世界に勢力を拡大しているインドのロイヤルエンフィールドが、大本命のバイクをこの春、日本で発売する。「クラシック350(Classic 350)」は、ベストセラー街道をひた走るホンダGB350の真っ向ライバルで、価格もほぼ同じ。
2車の違いをスペックや写真から徹底比較し、クラシック350の魅力を浮き彫りにしたい。
文/沼尾宏明、写真/Royal Enfield
【画像ギャラリー】ホンダを本気にさせたインドのベストセラー「クラシック350」の全方位画像はこちらへ!(23枚)画像ギャラリールーツは79年前、古き良き英国車スタイルこそインドの正統派
インドのバイクメーカーであるロイヤルエンフィールドは、現存する世界最古の二輪ブランド。米国のインディアンと同じ1901年からバイクの生産を開始した。
元々はイギリスのメーカーで、1955年にインドのマドラスに現地工場を設立したが、1971年には英国の本社が倒産。それでもインド工場は残り、シーラカンスのように「本物」のクラシックバイクを生産し続けることになった。
現在はインドの四輪メーカー、アイシャーグループ傘下となり、世界的にも人気を獲得している。
中でも「クラシック」は近年の主軸シリーズの一つ。350、500の2本立てで2008年に登場し、世界で2020年までに驚異の300万台を販売した超人気車だ。
人気の秘訣は、1948年に生まれたModel G2譲りのデザイン。インドにおける正統派スタイルで、英国車の薫り漂うフォルムに金属製のフェンダーやカバーなど、本物感が最大の魅力だ。心臓部の空冷単気筒は味わいと扱いやすさを両立し、レトロさに一役買う。
これをフルチェンジしたのが新生クラシック350。現地で2021年に発表され、ついに国内でも2022年3月下旬から販売を開始する。4グレードで計9種類のカラーを展開し、価格は57万7500円~60万3900円。
国内の令和2年規制やユーロ5ら新排ガス規制に対応した最新エンジンと、新設計フレームを採用しながら、デザインは従来型を踏襲。外装類は全面的に新設計されたが、見かけはレトロなまま、中身が最新になっている。
生産はインドと英国にあるロイヤルエンフィールドの最先端技術センターを拠点に、デザイナーとエンジニアのチームが設計&開発。一昔前のインド製と違い、信頼性や品質は十分と言える。
ホンダのGBよりやや小柄、足着きにも期待が持てる
ライバルはホンダのGB350だ。2021年の国内251~400ccクラスで販売2位、2022年のベストセラー候補であり、空冷シングルの正統派レトロネイキッドという点で共通。GBは55万~59万4000円と価格でも拮抗している。
そもそもホンダのGB350は、インドで「ハイネスCB350」を名乗り、現地向けに開発されたモデル。ベストセラーの従来型クラシック350を打倒すべく現地では2020年末に投入された。日本では先に発売されたGBがクラシック350を迎え撃つ形だが、GBがクラシックを参考に開発されたのは間違いない。
2車のデザインを比べてみると、どちらも機能部品を樹脂パーツでカバーしていないバイクらしいフォルムながら、GBはレトロバイクを現代的に解釈したモダンさがある。一方、クラシックはよりリアルな旧車に近く、言われなければどの時代のバイクなのかわからないのではないだろうか。
なお前後フェンダーは2車ともスチール製(GB350Sのフロントフェンダーは樹脂製)。ともに金属の質感を大事にしているが、クラシックではメッキパーツの多いグレードを用意し、よりビンテージ感が強い。
軸間距離はクラシックが1390mm、GBが1440mmとクラシックの方がコンパクト。とはいえ、2車ともこのクラスでは大きめだ。インドで350ccは高級車の位置付けなので、ともに堂々とした風格を重視したのだろう。
車重に関しては、クラシック195kg、GB180kgで、15kgもGBが軽い(GB350Sは17kg軽い)。概してエンフィールドのバイクは昔ながらの金属のカタマリ的な重さがある。対するホンダはより軽快さと扱いやすさを重視したのだろう。
