オンラインの外国語学習は、スタートアップにとって良い商機であり続けている。そのユーザーにとって魅力的な体験は、スマートフォンに費やす時間をもっと生産的なことに使いたいと思う一般消費者の関心にもマッチしている。この分野の最新の展開の1つとして、EWAという言語学習アプリがある。それは、言語の取得にメディアを利用し、映画やテレビや本などからの引用を利用して学習者を新しいボキャブラリーと発音に親しませる。このアプリはこれまでに5100万回ダウンロードされており、月間アクティブユーザーは3500万に達する。そしてこのほど、初めての外部資金として270万ドル(約3億1000万円)を調達した。
EWAは「E-vah(エヴァ)」と発音し、共同創業者でCEOのMax Korneev(マックス・コルニーフ)氏によると、2018年の創業以来ずっと自己資金だけでやってきたという。それでも現在の年商は3240万ドル(約37億4000万円)に達している。フリーミアムの部分は3日間のトライアルだが、TikTokやInstagramなどのソーシャルメディア上にそのコンテンツクリエイターとして広く展開しており、同社のポストで数百万のユーザーが非公式に言葉の勉強をしていることになる。英語学習用のEWA Englishだけでも、500万以上のフォロワーがいる。
コルニーフ氏によると、外部資金を導入する目的は、現在、同社が直面している成長の需要に応えて拡大していくこと、またエンジニアを増員して、以前より待望していたソーシャルな要素を増やすゲーム化の仕掛けと対象言語の多様化機能を開発することだ。現在、アプリは英語とスペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語のみ対応している。
シードラウンドにはDay One VenturesとElysium、それにSemrushやZynga、Nianticなどからのエンジェルや創業者、役員たちが参加した。EWAはすでにシリーズAの準備を始めており、評価額1億5000万ドル(約173億3000万円)で3000万ドル(約34億7000万円)となり、SoftBankらのVCが同社に接触している。TechCrunchは現在、SoftBankにコメントを求めている。コルニーフ氏はコメントを断った。
すでに上場しているDuolingoの本日の時価総額はおよそ34億ドル(約3928億9000万円)だったが、アプリを粘着性の高いもの、ユーザーは学習の流れを維持するために毎日ログインし、トップの位置を守ろうとするものにしてオンライン言語学習市場を席巻した。またリアルの世界で知ってるかもしれない人とアプリ上でリンクさせることで、自然な競争意識が芽生えて、このアプリでの勉強が習慣になる。
これまでのEWAのユニークなセールスポイントは、オンラインメディアの広大な世界をその目的(言葉の学習)のために利用する、その方法だ。アプリユーザーには、有名な本を読む、人気の高い映画やテレビの抜粋を見るなどの選択肢がある。有名な台詞などは、言葉の学習の良いきっかけになり、その知識をワードゲームで強化していく。
その方法は私個人的にも、おもしろいもので、私と家族がロシアから初めて米国に来たときのことを思い出させる。しかもEWAのCEOコルニーフ氏もロシア人だ。同氏によると、教材としてメディアの利用という変わった方法を選んだのは意図的だという。その方が、現代に合っているし、非常に多様な言語学習者にも伝わりやすい。
「現在の独習アプリを見てみると、リアルな教室での学習の進行をコピーしたものがとても多い。はっきりいうと、それは古いやり方だし、今ではあまり効果がありません」とコルニーフ氏は語る。彼はDuolingoが行った調査を引用して、オンラインの言語コースを終了した人は全受講者の1%未満しかいないという。「人間は、楽しいこと、おもしろいことを好みます。ユーザーに、なぜEWAを利用するのか尋ねたら、楽しいからという答えが返ってきます。私たちは、エンターテインメントと教育を結びつけているのです」。
言葉を学ぶために「地元のメディア」を利用したのは、私の家族だけではなかったようだ。コルニーフ氏がITの仕事をしながら別の言語(彼の場合は米国における英語)を学んだのも、その方法だった。
「多くのスタートアップが、痛みを解決しようとして生まれてきます。EWAの始まりもそうでした。私の場合は字幕付きの映画を見たり、言葉に関する傍注のある本を読んだりしました。他の人たちも、そうやって言葉を身につけてきました。言葉に対す自身の方法をビジネスにできないかと考えた彼はITの仕事を辞めて、共同創業者のStepan Nikitin(ステパン・ニキーチン)氏やAnton Aleshkevich(アントン・アレシュケビッチ)氏、Stas Morozov(スタス・モロゾフ)氏らとともにEWAを創業した。
EWAの社籍はシンガポールとなるが、大量のデベロッパーがロシアにいる。ロシアのスタートアップが西側の投資家から資金を調達するのは難しいため、意図的にこの形にしている。コルニーフ氏にとっては、パンデミックが幸いし、チームはリモートのワークフォースだという。同氏自身は、シンガポールとブダペストとバルセロナの3カ所を拠点としている。
画像クレジット:EWA
[原文へ]
(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hiroshi Iwatani)