでないが、ラインナップからなくなっては困るという車種が選ばれることが多い。

 前述のケースで言うと、商用車の企画・製造から撤退したマツダが、それまで抱えていた商用車ユーザーの他メーカーへの流出を防ぐために、トヨタからプロボックスやハイエースのOEM供給を受けている、といった感じである。

 こういった大人の事情があるため、そもそもOEM車は比較的マイナーな部類にくくられることが多いのだが、今回は特にマイナーと言える国内外のOEM車を独断と偏見で紹介したい。

文/小鮒康一、写真/CEVROLET、SUBARU、ISUZU、MAZDA、マツダ(国内)

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シボレーのスイフト版かスイフトのシボレー版か


GMがエクステリアデザインを担当したシボレー クルーズ。このデザインの一部はのちに欧州向けイグニスに採用されている

 まずは肩慣らしといった感じで、比較的知られている「シボレー クルーズ」からご紹介していこう。このモデルは2001年から日本で販売されていたモデルで、ベースとなったのは初代のスズキ スイフト。しかしエクステリアデザインはゼネラルモーターズ側が行っており、スイフトとは全く異なるものとなっていた。

 特にボディ後半部分はスイフトとは全く異なっており、リアクォーターウインドウがテールゲート側に回り込むようなものとなっている。単に前後の見た目を替えただけのお手軽OEMモデルとは一線を画していたのだった。

インド×シボレー=フォレスター!?

六連星からボウタイに置き換えられただけではあるが、急にアメリカンな雰囲気になるから不思議だ(ただしインド市場向け)

 続いてご紹介するのもシボレーブランドから。スバルから供給を受けていた、GMインドの最上級車種として投入された、その名も「シボレー フォレスター」である。こちらは先ほどのクルーズとは打って変わって車名すら変更されていないOEMモデルで、内外装に存在するスバルのロゴマークをシボレーのボウタイマークに置き換えただけというもの。

 展開されたモデルは、水平対向4気筒2Lエンジンを搭載した5速MT車のAWDのみで、価格は最上級車種ということもあり、当時の日本円でおよそ450万円というプライスタグが付けられていた。

誰が見てもブーンにしか見えないスバルの欧州向けコンパクト

ブーンとは異なり1リッターエンジン仕様のみのラインナップとなっていたジャスティ。写真はスポーティグレードの「アクティブ」

 スバルのジャスティと言えば、量産車として世界で初めてCVTを搭載した初代モデルか、現在販売中のトールワゴンとなった現行モデルが知られるところ。海外では初代と現行型の間に3世代のジャスティが存在しており、通算2代目と3代目をスズキから、そして通算4代目となるモデルがダイハツからOEM供給されていいたのである。

 その3代目モデルこそが写真のモデルで、日本ではダイハツ ブーンとして販売されていたモデルがジャスティ名義で販売されていたのだ。この3代目ジャスティ、グリルこそ当時のスバル車が採用していた飛行機の翼を模したデザインを採用していたが、それ以外はベース車とほとんど変わることがなく、一瞬写真を見ただけでは判別がつかないレベルの小さな差異しかなかった。

 ちなみにボンネット先端にも加飾が備わっているのは、ベースとなったブーンのボンネットにCIマークを装着する際の取り付け穴が存在しており、それを隠すためと思われる。 

相互OEMで実現したいすゞのミニバン

マイナーチェンジを受けても前後バンパーは前期型デザインのままだったオアシス。後期型の識別点はテールランプの配色のみだ

 現在は完全に乗用車市場から撤退してしまっているいすゞだが、90年代は他メーカーからOEM供給を受けて乗用車を販売していたことを覚えている人も多いことだろう。そんないすゞが北米市場でのみOEM販売をしていたのが「いすゞ オアシス」である。

 当時、ホンダは本格的なSUVをラインナップに持っていなかったため、いすゞのロデオ(日本名:ミューウィザード)やビッグホーンのOEM供給を受けて北米市場で販売しており、その相互OEMとしてオデッセイをオアシスとして供給していたというワケ。

 このモデルも基本的にはエンブレムと車名のみを置き換えたものだったが、オデッセイがマイナーチェンジを実施して後期型になり、エクステリアが一部変更されたあとも、オアシスは前期型のままのルックスで販売されていた(エンジンはオデッセイと同じく2.3Lへ換装されている)。外観での前期後期の判別が難しくなっているのも特徴のひとつだ。

難易度No.1 これがわかったら博士級

欧州車的な雰囲気を持つマツダ121だが、それもそのはず、欧州フォードのフィエスタがベースなのである

 マツダ121といえば日本で販売されていたフォード フェスティバ(初代)やオートザム レビュー、初代デミオの輸出名としても知られているが(実は初代121は2代目コスモのレシプロエンジン搭載車だったりする)、90年代後半に初代デミオがオセアニア地域でマツダ121として売られていたのと時を同じくして、欧州では全く異なる車種が同じ名前で販売されていたのだ。

 そのベースとなったのは4世代目のフォード フィエスタ。当時、マツダはフォード傘下であったことから、自然の成り行きと言えるかもしれない。フィエスタと同じ工場で生産され、エンブレムや車名のみが異なる純然たるOEMモデルだったのだが、当時はフィエスタよりもマツダ121の信頼性が高いという市場調査の結果があったよう。販売店のおかげなのか、はたまた日本のブランドだからという思い込みがあったかは定かではない。

 このように、日本でおなじみの車種であっても違う名前で販売されていたり、おなじみの名前なのに見たこともない姿の車両だったりというのもOEMモデルの面白いところ。他人と同じクルマはイヤだと考えている人は、こういったマイナーなOEMモデルを狙ってみるのも面白いかもしれない。

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