一方で足着き性はクラシックに期待が持てそう。シート高はGB800mm、クラシック795mmとほぼ同じだが、GBはサイドカバーが横に張り出しており、小柄な人は足が届かない場合も。一方、クラシックは足を降ろす位置にサイドカバーがなく、実際に乗ってみないと判断できないものの、足着き性が良さそうだ。
出力はほぼ同じだが、ボア×スト、バランサーに違いが
エンジンは2車ともSOHC2バルブヘッドの空冷単気筒。昔ながらで質感の高い外観は共通だが、GBの冷却フィンはラウンド形状なのが特徴だ。なお、クラシックは従来型にあったキックスターターが廃止された(GBもキックはない)。
最高出力とトルクも同等ながら、発生回転数はクラシックの方が600~1000rpm高い。これはボア×ストロークが影響していると思われる。2台ともロングストローク設定ながら、クラシックの方がストロークがやや短く、その分、GBより高回転型の性格なのだろう。
ちなみに2020年まで販売された旧型クラシック350は、ボア70×ストローク90mm。GBとほぼ同一で、ホンダがお手本にしたことが窺える。
単気筒と言えば振動で手足がしびれるモデルもあるが、この2台はエンジンの振動を抑えるバランサーシャフトを搭載。クラシックが1軸、GBは2軸バランサーだ。このクラスの単気筒に2軸バランサーは異例の装備で、GBは振動が少なく、「クリアな鼓動と力強さ」を実現しているのが特徴だ。
クラシックは適度な振動を残したエンジンと推測できる。実際、同系エンジンを積んだロイヤルエンフィールドのメテオ350は、低中速で心地いいバイブレーションがあり、重低音で迫力があるサウンドも魅力だ。なおGBに採用されるアシスト&スリッパークラッチは、非装備となる。
クラシックはフレームも昔ながらの柔らかな乗り味
フレームは、クラシックの方がより剛性が低く、マイルドな乗り味となりそうだ。
クラシックのフレームは新作の鋼管ツインチューブ。一見ダブルクレードルだが、エンジンを剛性メンバーにしたダイヤモンドタイプで、下部のアンダーループはエンジンハンガーとなる。旧型はダウンチューブがシングルのダイヤモンドタイプだったが、新型も基本構造は似ているのだ。
剛性を高めたことで、直線では安定感が増し、より速い旋回スピードでも安心して攻められるという。
一方のGBは、伝統的な鋼管セミダブルクレードルを採用。しなやかさを重視した設計ながら、さすがにクラシックより剛性は高いだろう。常に安定した現代的なGB、より柔らかい旧車的なクラシックという乗り味になると予想できる。
足まわりはともにφ41mm正立フロントフォーク。GBのディスクはφ310mmでクラス最大を誇る。リヤは2車とも昔ながらのツインショックでプリロード5段階調整が可能だ。
ホイールに関しては、2車ともにフロント19&リヤ18インチ(GB350Sはリヤ150/70R17ながら、リヤタイヤの幅はGBの方が太い)。それでもクラシックは旧型よりタイヤが1サイズ太くなっている。
現代版のGBに対し、やっぱりクラシックはレトロ?
エンジン、フレームが最新で、モダンな外装に身を包むGB350。これに対しクラシック350も基本設計は手堅い手法で現代的にアップデートしながら、外観はひたすらにレトロテイストを貫いている印象を受けた。
ロイヤルエンフィールドを日本で取り扱うPCIでは、2022年に販売店を22店舗にまで拡大。クラシック350と対面できるチャンスが増える。またスペアパーツも国内拠点に潤沢に在庫するという。
さらに「四半期に一度程度ニューモデルを出したい」とロイヤルエンフィールド・アジア太平洋地域責任者のビマル・サムブリー氏は話す。これからエンフィールドの勢力はより拡大しそうだ。
ともあれ、まずはクラシックとGBの2台に試乗して直接比較できる日が楽しみだ。
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